■独立国家のつくりかた<坂口恭平>講談社現代新書 20121028
東京のホームレスの小屋を調べて本にした学生がいる、というのはずいぶん前に聞いたことがあった。その学生だった人がこの本の筆者だ。
つきあっていたホームレスは、捨てられた余剰物を転用することで家を建てた。「僕」たちが気づいていないところにいつでも収穫できる「自然」、つまり使えるゴミがあることを見つけた。リヤカーにバッテリーを積み込んで、落ちている電化製品が使えるかどうかを調べて拾い、リサイクルセンターで売る。図書館は書斎で、スーパーは冷蔵庫だ。
そうした付き合いで0円でも暮らせることを知ったことが、筆者のその後の人生を決めたという。
車輪をつけた広さ三畳、3万円のモバイルハウスをつくる。法律上、家ではないから免許はいらず、固定資産税もかからない。熊本市では築80年の敷地200平方メートルの民家を月3万円で借りた。これを被災地からの避難所にし、月100人以上が宿泊し60人が熊本に移住した。
筆者はみずから知恵をしぼって金を稼いでいる。生きるためには「考えろ」と言う。そう、必死になって考えれば、まだまだ生きることはできる。創造性を発揮することができる……はずなのだ。
さまざまな市民運動にもかかわっている。
「人はよく仕事が忙しくてできないと言う。一番自分という身体が有効に使えるはずの『社会を変える』という行為にだけ楽をしちゃってる。それで、試しもしないのに社会はなかなか変わらないとか言っている。それは楽をしているのではない。生きることをさぼっているのだ。……死の灰が舞っているのに、金を稼ぐために働けという会社のところで働くのは、適当にしよう」
彼ほどの強さをもつ人間がそれほどいるとは思えないが、「生きることをさぼっている」というのは痛い指摘だ。
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▽25 畳一枚より40センチ長いだけの空間。「いや、この家は寝室にすぎないから」。公園は今とトイレと水場を兼ねたもの。図書館は本棚、スーパーは冷蔵庫。まさに「レイヤーライフ」。レヴィ=ストロースが提唱した、ありあわせのものでやりくりするという意味ん「ブリコラージュ」な所有。
……彼らは捨てられた余剰物を転用することで家を建てていた。彼らは僕たちが気づいていないところに、いつでも収穫できる「自然」が存在していることを見つけた。それが都市のゴミだった。「都市の幸」
リヤカーにバッテリーを積み込んでは、路上に落ちている電化製品が使えるかどうかを調べて、使えたら拾ってリサイクルセンターで売る。だから冷蔵庫でも洗濯機でもバッテリー一つで動かすことができる。
▽42 路上生活者は、これからの時代をサバイブするうえでの生きたテキストだ。
▽49 車輪をつけたモバイルハウスをつくる。家賃を払わなければ生きていけないシステムは生存権を脅かしているのでは。土地と定着していない家。法律上は家ではないから免許がなくても建てられるし、固定資産税もかからない。リヤカーの車輪を4つつけたモバイルハウス。総工費3万円。広さは三畳間、太陽光発電でiPadも使える。
▽70 家の基礎をコンクリートで固めることへの疑問。
▽88 熊本市の築80年の民家、敷地200平方メートルを家賃3万円で借りた。ここを東日本からの人の避難所にした。1カ月で100人以上が宿泊し、60人が熊本に移住した。
▽106 「態度経済」
▽108 今は、人が目的もなく集まったりすると、新興宗教と思われてしまう。今は、人が何の目的おなく集まったりするところがまったくないのである。(路上生活者)自分が暮らす家を建ててもらったという体験は、何者にも代え難い。それ以降、(家を建てた)鈴木さんは本当に困ることがなくなったそうだ。必要なものは瞬時にまわりから集まってくる。(〓まず贈与する)
▽113 交易による態度経済 人と人が直接出会うなかで、お互いの才能という貨幣を身振りを使って交換する。
▽121
▽140 出版の交渉。「初版の3000部は印税はゼロでいいです。もしもこれが売れたら二版目からは印税を10%にしてください」。英語訳もつけたかった。「いくらなら出せる」「5万円なら」と出版社。その5万円で弟の友人に翻訳してもらった。
海外営業も自分で。パリへ。建築系の本屋をすべてまわり、美術館も。ロンドンにも。パリではキュレーターと出会って展覧会に出品することに。欧州では無名のちょっと刺激的な人間のほうが重宝されることを知った。
▽144 絵を売るときはいつも緊張する。値段を決めるとき、適当じゃだめなのだ。
▽147 本を執筆することになり、ホテルの仕事をやめる。2007年。この時で貯金200万円。妻は妊娠中。
ずっと自分のウェブサイトで詳細な日記を書いていた。自分の思考を細かく伝えることだけ考えていた。
▽151 07年7月から毎日7時間正午まで書くことを守った……4カ月後に出版。
▽153 ボランティアのオークションに一番気に入った作品を送った。お金が自分の懐に入らなくても、誰かがそれを気に入り購入するという態度自体に価値があることはすでに知っていたからだ。お金は入らなかったが、だれが買ってくれたのかはわかった。
▽157 僕は、人に自分の作品を売り込んだりしていない。匿名化したレイヤーや相手のレイヤーに乗る行為は、独自の態度経済の破綻につながるからだ。
そのかわり、ただ人に会った。自分の態度を表すことが一番できるのは「日常」だ。ただ人に会う。交易する。そして日記を徹底的に公表しつづける。
▽162 (〓やりたいことより使命)やりたいことは無視して、自分がやらないと誰がやる、ということをやらないといけない。
▽166 すべての人の無意識が構築したもの、それが匿名化したシステム。無意識というのは本当に何も考えないでう厄介な代物だから「疑問」を持つ。そこに気づいたら、無意識ではなく意識で生活している人を見つけないといけない。(田舎生活に埋没している人=無意識、気づきによって……〓)そして隅田川で意識生活者と出会った。
▽171 僕は断定をする。……学生だからといって小さい声で裏に隠れて言うのではなく、表に出て来て表明しろというのが表現者なんだ。行動者なんだ。
▽174 行動する燃料は、ひたすら社会実現をしようとする態度である。……自らの使命とは、これまであらゆる人間たちが挑戦しては不可能だったいろんな事柄、それと自分が実現したいと思っている使命は実は似ていることが多い。……
▽177 人はよく仕事が忙しくてできないと言う。一番自分という身体が有効に使えるはずの「社会を変える」という行為にだけ楽をしちゃってる。それで、試しもしないのに、社会はなかなか変わらないとか言っている。それは楽をしているのではない。ただ「生きること」をさぼっているのだ。後は一生懸命生きつやっている。
死の灰が舞っているのに、金を稼ぐために働けという会社のところで働くのは、適当にしよう。
▽197 「0円特区」をつくるため、zero-public.comというサイトをつくった。
▽201 特区では、モバイルハウスを建てられる。
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