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古文書返却の旅 戦後史学史の一齣<網野善彦>
■中公新書20240507 東海区水産研究所の一室で1949年、全国の漁村の古文書を蒐集・整理・刊行し、文書館・資料館をつくるという事業がはじまる。研究所の月島分室が担当し、日本常民文化研究所に委託した。 だが1954年度で水産庁は研究所への委託予算を... -
森のめぐみ 熊野の四季を生きる<宇江敏勝>
■20230405岩波新書 大塔山は、古座川町、熊野川町、本宮町、大塔村の4町村(平成の合併以前)にまたがり、ふもとは照葉樹林、頂上ちかくは東北の山のようなブナ林が広がる。熊野の自然の多様性を象徴するような山だ。 山仕事をしながら山民について多く... -
熊野謎解きめぐり 大地がつくりだした聖地<後誠介>
■はる書房 20221206 熊野には不思議な光景がいくつもあった。火山もないのにたくさんの温泉がわき、奇岩があちこちにあり、それぞれ聖地になっている。なぜ? 科学的に調べるほど神秘的に思えてしまう不思議。科学と神秘は矛盾するわけではないんだな、... -
黒潮ストリート<平田毅>
■ぷねうま舎202208 カヤックで岬にちかづくと波がたかくなり、目の高さに近いうねりがわれてデッキをたたく。ひたすらこげばよいが、手を休めたら転覆する。 岬の先端では波の鼓動のリズムがかわる。南方の台風からのうねりをかんじる。 無防備でむき... -
廃仏毀釈ー寺院・仏像破壊の真実<畑中章宏>
■ちくま新書20210626 廃仏毀釈は、政府の命令でお堂や仏像を破壊しつくす日本の文化大革命だった。なぜこんな政策がとられたのか。日本独特の「神仏習合」の成立から廃仏毀釈にいたる経緯とその結果を丹念にたどる。 神仏習合は神宮寺の建立という形では... -
南方熊楠と宮沢賢治 日本的スピリチュアリティの系譜<鎌田東二>
■平凡社新書20210616 2人ともイニシャルはM.K。賢治は清澄な仏の世界、熊楠は混沌の曼荼羅というイメージだけど、スピリチュアリティという視点から見るとふたりはよく似ていると筆者は説く。 宮沢賢治の「春と修羅」「心象スケッチ」などは、意味不明の... -
「死の国」熊野と巡礼の道古代史謎解き紀行<関裕二>
■(新潮文庫) 202106 いろいろ物議をかもす民間研究者が熊野の歴史をひもといた本。そのまま信じてよいかわからないけど、おもしろい。 熊野への道を石畳で舗装したのは、死者の国に対する憧れだろう(五来重)、新宮市の徐福伝説を裏づけるように昭和3... -
世界遺産 熊野古道と紀伊山地の霊場<五十嵐敬喜、岩槻邦男、西村幸夫、松浦晃一郎>
■世界遺産 熊野古道と紀伊山地の霊場<五十嵐敬喜、岩槻邦男、西村幸夫、松浦晃一郎>ブックエンド 20170116 世界遺産の制度のなかで、「道」が選ばれるのは、サンティアゴ・デ・コンポステーラの霊場が最初だった。 もとは文化遺産は姫路城など「点」で... -
森の思想<南方熊楠、責任編集中沢新一>
■森の思想<南方熊楠、責任編集中沢新一>河出文庫 20170124 「南方二書」が圧巻だった。 中沢新一の解説よりも話の幅が広く、わかりやすい。たしかに冗長でくどい部分はあるが、だれにでもわかる言葉で、深い内容を伝えてしまう。合祀を巡る村々の細かな... -
千年の愉楽<中上健次>
■千年の愉楽<中上健次>小学館文庫 20161229 和歌山県新宮市の臥龍山という山のふもとにある被差別部落「路地」に住む中本一統の男たちの物語。産婆として「路地」の子を手にとりあげ、路地の過去も現在も未来も知るというオリュウノオバを狂言回しにし... -
