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石の宗教<五来重>
■石の宗教<五来重>講談社学術文庫 20161003 熊野を歩くと、石をご神体にする社が多い。社でなくても丸石がお地蔵さんの横に鎮座していたりする。男根型の石柱をご神体とする例は全国あちこちで目にする。石に対する信仰はどうやって生まれ、どんな分布... -
コロンビア内戦 ゲリラと麻薬と殺戮と<伊高浩昭>
■コロンビア内戦 ゲリラと麻薬と殺戮と<伊高浩昭> 論創社 コロンビアは、麻薬カルテルと左翼ゲリラと右翼民兵がごちゃまぜになった暴力が吹き荒れてきた。貧しいものの味方であるはずの左翼ゲリラも、冷戦崩壊後の危機を麻薬を資金源とすることで生き... -
カヌー式生活<野田知佑>
■カヌー式生活<野田知佑>文藝春秋 20160923 久々にカヌーに乗るようになって、アユ釣りの人との確執やらの話を聞いて、野田さんはどんな思いでカヌーに乗りつづけてきたんだろう、と考えた。以前何冊か読んでいたが、10年以上ぶりに手に取った。 若いこ... -
平和ってなんだろう 「軍隊をすてた国」コスタリカから考える <足立力也>
■平和ってなんだろう 「軍隊をすてた国」コスタリカから考える <足立力也> 岩波ジュニア新書 20160912 理想を掲げて革命を起こした国がその後、独裁国家のようになってしまう。逆にほどほどの改革しかしていないように見えた国が、穏便で平和な国家... -
流れ施餓鬼<宇江敏勝>
■流れ施餓鬼<宇江敏勝> 新宿書房 20160907 熊野川と日置川流域を舞台にした小説6編。高校卒業後、炭焼きや林業で暮らしてきた著者の体験や古老から聞いた話をもとにしている。 タイトルとなった「流れ施餓鬼」は、麦わらの舟に新仏をのせ、火をつけて... -
帰ってきたヒトラー
■映画「帰ってきたヒトラー」20160903 1945年に自殺したはずのヒトラーが現代にタイムスリップする。自分を総統であると理解できない現代人のなかで、とんちんかんなふるまいをするヒトラーは笑いの対象だ。そのうち、モノマネの喜劇役者として登用される... -
こう直さなければ裁判員裁判は空洞になる<五十嵐二葉>
■こう直さなければ裁判員裁判は空洞になる<五十嵐二葉>現代人文社 20160825 裁判員制度は、近代国家で唯一市民参加司法をもたない日本に対するアメリカの財界からの要求に応じてできたという。 アメリカの陪審員のようなものだと思っていたが、実際... -
日本の食文化史 旧石器時代から現代まで<石毛直道>
■日本の食文化史 旧石器時代から現代まで<石毛直道> 岩波書店 20160822 2013年、「和食・日本人の伝統的な食文化」が、ユネスコ無形文化遺産に登録された。その和食の起源から現代への流れを外国人にわかるように紹介している。外国人にわかるという... -
トウガラシの世界史<山本紀夫>
■トウガラシの世界史<山本紀夫>中公新書 20160815 コロンブスが米大陸からトウガラシをもってこなかったら、インドのカレーはあんなに辛くなく、キムチももっとタンパクで、麻婆豆腐もマイルドだった。トウガラシは世界中の味覚を変えてしまった。どん... -
明恵 夢を生きる <河合隼雄>
■明恵 夢を生きる<河合隼雄>講談社α文庫 20160811 明恵は、華厳宗の中興の祖で、南方熊楠の世界観にも影響を与えた。19歳から亡くなる1年前まで夢を記録しつづけたことでも知られる。生も死もすべてのものが一体となっていると考える華厳経の世界と、... -
一勝百敗の皇帝 項羽と劉邦の真実−板野博行
■一勝百敗の皇帝 項羽と劉邦の真実<板野博行>KKベストセラーズ 20160810 司馬遷の「史記」で有名な項羽と劉邦の物語をたどる本。単に物語として読んでも、かつて学んだ歴史の復習になっておもしろい。 秦の始皇帝は暴君のイメージだが、各地でバラ... -
ビルマの竪琴 市川崑監督
■ビルマの竪琴 市川崑 20160809 三國連太郎の演技を見たくてアマゾンの動画で見た。モノクロ映画だ。 ビルマの竪琴は、小説は読んだことがあった。 三國が演じる隊長は音楽の専門家で、彼の率いる小隊はことあるたびに歌をうたった。主人公の水島... -
ホセ・ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領
■ホセ・ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領<アンドレス・ダンサ エルネスト・トゥルボヴィッツ 大橋美帆訳> 角川文庫 20160722 若いころは左翼ゲリラ・トゥパマロスに参加し、軍事政権によって幾度も投獄された。軍政が終わって「拡大戦線」の政治... -
ヒガンバナが日本に来た道-有薗正一郎
■ヒガンバナが日本に来た道<有薗正一郎>海青社 20160718 ヒガンバナは四国に多かった。人間が植えているわけではないのに、田の畔や集落の周辺に生えていた。アンズのある集落は朝鮮半島からの渡来人のつくった集落だと聞いたこともあるが、ヒガンバ... -
対称性人類学-中沢新一
■対称性人類学<中沢新一>講談社選書メチエ 20160717 人類の思考の様式は、1万年前にはじまった新石器革命の時期にすべて獲得されていた。それが「野生の思考」だった。 第一次の「形而上学革命」である一神教は、こうした「野生の思考」を抑圧すること... -
