03ジャーナリズム– category –
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田中正造 21世紀への思想人<小松裕(ひろし)>
■筑摩書房20230816 水俣病の原田正純さん、震災被災地の農業をささえた新潟大の野中教授ら、現場からの発想と行動を徹底した人とおなじにおいがする筆者だ。そして、田中正造こそがその原点であると位置づけているようだ。 正造は伊藤博文とおなじ1841... -
映画宣伝おばちゃん 映画と仕事<松井寛子>
■零号出版20221229 大阪で居酒屋を営みながら映画宣伝の仕事をしている松井寛子さんこと「カンコさん」の半生記。 高校を卒業して結婚して子どもができたのに連れ合いは失踪。32歳で友だちと一膳飯屋を開き、いつのまにやら映画の道へ。「市民の映画館... -
魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣<石井妙子>
■文藝春秋20220918 アイリーンはアメリカ人の父とお嬢さん育ちの母のあいだで生まれたが両親とも離婚し再婚した。居場所を失って米国の祖父母の家で育った。 ユージンは幼いころに母にカメラをあたえられ、絵画をたしなんで写真を「絵」としてつくりこ... -
にっぽん情哥行<たけなか・ろう>
■ミュージックマガジン 20220704 民謡の元歌は春歌であることのほうが多いのだから、春歌を切り棄てると、いつどこで歌が生まれたのかわからなくなってしまう。秋田音頭はもとは春歌の親玉であり、夜ばいから夫婦生活、老人セックスまでうたっていた。 ... -
原発プロパガンダ<本間龍>
■岩波新書20220513 博報堂の営業担当だった筆者が、原発プロパガンダの変遷とそのねらい、効果をあきらかにしている。広告主に弱いメディアと、その弱点を広告代理店がたくみに利用してきたことがよくわかった。 3.11以前、「原発は日本のエネルギーの... -
沖縄が日本を倒す日<渡瀬夏彦>
■かもがわ出版20220331 沖縄県の翁長元知事は沖縄の自民党の中核にいたが、辺野古基地への反対を掲げて「オール沖縄」の旗頭になって知事に就任した。彼が亡くなると、国会議員だった玉城デニー氏が跡を継いだ。 筆者は、取材者というよりも、デニー氏の... -
打ちのめされるようなすごい本<米原真理>
■文藝春秋20210316 米原真理のエッセーは抜群におもしろかった。その彼女が「打ちのめされるような」本って、どんな作品なのだろうと思って読んだら、その書評の面白さに打ちのめされた。その切れ味は齋藤美奈子の書評を彷彿とさせる。 僕が書く書評はど... -
喪の途上にて 大事故遺族の悲哀の研究<野田正彰>
■岩波書店20201229 1985年の日航ジャンボ機墜落、82年の日航羽田沖墜落、88年の第一富士丸沈没、88年の上海列車事故。それぞれの遺族と筆者は向き合ってきた。 病気で亡くなるのもつらいけど、前触れもなく突然大切な人が消え、さらに遺体さえも肉片と... -
ロヒンギャ 差別の深層<宇田有三>高文研202008
ミャンマーからバングラデシュに流出したロヒンギャ難民について、「民族紛争」や「宗教迫害」と報じられたが、筆者はそうした見方こそが問題を深刻化させてきたと批判する。 ミャンマー政府は1982年以来、ロヒンギャをバングラデシュからの不法移民と... -
日常という名の鏡 ドキュメンタリー映画の界隈<佐藤真>
■日常という名の鏡 ドキュメンタリー映画の界隈<佐藤真>凱風社20191218 新潟水俣病の舞台となった阿賀野川をテーマにした「阿賀に生きる」の監督の本。久しぶりに新潟水俣病を勉強するため読み返した。 佐藤監督は水俣の映画の自主上映運動で新潟・... -
黒い海の記憶 いま死者の語りを聞くこと<山形孝夫>
■岩波書店 20191214 東日本大震災後の「花は咲く」、ちょっと前の「千の風になって」は個人的には好きになれない。筆者はこの2つを「死者がうたう歌」と位置づける。 戦前の日本社会は、仏壇を通して、身近な「生きている死者」に祈っていた。いま、... -
寺院消滅 失われる「地方」と「宗教」<鵜飼秀徳>
■日経BP社 20190728 多くの自治体が消滅するという調査結果が出て、話題を呼んだが、寺院はそれよりも早く危機を迎え、全国7万7000の寺院のうち無住寺院は約2万カ寺を数える。 その現状と、寺院再生の取り組みの現場を僧侶の資格を持つ記者が訪ね歩い... -
久野収集Ⅱ 市民主義者として
■久野収集Ⅱ 市民主義者として<佐高信編>岩波書店 20160709 1960年代から70年代の論文が多く、さすがにわかりにくい部分もあった。でも、国際連合とカント、さらにエラスムスといった思想家とのつながりなど、古い思想が現代の組織や運動にどうつなが... -
怪優伝 三國連太郎<佐野眞一>
■怪優伝 三國連太郎・死ぬまで演じつづけること<佐野眞一>講談社 三國が出演した映画を筆者がいっしょに視ながら、長時間インタビューをしてつくられたぜいたくな本だ。 被差別部落出身で祖父は棺桶をつくる職人だった。戦時中は兵役を拒否するた... -
メディアの地域貢献-「公共性」実現に向けて<早稲田大学メディア文化研究所編>
■メディアの地域貢献-「公共性」実現に向けて<早稲田大学メディア文化研究所編>一芸社 20160419 一覧性に富む新聞は、記事を読んでいるうちに、全く予期せぬ出会いが生まれるというところが魅力だ。アマゾンと比較したときの書店の魅力もそこにある。... -
