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帝国日本の生活空間<ジョナサン・サンド>
■帝国日本の生活空間<ジョナサン・サンド>岩波書店2015年 2016/01/09 住宅のつくりや椅子文化、味の素などの身近なモノや習慣と、大日本帝国やアメリカといった植民地帝国の歩みとのつながりを、サイードのオリエンタリズムの理論的枠組みを利用して描い... -
日本文化の形成 下<宮本常一>
■日本文化の形成 下<宮本常一>ちくま学芸文庫 1994年 20160103 ▽倭人 蘇我蝦夷の名に見るように、蝦夷や毛人を名乗ることは卑称ではなかった。もともと日本に住んでいた人たちは毛深かった。そこへ、朝鮮半島を経由して多くの人が渡来した。彼らは貧... -
熊楠の森−−神島<後藤伸、玉井済夫、中瀬喜陽>
■熊楠の森−−神島<後藤伸、玉井済夫、中瀬喜陽>農文協 2011年 20151229 田辺市の沖に浮かぶ神島は、神社合祀の伐採計画から南方熊楠が守ったことで知られる。 高校教師だった筆者たちは、紀伊半島の自然を守る取り組みのなかで、神島の自然も調査し... -
日本文化の形成 中<宮本常一>
■日本文化の形成 中<宮本常一>ちくま学芸文庫 20151216 筆者はみずから農漁業の経験があるから、古い時代の道具を見て、それがどう使われるか即座に理解できる。生業の伝統を受け継いでいる人だから、歴史への想像力が生まれる。生業から切り離されて... -
満洲暴走 隠された構造<安冨歩>
■満洲暴走 隠された構造<安冨歩>角川新書 2015 20151226 「東大話法」などユニークな著作を次々に出している筆者は、経済学者でありながら、民俗や自然環境、歴史など、幅広い分野を調べ、大きな物語をつくりだす。経済学者の森嶋通夫に似ているなあ... -
旅する力 深夜特急ノート<沢木耕太郎>
■旅する力 深夜特急ノート<沢木耕太郎>新潮文庫 平成23年 20151223 小学生のとき、わずか20分のバスに乗ってまちに出るのが大冒険だった。駅の近くの本屋やプラモデル屋はわくわくする空間だった。中学のとき、千葉県の犬吠埼まで3人で旅したときは大... -
イリオモテのターザン<水田耕平>
■イリオモテのターザン<水田耕平>南山舎 2009年 20151220 西表島の果ての白浜という集落から、船でしかいけない船浮という集落へ渡り、さらにそこから30分船に乗ったウダラ浜という無人の浜に、何十年も住みつづける「ターザン」と呼ばれる男性がいた... -
日本文化の形成 上 <宮本常一>
■日本文化の形成 上 <宮本常一> ちくま学芸文庫 20151212 著者最晩年の講演と遺稿をまとめた本。 蘇我蝦夷の「エミシ」というのは毛の深い人たちという意味であり、新たに海の彼方から来た人たちが、列島土着の縄文文化人たちを「エミシ」と言ったの... -
サバイバル宗教論<佐藤優>
■サバイバル宗教論<佐藤優>文春新書 20151201 相国寺での僧侶を対象にした講演をまとめた。 宗教やさまざまな思想がどんな流れ・系譜の中で生まれてきたか、わかりやすく説明されている。 フランス革命以後の世界は基本的に理性を信頼し、合理的な思考... -
ニュータウンの「夢」建てなおします 向島からの挑戦 <杉本星子、小林大祐、西川祐子>
■ニュータウンの「夢」建てなおします 向島からの朝鮮 <杉本星子、小林大祐、西川祐子> 昭和堂 20151127 京都の南部にある向島ニュータウンといえば、荒廃した人工都市というイメージがある。公営住宅の収入による入居制限を強化した結果、社会的弱... -
解放の文学 100冊のこだま<音谷健郎>
■解放の文学 100冊のこだま<音谷健郎> 解放出版社 20151103 被差別部落、大逆事件、プロレタリア文学、原爆、憲法、沖縄、在日朝鮮人の詩人、水俣病、東日本大震災……といったものをテーマにした本100冊を紹介している。 同和問題をめぐる文学といえば... -
人間の記録 南方熊楠 履歴書ほか
■人間の記録 南方熊楠 履歴書ほか 日本図書センター 20151123 □履歴書 抜群におもしろい。古い文体で候文だから読みにくいかと思ったがぐいぐい引きつけられた。 手紙が論文でありエッセーであり、語り芸であり。おそらく会話をしたら最高におもしろい... -
歴史の話 <網野善彦 鶴見俊輔>
■歴史の話 <網野善彦 鶴見俊輔> 朝日新聞出版20151120 高度成長は、南北朝期とならぶ大転換期であるという網野善彦の主張を簡単に記述しているものがないかと思って読むことにした。おもしろくて一気に読んでしまった。 まずは、「気配の感覚」。科学... -
黄金色の夜<宇江敏勝>
■黄金色の夜<宇江敏勝>新宿書房 20151121 炭焼きや猿をとる猟師、丸太を流す筏師ら、山民の世界を描く小説6編。 猿をとる猟師がいて、薬として珍重されていたとは驚きだ。赤い顔の色が青白くかわり硬直していくのが人間の死に際の表情とそっくりで、皮... -
紀州 木の国・根の国物語 <中上健次>
■紀州 木の国・根の国物語 <中上健次>角川文庫 20150703 紀州の被差別部落をめぐったルポルタージュの傑作。 紀州は「輝くほど明るい闇に在る」闇の国だと位置づけ、被差別の地の独特の生命力と性と聖、そのうごめくようなエネルギーと暗さを探求する... -
