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「日本」をめぐって 網野善彦対談集
■「日本」をめぐって 網野善彦対談集 洋泉社 20120916 「百姓」とは必ずしも農民ではない。日本が農業国家だったというのは嘘で、田畑で生業を立てていたのは3、4割にすぎず、人々は比較的に自由に移動して暮らしていた。……という網野の視点から歴史... -
日本文明77の鍵 梅棹忠夫編著
■日本文明77の鍵 梅棹忠夫編著 文春新書 20120901 鴨ケ浦で 外国人向けに日本を紹介する英文パンフが好評だったため、邦訳して日本人向けに書き換えた。 外国人が日本のどこを不思議に思うのか、欧米や中国とくらべて日本のどこが特殊なのか、そ... -
風の影LA SOMBRA DEL VIENTO カルロス・ルイス・サフォン
■風の影(LA SOMBRA DEL VIENTO)カルロス・ルイス・サフォン 集英社文庫 20120826 最初はスペイン語で読んだ。わからない単語だらけだったが、1日20-30ページずつ辞書も使わず500ページを読み終えた。ストーリー構成がしっかりしているから... -
作業中)やっぱりおもろい関西農業 高橋信正編著
■やっぱりおもろい関西農業 高橋信正編著 昭和堂 20120707 都市型農業、狭い、近江商人の三方よし、など、関西の農業の特徴をふまえた取り組みを紹介。農業、流通、商売。それぞれの事例がおもしろい。 ============== ▽25 近江商人に商人道を教えたの... -
3・12の思想 矢部史郎
■3・12の思想 矢部史郎 以文社 20120706 震災発生の3・11と区別し、「東京電力放射能公害事件」の起きた「3.12」に焦点をあてる。 放射性物質は、関東の土壌でも少なくても100ベクレル/キロ検出された。原発労働者が白血病で... -
「羊の歌」余聞 加藤周一
■「羊の歌」余聞 加藤周一 鷲巣力編 ちくま文庫 20120717 47歳から48歳にかけて、40歳までの半生を顧みてつづられた自伝的な著書「羊の歌」のその後と、「羊」に描かれなかったエピソードを書いた文章をまとめている。 以下、読みながら感じ... -
民俗のふるさと 宮本常一
■民俗のふるさと 宮本常一 河出文庫 20120618 昭和30年代の作品。そのころまでは江戸時代から継続するものが多かった。それが高度成長によって急速に消えてしまったことが、この本の記述と今と比較するとよくわかる。 農業人口は明治初年も昭和3... -
虹の彼方に 池澤夏樹
■虹の彼方に 池澤夏樹 講談社文庫 20120629 鶴見俊輔の対談で、「外の目」「旅人の目」の視点からつづった本だとと書いてあって興味をもった。 中央の官僚は、日本全体を分割して統治しようと発想する。だが「民」にとってはすべては自分が住む「こ... -
蓮如−聖俗具有の人間像
■蓮如−聖俗具有の人間像 五木寛之 岩波新書 201205 1953年に内灘闘争の現場で「加賀地方には一向一揆100年の伝統があるからね」と筆者は言われた。石川県では一向一揆や「蓮如さん」の記憶が今も生きているのだ。 蓮如は浄土真宗の中興の祖... -
内部被曝 矢ヶ崎克馬 守田敏也
■内部被曝 矢ヶ崎克馬 守田敏也 岩波ブックレット 20120501 核兵器のためにウランを濃縮するとつくりすぎてしまう。かといって工場を停止すると再稼働に時間がかかる。つくりすぎる濃縮ウランを消費するために原子力発電は生まれた。原発核兵器と密... -
新しい風土記へ 鶴見俊輔座談
■新しい風土記へ 鶴見俊輔座談 朝日新書 20120512 鶴見俊輔の幅の広さと現場への近さがわかる対談集。 姜尚中や中村哲とはナショナリズムや「外の目」の大切さを語り合う。 国家を超える、民衆に根っこのあるナショナリズムがイスラム圏にはあり... -
驚きの介護民俗学 <六車由美>
■驚きの介護民俗学 <六車由美> 医学書院 20120511 著者は気鋭の民俗学者として一時脚光を浴びたが、しばらく表に出てこなかった。大学教師をやめ介護の現場にいたとは驚かされた。何が彼女をそうさせたのか。介護現場の何が魅力なのか--。 民... -
山びこ学校ものがたり
■山びこ学校ものがたり あの頃、こんな教育があった 佐藤藤三郎 清流出版 20120509 著者は、青年教師無着成恭が教鞭をとった山びこ学校の一番の教え子であり、無着が村を追われた後もずっと村に残り農業をつづけた。無着の教育の多大な影響と同時に... -
東井義雄「いのち」の教え
■東井義雄「いのち」の教え 東井義雄 佼成出版社 20120508 筆者は生活綴り方を実践した小学校教師。子供との対話や経験をつづったエッセーだ。なぜこんなに心動かす言葉が次々に紡ぎ出されるのか。 鶴見俊輔は、生活綴り方のプラグマティズムとして... -
青春の門第7部挑戦編 五木寛之
■青春の門 第7部 挑戦編 五木寛之 講談社文庫 20120415 第6部の再起編から13年後の1993年に発表された作品がようやく文庫化された。偶然書店で見つけた。2002年に第6部まで読んだから、私にとっても10年ぶりの続編だ。 興奮しながら読... -