そして、メディアは日本を戦争に導いた<半藤一利、保阪正康>
■そして、メディアは日本を戦争に導いた<半藤一利、保阪正康>文春文庫 20160417 明治期のジャーナリズムを支えたのは旧幕臣で、民権主義者だった。政府の宣伝機関ではなかった。 日清・日露戦争で国家政策に共鳴する人が増えたことで、メディアは国... -
現代地域メディア論<田村紀雄・白水繁彦編著>
■現代地域メディア論<田村紀雄・白水繁彦編著>日本評論社 20160304 メディアが、地域社会に役立つにはどうしたらよいのか、新たな可能性はあるのか…知りたくて手に取った。メディア当事者や関係が深い地域住民ではなく、研究者の論文だから、おもしろ... -
旅する力 深夜特急ノート<沢木耕太郎>
■旅する力 深夜特急ノート<沢木耕太郎>新潮文庫 平成23年 20151223 小学生のとき、わずか20分のバスに乗ってまちに出るのが大冒険だった。駅の近くの本屋やプラモデル屋はわくわくする空間だった。中学のとき、千葉県の犬吠埼まで3人で旅したときは大... -
紀州 木の国・根の国物語 <中上健次>
■紀州 木の国・根の国物語 <中上健次>角川文庫 20150703 紀州の被差別部落をめぐったルポルタージュの傑作。 紀州は「輝くほど明るい闇に在る」闇の国だと位置づけ、被差別の地の独特の生命力と性と聖、そのうごめくようなエネルギーと暗さを探求する... -
クラウド増殖する悪意<森達也>
■クラウド増殖する悪意<森達也>dAERO 20150404 厳罰化を求める風潮が強まり、死刑囚を弁護するとバッシングされる。 そこには、犯罪者は自分とはまったく関係のない怪物のような人間だ、という考え方がある。 実は凡庸な人間が集団になったときに「朝... -
作業中)民主主義はいかにして劣化するか<斎藤貴男>
■民主主義はいかにして劣化するか<斎藤貴男>KKベストセラーズ 20141226 ============= ▽50 安保法制懇 公的機関ではない。各大臣の諮問機関として位置づけられる審議会ならば、反対の立場の委員も参加させるのが慣例だが、たんに安倍さんが個... -
作業中)ノンフィクションは死なない<佐野眞一>
■ノンフィクションは死なない<佐野眞一>イースト新書 20141223 心配だった。どうなっているのか。週刊朝日の橋下徹のルポはなぜあんな形で生まれ、1回で切り捨てられたのか。盗作問題はいったい? その疑問にひとつひとつ答えている。 沈黙するあいだ... -
熱狂なきファシズム<想田和弘>
■熱狂なきファシズム<想田和弘> 河出書房新社 20141123 共感できる内容が多い。映画人でありながら、今の時代の流れを「熱狂なきファシズム」と危機感を抱き、憲法の意味について積極的に発言する。見習うべき態度だ。 さらに、彼の提唱する「観察映画... -
街場の五輪論<内田樹、小田嶋隆、平川克美>
■街場の五輪論<内田樹、小田嶋隆、平川克美>朝日新聞出版 いったん招致が決まると、五輪に異論を唱えるのが難しくなっている。一時期の大阪では、橋下に対して、地元の学者が反対できなくなった。 戦前を見ても、好戦的な世論が醸成されることそのものよ... -
作業中)時代を視る眼 本田靖春作品集
■時代を視る眼 本田靖春作品集 20140121 (1993年出版) ▽83 1988年、市ヶ谷の「反戦自衛官」たちの中心的存在であった第4中隊の佐藤備三二陸曹は、北方への転任の内示を不満として…多くの陸曹が佐藤氏の支持にまわった(反戦自衛官がいた時代)。... -
作業中)サンパウロからアマゾンへ<本田靖春>
■サンパウロからアマゾンへ<本田靖春> 20140107 昭和51年の本 ▽ひょうひょうとした文体。 ▽58 強精秘薬マラタツウ、これは勝手につけた名前。本当は、 …催淫剤 ▽65 アマゾンの木材は水に浮かず、沈んでしまう。原木を伐りだしてもイカダに組んで流... -
Myanmar(Burma) Peoples in the Winds of Change 1993-2012
■Myanmar(Burma) Peoples in the Winds of Change 1993-2012 <Yuzo Uda> 20130620 半世紀に及ぶ内戦がつづいたビルマに20年間にわたって通いつづけた筆者が、ビルマの出版社からだした写真集。 「軍事政権の支配する過酷な国」を撮しているはず... -
瓦礫の中から言葉を<辺見庸>
■瓦礫の中から言葉を<辺見庸>201211 NHK出版新書 石巻出身の辺見氏が震災をどう描くのだろう。「絆」とか「がんばろう」といった言葉の氾濫に違和感を感じ、被災状況の記事が定型化していることにおかしさは覚えるのだけど、どうしても的確な言葉が見つ... -
サンカの真実 三角寛の虚構<筒井功>
■サンカの真実 三角寛の虚構<筒井功>文春新書 20130618 サンカといえば三角寛。「秘密結社のような集団で、独特の文字と掟をもち、厳格な階級と秩序が存在する。普通社会とは全く異質の慣習、信仰、婚姻法、葬制などを伝え、彼らにだけ理解できる隠... -
甘粕正彦 乱心の曠野<佐野眞一>
■甘粕正彦 乱心の曠野<佐野眞一>新潮文庫 20110122 甘粕の祖父母からDNAをさぐり、墓地を訪ね、周辺の人物をすべて洗うすさまじいばかりの取材だ。 部下からも慕われ、前途洋々たる軍人だったが、訓練中の事故で重傷を負い、忌み嫌われる憲兵に転...