■かもがわ出版20220331
沖縄県の翁長元知事は沖縄の自民党の中核にいたが、辺野古基地への反対を掲げて「オール沖縄」の旗頭になって知事に就任した。彼が亡くなると、国会議員だった玉城デニー氏が跡を継いだ。
筆者は、取材者というよりも、デニー氏の擁立に深くかかわってきた。
そのなかで翁長氏と玉城デニー氏を深く信頼するようになってきた。
逆に、「オール沖縄」から離れていった経済人の「革新政党の皆さんの保守性には困ったもんですなぁ」といった言葉をとおして、革新系の人々の硬直化した態度をやんわり批判する。
「革新の皆さんの保守性」は、私も実感としてよくわかる。
沖縄は歴史的に革新系が強い。でも筆者は「沖縄の底力」の源泉をそこには求めない。翁長氏やデニー氏、彼らを支援した保守経済人に見られる「柔軟な民意の練り直し・再構築の力」に、中央権力に翻弄されながらも、ぎりぎりの窮地でふんばる「底力」を見出す。
政府による兵糧攻めや切り崩し、革新陣営の教条主義によって、保守経済人らが離れていく。「オール沖縄」の勢いは止まったかに見える。
それでも筆者は「沖縄は負けない」という。
基地による経済効果は年々減少し、経済人にとっても基地の存在は意味がなくなってきた。アジアを見渡すと、米国と軍事同盟を結ばんでいない国ばかりだ。軟弱地盤を隠し、うそで塗り固めてきた辺野古新基地が実現するとも考えられない。。
そうした客観情勢以上に大事なのは、「「死者の魂」とともに生きる力、あの世の人たちと寄り添いながらともに戦い、よろこびを分かち合える力があること」という。「それがある限り、だれもあきらめないし、沖縄は負けない」と断言する。
私は政治史にはそれほど興味はなかったが、「死者の魂とともに生きる力」の一文にひかれて買った。その意味はなんとなく見えてきたが、もう少しくわしく書いてほしかった。
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▽3 沖縄の底力とは「死者の魂」とともに生きる力、あの世の人たちと寄り添いながらともに戦い、よろこびを分かち合える力。沖縄は、だから、負けない。だれも、あきらめない。
▽91 「ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記」2020年公開。珠洲市出身で15歳からの3年間を沖縄のフリースクール「珊瑚舎スコーレ」で過ごした坂本菜の花さんが主人公。
▽92 京都出身の土木技師で、京都市役所を定年退職後、家族とともに2007年に沖縄に移住し、防衛省沖縄防衛局への情報開示請求をくり返しながら、辺野古新基地建設のデタラメさ加減を暴きつづけてきた北上田毅氏(沖縄平和市民連絡会)
「新基地建設は、必ず頓挫します。埋め立てがすすんでいるのは、工事がしやすい辺野古集落側ですが、この計画の肝心な部分は大浦湾側の深い海です。そこに発覚した軟弱地盤の問題は、当初想像した以上に深刻です……」
▽121 稲嶺進市長のすごいところは、政府から米軍再編交付金をカットされたあと、そのような交付金に頼らず、むしろ市の予算を増やしつづけたこと。「さまざまな省庁から予算を引き出せるようにみんなで知恵を絞ろう職員たちに指示を出したら……」
▽166 2016年7月22日、6都府県から数百人の機動隊員が派遣され、高江ヘリパッド強行建設に抗議する市民を徹底的に弾圧・排除し、4つのヘリパッドの「新たな工事」に着手。
▽185 翁長氏は当初、北部訓練場の過半の返還の見返りにヘリパッド完成を容認するとも見られる姿勢だったが、その後、ヘリパッド建設反対を明言し、政府側に利用される返還式典への出席を拒否し、「欠陥機オスプレイ撤去を求める緊急抗議集会」に参加したた。柔軟な「民意の練り直し・再構築の力」こそは、中央権力に翻弄されながらも、いつでもぎりぎりの窮地で肝心な場面でふんばってきた「沖縄の底力」
▽186 儀保昇氏(大宜味村・農業)無農薬有機農業を実践し、辺野古でも高江でも座り込みに参加。
▽194 2021年9月半ば、「オール沖縄」陣営の中心にいた保守経済人の呉屋守将氏(金秀グループ会長)が陣営から「離脱」。次の衆院選は自民党候補を支援。
▽203 「革新政党の皆さんの保守性には困ったもんですなぁ」
▽208 革新系の政党や労働団体の人々が、組織の論理や保身を優先してきたところはないのか。……保守の人たちに主導権を渡したくないという、長い時間をかけて培ってきてしまった「闘争の修正」のようなものに……
▽230 翁長氏「今の日本のアメリカに対しての従属はね、日本国憲法の上に日米地位協定があって、国会の上に日米合同委員会がある……F15から何から飛んでいくのをみんな日米合同委員会で決められて、何も問題がないということで国会でも議論にならない。報告もない」
▽239 「埋め立て土砂の調達先の変更」 県は、本土からの土砂搬入に対抗する措置として、県外からの外来生物侵入を防ぐことを目的とすr条例を設けた。沖縄防衛局は「それなら県内での土砂調達を大幅に増やそう」。……遺骨が出てくる慰霊の地の土砂。……危機感と憤りを表明したのが、戦没者の遺骨を発掘しつづけてきたボランティア集団「ガマフヤー」の具志堅隆松代表。
▽248 15年の使用期限や、環境保全策、基地使用協定締結など、あらゆる点で約束を反故にされてきた新基地建設なのである。政府の傍若無人なごり押し工事。
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