民権と憲法 日本現代史② 牧原憲夫
■民権と憲法 シリーズ日本現代史② 牧原憲夫 岩波新書 20120423 自由民権運動は、強権的な藩閥政府に対抗し敗れた進歩派勢力という印象が強い。本書は、民権派と民衆が一体になって明治政府に対抗したという従来の二極対立の構図を批判的に検証し、必... -
戦後日本の思想 久野収、鶴見俊輔、藤田省二
■戦後日本の思想 久野収、鶴見俊輔、藤田省二 岩波現代文庫 20120413 埴谷雄高らの「近代文学グループ」、進歩派だが共産党路線にがんじがらめになってしまった「民主主義科学者協会」、反共と穏健保守のあいだで揺れる「心」グループ、大衆のなかで... -
禁じられた歌 ビクトル・ハラはなぜ死んだか 八木啓代
■禁じられた歌 ビクトル・ハラはなぜ死んだか 八木啓代 晶文社 20120403 1973年、世界で唯一選挙で選ばれたチリの社会主義政権が軍クーデターでつぶされた。そのとき、ビクトル・ハラは軍に捕らえられ、虐殺された。 筆者は中学時代にビクトルの歌... -
僕は君たちに武器を配りたい 瀧本哲史
■僕は君たちに武器を配りたい 瀧本哲史 講談社 20120330 ほかの誰かと取り換えの効くコモディティになるな、自分しかできないものをもつスペシャリティであれ。当たり前といえば当たり前のことを言っている。 自動車は工作機械の進化によってモジュ... -
「気づき」の力、生き方を変え国を変える 柳田邦男
■「気づき」の力 生き方を変え、国を変える 柳田邦男 新潮文庫 20120318 患者に寄り添い、患者の心の一端でも支えるたいと謙虚な気持ちで向き合うなかで生まれた看護学生のエッセーはみずみずしい感性にあふれている。そんな感性の土台のうえに「現場... -
災害に負けない「居住福祉」 早川和男
■災害に負けない「居住福祉」 早川和男 藤原書店 20120319 災害に強い「居住福祉」のあり方を、生産基盤や環境、文化までを含めて従来の「福祉」の枠にとらわれず幅広く紹介する。 神戸市は1970年代に大地震によって長田や兵庫区がほぼ全滅すると予... -
「自己啓発病」社会 <宮崎学>
■「自己啓発病」社会 <宮崎学>祥伝社新書 20120307 イギリスのサミュエル・スマイルズの「自助論」。抄訳が広まり、都合のよいところだけつまみ食いのように翻訳され、小泉や勝間ら、新自由主義を奉る人々に利用された。 ところが全訳の「西国立志... -
中国化する日本<與那覇潤>
■中国化する日本<與那覇潤> 文芸春秋 2012022 世界で最初に「近世」に入ったのは、世襲貴族制を全廃し皇帝独裁とした宋朝で、ヨーロッパの近代啓蒙主義は、宋朝で体系化された近世儒学のリメイクだという。そして、宋朝の社会のしくみが全世界で今... -
日本の歴史をよみなおす(全)<網野善彦>
■日本の歴史をよみなおす(全)<網野善彦>ちくま学芸文庫20120214 われわれの原体験につながる社会は、室町時代ぐらいまでさかのぼれる。 集落を形成する「惣村」も、港や河原、中洲などに市が立って商工民や芸能民が集住した「町」も14世紀後半か... -
映画の構造分析 ハリウッド映画で学べる現代思想<内田樹>
■映画の構造分析 ハリウッド映画で学べる現代思想<内田樹>文春文庫 20120214 映画を通して難解なラカンやフロイト、フーコーらの現代思想を知る本。どっちにしても難解ではあるが、なんとなくわかった気になれる。 フロイトの「抑圧」の説明はわか... -
甘粕正彦 乱心の曠野<佐野眞一>
■甘粕正彦 乱心の曠野<佐野眞一>新潮文庫 20110122 甘粕の祖父母からDNAをさぐり、墓地を訪ね、周辺の人物をすべて洗うすさまじいばかりの取材だ。 部下からも慕われ、前途洋々たる軍人だったが、訓練中の事故で重傷を負い、忌み嫌われる憲兵に転... -
ベストセラー炎上<佐高信、西部邁>
■ベストセラー炎上<佐高信、西部邁>平凡社 20120127 ベストセラーをばっさりと切る対談。佐高の本は読んできたからどんな批評をするか想像がついたが、安定した共同体を重視する「保守」の立場からの西部の語りは新鮮だった。 勝間や竹中、稲盛らへ... -
マイバック・ページ ある60年代の物語<川本三郎>
■マイバック・ページ ある60年代の物語 <川本三郎> 平凡社 201201 60年代に青春時代を送り、朝日新聞に就職し、朝日ジャーナルの記者のときに、自衛官を殺した活動家と逮捕前に取材し警察に通報せず受け取った物を焼却してしまったばか... -
日本文化の形成<宮本常一>
■日本文化の形成<宮本常一>講談社学術文庫 2011121226 絵巻物や民話、伝承を分析し、自ら全国を歩いて見聞した事実とつきあわせ、縄文以来の日本の文化の変遷を解き明かす。縄文文化の名残が明治の家の形にまでつづき、海洋民としての倭人の家の形は... -
ためされた地方自治-原発の代理戦争にゆれた能登半島・珠洲市市民の13年<山秋真>
■ためされた地方自治-原発の代理戦争にゆれた能登半島・珠洲市市民の13年<山秋真>桂書房 20120110 旅行で偶然珠洲に立ち寄った女子学生が、推進派の現職市長に無名の若者がいどんだ1993年の市長選に参加する。原発計画とたたかう人々のなかで...