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梅棹忠夫語る<聞き手=小山修三>
■梅棹忠夫語る<聞き手=小山修三>日経プレミアシリーズ 20101114 自分で見たもの以外は信用しない。ひょうひょうとした語り口。 ▽24 ドイツ系アメリカ人が「日本はヨーロッパと同じです」と言い、びっくりした。インドが東洋なら日本は東洋じ... -
梅棹忠夫に挑む<石毛直道 小山修三編>
■梅棹忠夫に挑む<石毛直道 小山修三編> 中央公論社 20101120 ▽11 文明の生態史観 西欧と日本(第一地域)は、遷移(サクセション)が順序よく進行した地域で、歴史は主として共同体内部からの力による展開。オートジェニック(自成的)なサク... -
親米と反米 戦後日本の政治的無意識<吉見俊哉>
■親米と反米 戦後日本の政治的無意識<吉見俊哉> 岩波新書 20101119 ▽17 ジョン・ダワー「敗北を抱きしめて」は、戦時期までの天皇制と占領期の米軍支配の連続性を浮かび上がらせた。天皇の戦争責任回避が日米合作で、占領軍と日本の支配層の... -
ポスト戦後社会 <吉見俊哉>
■ポスト戦後社会 <吉見俊哉> 岩波新書 20101103 「戦後」と「ポスト戦後」への転換は、社会主義やアメリカ流の物質的豊かさといった「理想」「夢」の時代から、「虚構」の時代への転換に対応している。前者の象徴が東京タワーであり永山則夫の... -
私たちのオモニ <本田靖春>
■私たちのオモニ <本田靖春> 新潮社 1992年以来の再読。 朝鮮半島生まれの日本人である著者は「日系朝鮮人」と自称し、「私のなかの朝鮮人」を書いた。そのときに助言をもとめた金宙泰さん一家を描く。 金さんはまじめ一徹で、儒教の道... -
新聞記者の詩 <本田靖春>
■新聞記者の詩<本田靖春>潮文庫 20100930 大新聞はマンモスだ。大きくなりすぎてあちこちに配慮する結果、無難な記事しかなくなり、読者からどんどん離れる。マンモスが滅亡したように、大新聞は滅亡するしかないのではないか、と著者は考える。... -
評伝今西錦司 <本田靖春>
■評伝今西錦司 <本田靖春> 講談社文庫 20101003 今西の最晩年に京都で同じ空気を吸っていた。講演会の立て看も見たことがあるような気がする。懐かしい空気のその源流を解き明かされたようだ。本田氏が病気だったこともあり、「不当逮捕」や「... -
本田靖春 戦後を追い続けたジャーナリスト
■本田靖春 戦後を追い続けたジャーナリスト 河出書房 20100924 佐野眞一や魚住昭、五木寛之、黒田清らのジャーナリストや作家らが本田氏を振り返る。また、生前の対談や遺稿などをまとめている。 ノンフィクションライターという分野をつくった先駆... -
地域再生の罠<久繁哲之介>
■地域再生の罠<久繁哲之介>ちくま新書 20100928 専門家が賞賛する地域再生策のほとんどは成功しておらず衰退している。都市計画や建築、都市工学などの「土建工学者」が推奨する、本当は成功していない「成功事例」を視察して模倣するからほぼ確... -
だいじょうぶ ありがとう 家族によるグループホーム写真展 <社会福祉法人ともの家>
■だいじょうぶ ありがとう 家族によるグループホーム写真展 <社会福祉法人ともの家> 20100912 20代の女性がじっと写真を見て涙ぐんでいる。 勤務上の悩みを語り合いたいという施設の職員。 家族の会があることのすごさ。 会場に来た人... -
エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグアを知るための45章 <田中高編著>
■エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグアを知るための45章 <田中高編著> 明石書店 20100912 3カ国の歴史や現状を知るのにぴったり。政治・経済から文化まで簡潔にまとめられている。 ================== ▽19 エルサルバドルは自然林がほ... -
人は愛するに足り、真心は信ずるに足る アフガンとの約束 <中村哲、澤地久枝>
■人は愛するに足り、真心は信ずるに足る アフガンとの約束 <中村哲、澤地久枝> 岩波書店 20100909 医師としてアフガン国境に出かけ、医療だけでは人を救うことにならないと気づいて井戸を掘り、用水路を建設する。水路ができると、砂漠が緑の... -
街場のメディア論 <内田樹>
■街場のメディア論 <内田樹> 光文社新書 20100907 メディアはなぜ危機なのか。ネットや電子端末といった「外」の要因ではなく、メディア内部にこそが原因があるという。 メディアは「世論」を語るものという信憑と、メディアはビジネスだとい... -
大いなる人生 <高田宏>
■大いなる人生 <高田宏> 芸術新聞社 20100903 15人の伝記・自伝を通して「大いなる人生」を論じる。 伊能忠敬は49歳まで実業家としてすごし、いわば引退後に歴史に残る業績を残した。それを知るだけでもオヤジは勇気づけられる。ただ、そ... -
消費税のカラクリ <斎藤貴男>
