■250703
誠実で柔和な雑用でもなんでもニコニコと笑みを浮かべながらこなす。だれよりも早く出勤して花に水をやり、だれよりも遅く帰る。でもどこか頼りない小学校の教頭先生が主人公。
4年前に妻を亡くし、中学生の娘と2人で暮らすが、娘との関係もギクシャクしている。校長昇進をめざしているけど忙しさにかまけて勉強は進まない。
女性校長にさからった女教師が担任をはずされ、そのかわりにパワハラ体質の黒川という男性教師が赴任するが、生徒とのあいだで問題をおこして、出勤しなくなってしまう。かわりに主人公がクラス担任を兼ねることになる。
教育長をつとめる元上司に「校長にこびをうってでも推薦状を書いてもらって校長試験をうけろ」とあおられて欲をだす。校長昇進試験ではまさかのカンニング。
母子家庭で母親が水商売をしている女の子が問題をおこして女校長は「出席停止」を決める。優等生でスポーツ万能の男子生徒は「けんか」でけがをする。
でも最大のモンスターは、優等生で典型的な「いい子」だった……というミステリーまがいの展開も。
目の前の問題を前にときに妥協し、うろたえ、ときに欲に身を委ねながら、基本的にまじめに生きる。ひとつひとつの問題が主人公にとっての「人生テスト」である。
内田樹がよく言う、人のため社会のために働こうとする地味な「大人」であり、宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」のデクノボーでもある。
問題をおこした子に「ここだけの話だけど……先生や大人がこうしなさいって言うことは全部まちがっている。自分のやりたいと思うことをやればいい」と語りかける主人公の正直さは輝いてみえた。
作品全体のできは、いまいち食い足りない部分もあったが、見終わったときの印象は悪くなかった。
目次
コメント