■映画「帰ってきたヒトラー」20160903
1945年に自殺したはずのヒトラーが現代にタイムスリップする。自分を総統であると理解できない現代人のなかで、とんちんかんなふるまいをするヒトラーは笑いの対象だ。そのうち、モノマネの喜劇役者として登用される。ヒトラーのかっこうをして、全国をまわり、飛び込みで人々と語り合い、外国人へのうらみつらみを聞く。これは、シナリオなしの撮影だったという。それだけヒトラーへの拒否感がドイツで薄れているのだ。緑の党やネオナチとも突撃で対話し、ヒトラーは人気スターになっていく。
抜群の演説能力と、独特の人垂らしで大衆の心をつかんでいく。ヒトラーをデビューさせたテレビマンの男は、ヒトラーが本物だと気づき、自分のしたことを恐れ、殺そうとさえするが、精神病と診断されて隔離されてしまう。
ヒトラーの言説が一般民衆に受け入れられることが突撃取材で明らかにされてしまったこわさ。ネット社会の独裁者への抵抗力の弱さ。ヒトラーは人間的な魅力があったからこそ独裁者になれたのだという事実を突きつけられる恐ろしさ。イスラム教徒への差別など、ヒトラー的な独裁がよみがえる可能性が十分あることを浮き彫りにしてしまった。コメディの装いをしながら、そらおそろしい映画だった。
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