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中山教頭の人生テスト<佐向大監督>
■250703 誠実で柔和な雑用でもなんでもニコニコと笑みを浮かべながらこなす。だれよりも早く出勤して花に水をやり、だれよりも遅く帰る。でもどこか頼りない小学校の教頭先生が主人公。 4年前に妻を亡くし、中学生の娘と2人で暮らすが、娘との関係もギ... -
「民具のデザイン図鑑」が逆照射する現代文明の貧しさ
■<武蔵野美術大学民俗資料室編 加藤幸治監修>誠文堂新光社 20250630 民具はおもしろいが、それをどう生かせるのかは見えてこない。民博で開かれた「民具のミカタ博覧会」は、「液体を運ぶ」「おろす」「酒をシェアする」といった身体性で民具をならべ... -
「久髙オデッセイ第3部 風章」 島の祈りは生きつづける
久髙オデッセイの最終作である「久髙オデッセイ第3部 風章」をウェブで鑑賞し、助監督をつとめた高橋慈正さんの解説をきいた。 12年に一度の午年の年にもよおしていたイザイホーは、島で生まれ、島の男性と結婚した30歳から41歳の女性の女性が... -
人間とは何か 実存的精神療法<V・E・フランクル>
■春秋社250628 強制収容所を生きぬき、妻も親も失っても「生きる意味」をおいつづけたフランクルに魅せられてきた。この本では、フランクルの思想や精神医学者としての「ロゴセラピー」の実践が詳細につづられている。 フロイトの精神分析は、人間は性... -
国宝<李相日監督>2506
時間とカネをふんだんにかけて、伝統芸能の世界での人間物語をえがきだす傑作。 やくざの組長の息子として生まれた主人公の喜久雄(吉沢亮)は、抗争で父を殺され、上方歌舞伎の花井半二郎(渡辺謙)にひきとられる。半二郎には、喜久雄と同級生の跡取... -
ミッシング・ポイント The Reluctant Fundamentalist
■ミーラー・ナーイル監督 アマゾンプライムでなんとなくみつけた。思いのほかおもしろかった。 パキスタンの大学につとめるアメリカ人大学教授が誘拐される。 それにかかわっていると疑われたのがおなじ大学のパキスタン人教授だった。記者をよそおっ... -
古代DNA 日本人のきた道
■250611 国立科学博物館 人類は300万年前にアメリカで誕生。6万年前にアフリカを出て世界に広がり、日本列島には4万年前にたどりついた。 石垣島の新空港建設にともなって2007年に見つかった白保竿根田原洞穴遺跡は、25体の人骨が見つかり... -
タブノキ ものと人間の文化史<山形健介>
■法政大学出版局250613 大宮の図書館でたまたま見つけて斜め読み。能登の多くの神社では、タブノキは南洋とつながる神木としてあつかわれている。折口信夫も「タブの木」の重要さを随所で指摘していた。 以下、能登などに関係あるところだけ抜粋。・富山... -
デンジャラス<桐野夏生>
■中公文庫 数々の女性と浮名をやつし、それらの女性をモデルにした小説を書きつづけた谷崎潤一郞。彼と周囲の女たちの姿を、3番目の妻・松子の妹である重子の視点から描いた小説。 最初の妻千代は貞淑で谷崎の趣味にあわず、その妹で奔放な性格のせい子... -
特別展「日本、美のるつぼ」
「日本、美のるつぼ」を見に京都国立博物館へ。行列ができているから迷ったが、待ち時間は20分程度というからならんだ。2000円。 最初は目玉は、葛飾北斎の富嶽三十六景や国宝の「風神雷神図」 明治政府は、日本を美術や歴史をもつ「文明国」だと... -
東アジア災害人文学への招待<山泰幸・向井祐介編>
■臨川書店2505 京大人文研の共同研究班「東アジア災害人文学の構築」の中間報告。 「津波てんでんこ」「地震がきたら竹藪に逃げろ」といった言い伝えや、慰霊碑や追悼碑などの「災害遺産」を研究する「人文学」も、災害時に役立つのではないかという問題... -
日本の未来を切り拓く29の処方箋<釣島平三郎>
経済人である筆者が29人の人にインタビューして、日本の「未来」を考える本。日本の1人あたりの名目GDPは2000年の世界2位から2023年には34位になった。「失われた30年」の理由として、登場人物たちがあげるのは--・1990年代後半か... -
谷崎潤一郞記念館特別展「潤一郎、終活する~文豪谷崎 死への挑戦~」
無類の女好きだった谷崎がどんな「終活」をしたのか興味があって、芦屋市の谷崎潤一郞記念館を20年ぶりにたずねた。 谷崎は1915年、30歳で千代子と結婚して娘・鮎子が生まれた。だが、良妻賢母の妻とはあわず、奔放な妻の妹のせい子にいれあげ... -
能登デモクラシー<五百旗頭幸男監督>
私は新聞記者として奥能登の4市町を担当していたが、穴水町は話題の少ない、おだやかな町だった。 能登は全体に保守的で、役所がいばっていて、議会はなぁなぁなのだが、珠洲市には原発問題、輪島市では震災がれき問題があったから「野党」が存在した... -
傷を愛せるか<宮地尚子>ちくま文庫
■ちくま文庫2505 「弱いまま、強くあるということ」がテーマ。 「強いまま強い」人は、他者の痛みや弱さを想像できない。だから人とつながれない。自分の「強さ」を凌駕する力に襲われたらポッキリ折れる。人とつながるには「弱さ」という傷を自覚し、... -