死の国・熊野<豊島修>
■死の国・熊野<豊島修>講談社現代新書 20151018 熊野を「死の国」。大雲取越の道が「死出の山路」とよばれている。 しばしば死んだ肉親に行き会うとつたえられる。熊野一帯は死者の霊がかくれこもる他界であるという信仰をよくあらわしている。 花の窟... -
十津川街道 街道をゆく<司馬遼太郎>
■十津川街道 街道をゆく12<司馬遼太郎>20151017 ================== ▽8 十津川郷は、平坦地はほとんどなく、秘境という人文・自然地理の概念にこれほどあてはまる地域は日本でもまずすくないといっていい。 ▽「村」としての面積でも日本一だが... -
熊野・新宮の「大逆事件」前後<辻本雄一>
■熊野・新宮の「大逆事件」前後<辻本雄一>論創社 20150901 大逆事件の前、19歳の荒畑寒村が田辺に来て牟婁新報で好き放題に書いていた。新宮の大石誠之介らともつながっていた。新宮は談論風発。自由な弁論が花盛りのまちであり、社会主義やキリスト教も... -
世界遺産 熊野古道<宇江敏勝>
■世界遺産 熊野古道<宇江敏勝> 新宿書房 熊野詣は大正時代に終わり、車道の建設などによって道は姿を消し、残った部分も峠越えなどの難路は忘れられていた。中辺路か関心がはらわれるようになったのは昭和30年代からという。昭和52年、中辺路は文化庁... -
観音浄土に船出した人びと 熊野と補陀落渡海<根井浄>
■観音浄土に船出した人びと 熊野と補陀落渡海<根井浄> 吉川弘文館 20150709 ▽2 渡海の介添えであった役人たちは、金光坊を無理矢理に海中に沈めた。この事件以来、生きながらの補陀落渡海は中止されたという。16世紀末。 …金光坊の生まれ変わりとい... -
古代日本の航海術<茂在寅男>
■古代日本の航海術<茂在寅男>小学館ライブラリー20161016 筆者は記紀の記述に、ポリネシア語などからの語彙があると考える。たとえばアマノイワフネのAMAというのはカヌーのアウトリガーだという。古事記である種の速い船を「枯野」と呼び、日本書紀... -
災害と地名 <海の熊野地名研究会設立10周年記念>
■災害と地名 <海の熊野地名研究会設立10周年記念> 2015/08/24 被害の状況や小字と地名との関係を、特に災害と地名の関係を解き明かし、地名の持つ重要性と、市町村合併や住居表示によって簡単に地名を変えてしまう愚かしさを訴えている。 地名は、自然... -
明日なき森 カメムシ先生が熊野で語る<後藤伸講演録>
■明日なき森 カメムシ先生が熊野で語る<後藤伸講演録>20150611 栗栖太一という人は、遠くから山を見ただけで木の本数までわかってしまう。虫を捕まえるには、「そこで座って待ってろ。木になったら、向こうからやって来るさかな」。動物や植物のことを... -
枯木灘<中上健次>
■枯木灘<中上健次>河出文庫 20150626 入り組んだ血縁関係を読み解くだけでも大変で、読みやすい小説ではないが、いつかのめりこんだ。 主人公秋幸は、種違いの兄弟と腹違いの兄弟を何人ももつ。種違いの兄は12歳のときに自殺した。熊野の新宮という、... -
街道をゆく 熊野・古座街道<司馬遼太郎>
■街道をゆく 熊野・古座街道<司馬遼太郎> 朝日文庫 201506 古座川沿いの古い街道を旅しながら、「若衆組」をテーマに話を展開する。東日本は家父長制・封建制が根強いが、西日本の農村社会には、「若衆組」という身分や家柄に関係ない組織が存在... -
南方熊楠 地球志向の比較学<鶴見和子>
■南方熊楠 地球志向の比較学<鶴見和子> 講談社学術文庫 20150609 □南方熊楠の世界 南方は文系・理系にとらわれない巨人だ。ヨーロッパの学問のまねではなく、ヨーロッパと日本とアジアの学問と格闘するなかで、大乗仏教を基礎に置いたみずからの理論... -
熊野中辺路 歴史と風土<熊野中辺路刊行会>
■熊野中辺路 歴史と風土<熊野中辺路刊行会> 20150610 ▽道湯川の廃墟 平家屋敷(本宮町平治川) ▽音無茶の里 ▽97 小栗判官 実際には小栗自身が熊野にはきていない。にもかかわらず、湯峰温泉には、回復したので不要になった車を埋めたという車塚や、... -
聖地巡礼 熊野紀行<内田樹・釈徹宗>
■聖地巡礼 熊野紀行<内田樹・釈徹宗>2015/05/29 ▽佐藤春夫記念館長の辻本雄一さん、新宮市観光協会の森本裕司さん(〓本業は漢方薬屋)。中上健次が設立した「熊野大学」の事務局長をつとめる。 ▽15 修験道の聖地でもあるし、陰陽道・儒教・道教などた... -
南方熊楠−森羅万象を見つめた少年<飯倉照平>
■南方熊楠−森羅万象を見つめた少年<飯倉照平>岩波ジュニア新書 20150413 ▽6 身分の高くない人たちと知り合いになるのが、熊楠の他人とのつきあいかたの特長でした。 ▽7 日清戦争までの日本。明治の初年には中国から日本に来た文人たちは、たいへんな... -
世界遺産 神々の眠る「熊野」を歩く <植島啓司>
■世界遺産 神々の眠る「熊野」を歩く <植島啓司> 集英社新書 20150409 ネタ探しの読書。 紀伊路と伊勢路、吉野・大峯からの山越えルートという3つの道筋。 はじめから折口信夫が出てきて、オッと思った。能登とつながりが見えてくるかな。 明治以降...