■消費税のカラクリ <斎藤貴男> 講談社現代新書 20100830 消費税は逆進性があるけど、消費に対する一律課税だから手間がかからない安定財源である。益税などの業者が得するしくみは直さなければならないが、こうした財政状況では引き上げは仕方... -
嬉しうて、そして…<城山三郎>未
■嬉しうて、そして……<城山三郎>文春文庫 201008 城山三郎の最晩年の随筆や「私の履歴書」などをおさめる。 =================================== ▽23 学生の言い分に耳を傾ける教師が居なかったわけではないが、ほとんどの教師たちは教え子に... -
閉ざされた国ビルマ〈宇田有三〉
■閉ざされた国ビルマ〈宇田有三〉 高文研 201007 内戦がつづくビルマに17年間通いつづける。 熱帯の森のなかで軍政に抵抗するカレン民族に寄り添うが、年々弱体化する。本拠地も陥落する。ある意味封建的な組織を改革しようとせず、カレン民族の大... -
流学日記<岩本悠>
■流学日記<岩本悠> 幻冬舎文庫 201008 このまま流されて安穏と生きるだけでいいのか。20歳の筆者は焦る。飛び出すしかない。それが旅だ。ボランティアをしながら世界20カ国を巡る。ただの貧乏旅行では地元の生活と関係なくふわふわと浮遊し... -
君たちはどう生きるか <吉野源三郎>
■君たちはどう生きるか <吉野源三郎> 岩波文庫 201008 小学校時代と大学時代につづいて読むのは3度目。大学時代に読んだときは、一度目ほど感動しなかった。いまもう一度読んでみると、大学時代にマークした部分につい赤線を引いてしまう。も... -
真昼の暗黒<アーサー・ケストラー>
■真昼の暗黒<アーサー・ケストラー> 岩波文庫 20100813 スターリンによって処刑されたプハーリンの裁判をモデルに書かれたとされ、オーウェルが「1984年」を執筆する際に参考にした小説だ。 人々を幸せにするはずの社会主義がなぜすさまじ... -
第二芸術<桑原武夫>
■第二芸術<桑原武夫>講談社学術文庫 20100801 「第二芸術論」は戦後直後に発表された。 有名な俳人の俳句と素人の俳句をごちゃまぜに15句ならべて「さて、どれがプロの俳人のものでしょうか」と尋ねたら、よっぽどのインテリでも正解できない。「... -
出雲からのメッセージ 高齢社会への挑戦<山根 塩飽>
■出雲からのメッセージ 高齢社会への挑戦<山根 塩飽> 201007 □ことぶき園 と エスポワール ▽11 ▽25 エスポワール出雲クリニック 石橋典子 高橋幸男 ▽30 「小山のおうち」 お年寄りの心に向き合うほど、痴呆というベールで覆われていたお... -
一歩の距離 小説予科練<城山三郎>
■一歩の距離 小説予科練<城山三郎> 201007 4人の少年。3人。軍神になると誓った秀才が一歩を踏み出す。人間魚雷の基地へ去っていく。もう1人「かーっとなって」踏み出す。塩月は「飛行機にも乗らずに死ねるものか。あくまで空で死ぬんだ」と決... -
ちいさな理想<鶴見俊輔>
■ちいさな理想<鶴見俊輔>SURE 20100708 ▽17 京都のピースウォーク ベトナム戦争反対のデモ行進とはちがう性格。かつての戦争反対デモは、軍隊の行進の形から手が切れていない。 敗戦当夜、食事をする気力もなくなった男は多くいた。しか... -
菜園家族宣言 〈小貫雅男 伊藤恵子〉
■菜園家族宣言 〈小貫雅男 伊藤恵子〉 家族はいわば細胞である。外から血液で栄養が運ばれ、細胞質内では生産活動も繰り広げられる。 ところが今、家庭のなかから生産の要素が消え、消費だけになってしまった。細胞質がひからびて細胞壁と核しかなく... -
日本の行く道 <橋本治>
■日本の行く道 <橋本治> 集英社新書 20100630 ▽今の日本はおかしい、と、老人だけでなく、一線の人が考えるようになった。「疎外感」それは格差の表れ。 ▽43 昔のいじめっ子と今のいじめ。昔のいじめっ子は、孤立した存在で、家庭環境などの... -
指揮官たちの特攻 <城山三郎>
■指揮官たちの特攻 <城山三郎> 新潮文庫 20100703 昭和19年、フィリピンで初めての特攻を率いた関行男。昭和20年8月15日夜、最後の特攻を率いた中津留達雄。2人は海軍兵学校と飛行学生としての同期であり、結婚したばかりの23歳だった... -
明治・大正・昭和政界秘史 古風庵回顧録 <若槻礼次郎>
■明治・大正・昭和政界秘史 古風庵回顧録 <若槻礼次郎> 20100627 柔軟で優秀だった明治のリーダーたち。外国に学び、なんとか新しい日本をつくろうとした。民法や税制度整備、財政基盤を確立するための地租改正……、若いリーダーたちが捨て身で... -
新編日本の面影 <ラフカディオ・ハーン 池田雅之訳>
■新編日本の面影 <ラフカディオ・ハーン 池田雅之訳> 角川ソフィア文庫 20100606 穏やかな笑顔でいつもほほえみを浮かべている日本人。息子が死んだことを報告するときも、怒鳴られたときも笑顔を浮かべる日本人は、多くのイギリス人にとって... -
警察回り <本田靖春>
■警察回り <本田靖春> 新潮文庫 20100611 「バアさんが死んだ」という書き出しではじまる。バァさんというのは、警察回りの若い記者たちがたむろった、上野にあったトリスバーのママである。当時は30歳代だったが「ばあさん」と記者たちは呼...