岬<中上健次>
■岬<中上健次>文春文庫 20161126 ▽黄金比の朝 夜勤の肉体労働をしながら大学をめざす浪人生が主人公。母は旅館の仲居をして、売春もしながら生計を立てている。腹違いの兄は、過激な学生運動にかかわり、主人公の家に逃げてくる。 母を恨み、大学をやめ... -
南方熊楠 森羅万象に挑んだ巨人<中瀬喜陽>
■南方熊楠 森羅万象に挑んだ巨人<中瀬喜陽> 別冊太陽 2016105 ▽8 荒俣宏 1990年代からの熊楠再評価の機運。熊楠の草稿類を解読しつづける松居竜五さんたちの活動、「ミニ熊楠」とも呼ばれた故・後藤伸さんたちによる神島生態系調査の継続などは、... -
修行と信仰<藤田庄市>
■修行と信仰<藤田庄市>岩波書店 20161019 みなべ町の赤松宗典住職の章だけを熟読し、あとは流した。 10分間でも苦痛な座禅を何日もつづけたり、大峰山や比叡山を天狗のような速さでのぼっていったり、わけのわからない問答を延々とづけたり……。何か意味... -
作業中)海の熊野<谷川健一・三石学編>
■海の熊野<谷川健一・三石学編>森話社 20161119 □谷川健一 ▽9 土佐の捕鯨は、太地から習ったといわれます。壱岐の鯨漁は熊野の漁師を雇ってはじめたとされています。五島の有川も紀州湯浅の人が捕鯨を行ったのをかわぎりに、古座浦の人を招いて操業し... -
明恵上人<白洲正子>
■明恵上人<白洲正子>講談社文芸文庫 20161106芸術にくわしい筆者が、いさぎよく美しい明恵の生き方を女性の視点から描き出す。 明恵は幸せな幼年時代だったが、8歳で母を亡くし、同じ年に父も上総国で戦死した。頼朝が兵をあげた時の戦だった。 「我は... -
天神崎を守った人たち<河村宏男>
■天神崎を守った人たち<河村宏男>朝日新聞社 20161025 朝日新聞の記者が、天神崎にかかわった人々を丹念に取材し、日本のナショナルトラストの先駆的運動がどんな経緯をたどってきたのかを紹介している。それまでの自然保護運動とちがうのは、土地を買... -
熊野 海が紡ぐ近代史<稲生淳>
■熊野 海が紡ぐ近代史<稲生淳>森話社 20161024 ■熊野 海が紡ぐ近代史<稲生淳>森話社 20161024 熊野と海のつながりの歴史は別の本に詳しく書いてあったが、近代に関する記述はあまりなかった。エルトゥールル号事故や、アラフラ海のダイバーなどの... -
流れ施餓鬼<宇江敏勝>
■流れ施餓鬼<宇江敏勝> 新宿書房 20160907 熊野川と日置川流域を舞台にした小説6編。高校卒業後、炭焼きや林業で暮らしてきた著者の体験や古老から聞いた話をもとにしている。 タイトルとなった「流れ施餓鬼」は、麦わらの舟に新仏をのせ、火をつけて... -
夢の船旅 父中上健次と熊野<中上紀>
■夢の船旅 父中上健次と熊野<中上紀>河出書房新社 20160713 中上健次の人物像を知りたくて購入した。作家の中上紀が、父の中上健次の思い出と、その背景に広がる「熊野」の印象をつづっている。 父は床にうつぶせになって、タバコを吹かし、コーヒ... -
熊楠の星の時間<中沢新一>
■熊楠の星の時間<中沢新一>講談社 20160602 思考が真の天才の火花を散らし、人生が星の輝きに包れる「星の時間」は、熊楠ほどの天才でも、那智の山ですごした数カ月だけだった。この時期に、現代科学や哲学をも凌駕する思想が手紙の形で表現されたと... -
原発を拒み続けた和歌山の記録