季語の科学<尾池和夫>
■淡交社250520 元京大総長の地球科学者は俳人でもある。俳句の季語とその科学的裏づけや解説をくわえていて、文理を超えた博覧強記ぶりに舌を巻く。「へーそーだったんだぁ」というおどろきに満ちた本。以下その羅列。 日永 かつて1日のはじまりは日没... -
Buena Vista Social Club Broadway Review2025
NYでミュージカルを見た勢いで、ブエナビスタの経緯を知りたくて購入。おなじことを何度もくりかえしていて冗長ではあるのだけど、くりかえしのおかげで英語でも理解しやすかった。大ざっぱな歴史を知るにはよいパンフレット。パンフレットにしては20... -
民具のミカタ博覧会 (国立民族学博物館)
1970年の大阪万博のために岡本太郎が発案し、梅棹忠夫と泉靖一が指導したEEM(日本万国博覧会世界民族資料収集団)による世界の民具と、宮本常一らが収集した武蔵美術大の9万点の民俗資料(ムサビコレクション)から抜粋して展示している。 メキシ... -
CONCLAVE(教皇選挙)
飛行機で見た。フランシスコ法王が亡くなったばかりの今にぴったり。英語はききとれないが字幕があるからなんとか理解できた。 人望があつい教皇が突然亡くなり、次期教皇をきめるコンクラーベがはじまる。その運営責任者ロレンス枢機卿が主人公だ。 ... -
Maria
2024年公開の映画を飛行機で鑑賞。 アンジェリーナ・ジョリーが、ギリシャ系アメリカ人でギリシャで活躍した伝説のオペラ歌手の最後の日々を演じる。 マリア・カラスは、ギリシャの億万長者オナシスと恋人関係になり、ケネディ大統領とも知遇をえ... -
LINDA
飛行機内で鑑賞した2024年のアルゼンチン映画。スペイン語と英語の字幕があるから理解しやすい。 お屋敷でメイドとして働くことになった25歳のシンブルマザー・リンダが主人公。 金持ちで幸せそうな家族が、美しいリンダの性的魅力によってしだ... -
生きし証よ永遠に<高本たつ江>
■250411 静岡県の藤川村(川根本町→島田市)で生まれた高本鷹一さん(1915〜2019)の103年の人生を本人の文章や短歌、絵をもとに娘がまとめた。 川の事故で34歳の父を6歳のときに亡くし、母から百人一首の手ほどきをうけて短歌にのめりこ... -
みんなのセルフタッチング<中川れい子>
■日貿出版社250410 阪神淡路大震災で「人と人が寄り添うことが力になる」と実感し、「タッチケア」の活動をはじめ、東日本大震災では、タッチケアの手法をまとめた小冊子被災地へ届けた。 たが、新型コロナのパンデミックで「タッチ」が不可能になった。... -
死に向き合って生きる<島薗進>
■NHKテキスト250408 いかに死に向き合うか、詩歌や小説、映画などを通して考える本。 「死を見つめよ」というメッセージはラテン語の「メメント・モリ」、日本語の「無常」など古くからあった。20世紀前半にはやった実存主義は、死を前にしていかに生... -
日本人の死生観Ⅱ霊性の個人史<鎌田東二>
■作品社250405 自らの歩みとがんの体験をもとに死生観をうきぼりにしていく。 世間知らずの女子学生をつれて、佐渡から隠岐まで島渡の逃避行をするなどのハチャメチャぶり。その枠からはずれた破壊力を自覚して「スサノヲの弟子」を自称する。 22歳... -
日本人の死生観Ⅰ 霊性の思想史<鎌田東二>
■作品社250330 日本の宗教は多神教文化で、その根幹には神々の融合や統合がある。大国主神が古事記で5つの名をもち、日本書紀で7つの名をもつのはそのためだ。 4つのプレートと寒流・暖流がぶつかりあう複雑な自然が、異質な他者を結びつける多様な... -
海路残照<森崎和江>
■朝日新聞出版 20250328 玄界灘につたわる、ほら貝を食べて不老長寿になった海女が津軽に流れていくという伝説からはじまり、若狭や隠岐、越後の寺泊、佐渡の小木…の八百比丘尼の跡をたどる。 人魚の肉を食べて幾百年も生きつづけた八百比丘尼の伝説は... -
復興と文化 常態化する災後差は木のなかで<聖教新聞取材班>
■第三文明社250303 能登の民俗文化が消えてしまうのではないか、どうしたら防げるのかヒントを得られるかと思い、「復興と文化」という名にひかれて購入した。勉強になる内容もあったけど、私の知りたいこととははずれていた。 以下、興味深いところを抜... -
自立する障がい者は周囲を明るくする
「まちで生きる、まちが変わる つくば自立生活センターほにゃらの挑戦」(柴田大輔、夕書房)の著者と登場人物が「自立生活はだれにでもできる」をテーマに語りあうシンポジウムが東京で開かれた。 1990年代に、筑波の学生だった障がい者の活動から... -
滞在型支援の金田真須美さん
■全国防災関係人口ミートアップ250224 支援者には興味がない。被災者からなにをどうしたらよいか、引き出すくらいしかできない。 丹波市の水害では役所からボラセンを立ちあげてくれ、と言われた。 センターの箱物とネットと電話回線、軽トラック2台...