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一勝百敗の皇帝 項羽と劉邦の真実−板野博行

■一勝百敗の皇帝 項羽と劉邦の真実<板野博行>KKベストセラーズ 20160810
 司馬遷の「史記」で有名な項羽と劉邦の物語をたどる本。単に物語として読んでも、かつて学んだ歴史の復習になっておもしろい。
 秦の始皇帝は暴君のイメージだが、各地でバラバラだった度量衡や貨幣、書体、馬車の車輪の幅、道路の轍の幅も統一した。郡県制によって全国の郡県に群守・県令を中央政府から派遣することになり、官僚支配による中央集権制をつくりあげた。この体制は、漢以降の王朝にも引き継がれた。それほど、革新的で時代を先取りしたものだった。
 だが、急激な改革に反発が高まり、始皇帝の死後、各地に反乱が起きた。
 そこで活躍したのが、楚の項羽と漢の劉邦だった。 
 項羽は、抜群の武勇を誇る若き武将で、先頭に立って戦場を駆け巡って勢力を拡大していった。
 劉邦は、酒と女が大好きで、チンピラの親分のような中年おやじで、敗戦で逃げる時に子どもまで捨ててしまうダメな人間だった。ただ、頼りないけど人間的魅力があり、部下の方から積極的に助けてやりたくなるリーダーだった。
 どちらのリーダーが勝つかは、だれもが知っている。最後に勝つリーダー像は、人々に生かされ、人々共にある人間だった。
 だが劉邦も皇帝に就任すると、猜疑心のかたまりになり、韓信ら有能な部下を粛清していく。妻の呂后は劉邦の死後、劉邦の妾の両手両足を切り落とし、目玉をくりぬき、薬で耳や声をつぶし…中国三大悪女と呼ばれるようになった。
 劉邦の成功物語以上に、最後の数ページの権力者のおざましさと孤独の描写も興味深かった。

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