天皇とマッカーサーのどちらが偉い?<室謙二>
■天皇とマッカーサーのどちらが偉い? 日本が自由であったころの回想 <室謙二> 岩波書店 20160715 終戦の翌年に生まれた筆者は、戦争に懐疑的だった両親をもち、学生時代はベ平連にかかわり、その後、アメリカに渡って国籍を取った。アメリカの自... -
東北学 vol.8 飢えの記憶
■東北学 vol.8 飢えの記憶 □いくつもの日本 特別対談 「ひとつの日本」というスタンスではなく、「いくつもの日本」によって、地域の多様さをとらえる。それによって「ひとつの日本」が陥りがちなナショナリズム的な思考を回避できる。だが「いくつ... -
夢の船旅 父中上健次と熊野<中上紀>
■夢の船旅 父中上健次と熊野<中上紀>河出書房新社 20160713 中上健次の人物像を知りたくて購入した。作家の中上紀が、父の中上健次の思い出と、その背景に広がる「熊野」の印象をつづっている。 父は床にうつぶせになって、タバコを吹かし、コーヒ... -
日記をつづるということ 国民教育装置とその逸脱-西川祐子
■日記をつづるということ 国民教育装置とその逸脱<西川祐子>吉川弘文館 20160711 日記を史料として用いるためには、日記の通読「つづけ読み」と同時に、事実確認のために他の日記の併読「ならべ読み」をする必要がある。「つづけ読み」と「ならべ読... -
久野収集Ⅱ 市民主義者として
■久野収集Ⅱ 市民主義者として<佐高信編>岩波書店 20160709 1960年代から70年代の論文が多く、さすがにわかりにくい部分もあった。でも、国際連合とカント、さらにエラスムスといった思想家とのつながりなど、古い思想が現代の組織や運動にどうつなが... -
丸腰国家〜軍隊を放棄したコスタリカ60年の平和戦略<足立力也>
■丸腰国家〜軍隊を放棄したコスタリカ60年の平和戦略<足立力也>扶桑社新書 20160707 コスタリカは「軍隊のない国」「平和憲法の国」だ。 一方で1980年代の中米内戦時代には、それほど理想的な国には見えなかった。米軍顧問がコスタリカ領内でニカラ... -
ルードウィヒ・B<手塚治虫>
■ルードウィヒ・B<手塚治虫>潮出版社 20160707 手塚が最後に描いた未完の作品。 庶民の宮廷楽士の息子として生まれたベートーベンの青春時代を描く。 もう一人の主人公は貴族のフランツ・クロイツシュタイン。「ルードウィヒ」の名に復讐心を抱き... -
葬式と檀家<圭室(たまむろ)文雄>
■葬式と檀家<圭室(たまむろ)文雄>吉川弘文館1999年 2016/06/28 カトリック教会の神父さんから借りて、飛ばし読みした。 キリシタンを弾圧するために檀家制度がつくられ、人びとは寺の住職に自分の身分を保証してもらわなければならなくなった。檀... -
むらの社会を研究する<日本村落研究学会 鳥越皓之編>
■むらの社会を研究する<日本村落研究学会 鳥越皓之編>農文協 日本におけるむらの研究の流れや、研究の方法、現代の課題などを網羅していてわかりやすい。本格的にむら研究をはじめる人には必読の書だろう。私のような素人が読んでもおもしろかった。 ... -
家族農業が世界の未来を拓く<国連世界食糧保障委員会専門家ハイレベル・パネル>
■家族農業が世界の未来を拓く<国連世界食糧保障委員会専門家ハイレベル・パネル> 農文協 20160618 かつて農業の規模拡大がすべてかのように論じられた。世界では緑の革命による増産がすすみ、国内では「海外の大規模経営に負けるな」と大規模化がめ... -
怪優伝 三國連太郎<佐野眞一>
■怪優伝 三國連太郎・死ぬまで演じつづけること<佐野眞一>講談社 三國が出演した映画を筆者がいっしょに視ながら、長時間インタビューをしてつくられたぜいたくな本だ。 被差別部落出身で祖父は棺桶をつくる職人だった。戦時中は兵役を拒否するた... -
熊楠の星の時間<中沢新一>
■熊楠の星の時間<中沢新一>講談社 20160602 思考が真の天才の火花を散らし、人生が星の輝きに包れる「星の時間」は、熊楠ほどの天才でも、那智の山ですごした数カ月だけだった。この時期に、現代科学や哲学をも凌駕する思想が手紙の形で表現されたと... -
国際経済学入門<高橋信裕>
■国際経済学入門<高橋信裕>ナカニシヤ出版 20160527 分厚い本で敬遠していたが、読んでみると思った以上にわかりやすい。 経済学の理論って、専門家が正反対のことを言うことも珍しくないから、科学というよりイデオロギーに近い印象がある。さまざ... -
いのちの場所<内山節>
■いのちの場所<内山節>岩波書店 20160403 いのち、は、個人のものなのか。命が個人のなかにとどまり、自分の命だけが至上のものとしたら、その喪失は世界のすべてを失うことを意味する。だから、死がとてもなくおそろしいものとなる。 だが、そうし... -
街場の文体論<内田樹>
■街場の文体論<内田樹>文春文庫 20160404 神戸女学院での最後の年のクリエイティブ・ライティングの講義のまとめ。 よい文章とは? あたりまえでないこと。斬新なこと。でも斬新だといわれたシュールレアリズムも最初の宣言はすばらしいが、あとは...