■原発を拒み続けた和歌山の記録<汐見文隆監修 「脱原発わかやま」編集委員会編>2012寿郎社 20160228 和歌山では、那智勝浦、古座、日置川と日高2カ所の計5カ所で原発計画があったのに、すべてが阻止された。なぜ和歌山で阻止できたのか。地域性が... -
南方熊楠の謎 鶴見和子との対話<松居竜五編>
鶴見は戦後、「山びこ学校」を通して「生活綴方」に共感し、自己史をつづることの重要性を説くようになる。このころの鶴見は、人々の生の声をどのように記録し、学問活動につなげるかを追究していた。対象を外から観察する近代科学のような社会学から、... -
季刊誌kotoba 2016年冬号 中上健次生誕70年記念特集
■「季刊誌kotoba 2016年冬号 中上健次生誕70年記念特集」 集英社 20160123 中上健次といえば、ガルシア・マルケスを思わせる小説群と、反戦運動などへの積極的な関与、酒と暴力……という印象だが、そもそもどんな人だったのだろう。彼の生き様を知... -
森のバロック<中沢新一>
■森のバロック<中沢新一>せりか書房1992年 20160119 南方熊楠の生涯のうちで「もっとも深く体験されたもの」だけを注意深く取り出そうとした、という。 粘菌研究者としての熊楠、民俗学者としての熊楠、奇行を繰り返した熊楠……それぞれを断片的に紹介す... -
熊楠の森−−神島<後藤伸、玉井済夫、中瀬喜陽>
■熊楠の森−−神島<後藤伸、玉井済夫、中瀬喜陽>農文協 2011年 20151229 田辺市の沖に浮かぶ神島は、神社合祀の伐採計画から南方熊楠が守ったことで知られる。 高校教師だった筆者たちは、紀伊半島の自然を守る取り組みのなかで、神島の自然も調査し... -
人間の記録 南方熊楠 履歴書ほか
■人間の記録 南方熊楠 履歴書ほか 日本図書センター 20151123 □履歴書 抜群におもしろい。古い文体で候文だから読みにくいかと思ったがぐいぐい引きつけられた。 手紙が論文でありエッセーであり、語り芸であり。おそらく会話をしたら最高におもしろい... -
黄金色の夜<宇江敏勝>
■黄金色の夜<宇江敏勝>新宿書房 20151121 炭焼きや猿をとる猟師、丸太を流す筏師ら、山民の世界を描く小説6編。 猿をとる猟師がいて、薬として珍重されていたとは驚きだ。赤い顔の色が青白くかわり硬直していくのが人間の死に際の表情とそっくりで、皮... -
紀州 木の国・根の国物語 <中上健次>
■紀州 木の国・根の国物語 <中上健次>角川文庫 20150703 紀州の被差別部落をめぐったルポルタージュの傑作。 紀州は「輝くほど明るい闇に在る」闇の国だと位置づけ、被差別の地の独特の生命力と性と聖、そのうごめくようなエネルギーと暗さを探求する... -
死の国・熊野<豊島修>
■死の国・熊野<豊島修>講談社現代新書 20151018 熊野を「死の国」。大雲取越の道が「死出の山路」とよばれている。 しばしば死んだ肉親に行き会うとつたえられる。熊野一帯は死者の霊がかくれこもる他界であるという信仰をよくあらわしている。 花の窟... -
熊野・新宮の「大逆事件」前後<辻本雄一>
■熊野・新宮の「大逆事件」前後<辻本雄一>論創社 20150901 大逆事件の前、19歳の荒畑寒村が田辺に来て牟婁新報で好き放題に書いていた。新宮の大石誠之介らともつながっていた。新宮は談論風発。自由な弁論が花盛りのまちであり、社会主義やキリスト教も...
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