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年縞博物館解説書260307

 年縞博物館とその解説書についてはこちら(https://note.com/fujiiman/n/ndb9617ed66ee)にまとめました。
 以下は解説書の抜粋です。

・湖底などに1年、1年が縞となって堆積した泥からなる層。水月湖だと0.6〜0.7ミリ。7万年分も。
 流入する川がないので、洪水による土砂や水で湖底が攪乱されない。またよどんだ水で満たされていて、水深5〜10メートルより下は硫化水素濃度が高く、腐った卵のにおいがする。そのため湖底は魚など水棲生物がいないので、年縞がかき乱されることがなかった。また、年月を経れば湖は積もる泥で埋め尽くされるが、三方断層による地盤沈下がくり返され、水月湖も少しずつ沈んできたため100メートルもの泥層が残された。
・縞にはさまっている植物の葉の化石の放射性炭素(炭素14)の値を調べることで、正確な年代もわかる。それを利用すれば、年縞は年代決定の「ものさし」に。
・通常のボーリングでは1回に1〜2メートルしか掘り進むことはできない。次はすぐ下の層を狙うが、つなぎ目の部分にどうしても「取りこぼし」ができてしまう。取れなかった部分は、すぐ隣でボーリングをくり返して、後からすべてとりなおす必要があった。7万年分、45メートルの連続した年縞を得るためにちょうど100本のコアが必要だった。
・2006年、宿に泊まる余裕がなくて、小さな空き家を家賃1万5000円でかりた。……1カ月半後の8月11日、7万年分の完全に連続した年縞が手にできた。
・炭素14の分析には1サンプルあたり約4万円。800サンプルおこなう必要があったが、英国とドイツから3億円の予算が得られた。
・2013年、水月湖の年縞データが大きく採用された年代決定の世界標準「IntCal13」の運用が開始。
・年縞博物館は、世界唯一の大規模な年縞の博物館であると同時に……
・安田喜德 「年縞」という用語は、年々積層した堆積物を意味する「annualty laminated sediments」の、わかりやすい日本語として「年縞」を創案。近年、欧州では「varve」が広くつかわれるようになった。
・安田 600メートル南東で、はす川に支流の高瀬川が合流する。その合流点の川底で発見された鳥浜貝塚の調査の一環としてとりくんだ。貝塚から出土する花粉の研究をつづけていた。遺跡から出土する花粉から過去の環境を復元する環境考古学。
・最初の水月湖の「本格的な」ボーリングは1993年末から1994年。
・年縞のステンドグラス
 年縞の展示にはじめて挑戦したのは、アメリカのスミソニアン自然史博物館だった。ベネズエラのカリアコ海盆が、上質の年縞を産することで知られている。1998年には「年代の世界標準ものさし」であるIntCalの中心部分に採用される。だが年縞の展示はむずかしい。湿り気を残した「泥」。問題を克服できず、レプリカを展示した。
・ドイツのミヒャエル・ケーラー氏 年縞が光を透過する200マイクロメートル程度の薄さにまで研ぎ上げて、もう1枚のガラスでサンドイッチにする「年縞のステンドグラス」
 年縞博物館の100枚の「年縞のステンドグラス」はケーラー氏とその助手によって作成された。
・通常のボーリングだと、1メートルずつ掘削をくり返しながら進んで行く。だがこの方法だと、試料と試料の間にわずかな「取りこぼし」が発生する。年縞をすべて数え上げて「標準ものさし」をつくることを目標にするとき、この欠落が問題に。そのため1998年の水月湖のデータは、世界標準の「ものさし」に採用されずに終わった。かわりに採用されたのが、カリアコ海盆のデータだった。

▽7万年ギャラリー解説
・1662年の地震で三方五湖周辺の多くの集落が水没。水月湖と久々子湖の間を開削。海水が水月湖に直接やってくるようになったため、淡水湖から汽水湖にかわった。
・鬼界カルデラの噴火で、九州で縄文遺跡が激減した。250〜400年は人が定住できなかったと考えられている。噴火前はドングリなどを加工する石皿や磨石が多数出土するのにたいし、噴火後400年間は激減する。森林が再生せず、ドングリなどがほとんどとれなかったためと考えられている。かわりに石の鏃がみつかることから、動物を追って生活していたことが推察される。
 姶良カルデラは東西23、南北17キロにおよび、3万0078±48年前におこった日本最大級の噴火で形成された。層の厚さはおよそ30㎝と推定。
・過去100万年の地球にとっては、「普通」の状態とは氷期のことであり、間氷期とは、きわめて例外的な時代にすぎない。
・10万年にいちど、氷期が終わる原因……地球の公転軌道は10万年おきに円に近づいたり楕円になったりする。楕円になると、太陽に近い位置を通るようになる。気温が上昇し、それが夏にあたると、10万年に1回の特別に暑い夏がやってくる。この暑い夏が、10万年かけてたまった氷を一気にとかし、氷期を終わらせる。
・氷期の終わりごろは気候が数十年の間に数度も上下するような、きわめて不安定な状態だった。ところが1万1600年前に氷期が終わると、気候は「暴れる」ことをやめて安定した時代がやってきた。人間が農耕を営み、文明を築いていくのは、ごく初期の断片的な試みを別にすると、すべて氷期の後の暖かい時代に限定される。
・極寒の時代
 2万年前の水月湖は、いまの知床半島のように冷涼だった。
・現在の水月湖では、湖面から5〜10メートルまで酸素が到達する。……
 三方断層の活動で水月湖はそれ以前より数メートル深くなった。そのため、湖底に酸素が到達できなくなった。それ以外、季節ごとにちがう物質がたまってでっきる地層は、生物に破壊されることなく保存されるようになった。年縞の形成がはじまった。
 水月湖には厚さ45メートルもの年縞が堆積している。……三方断層の活動により、水月湖の底は平均1年に1ミリの速度で沈降しつづけている。そのおかげで、水月湖は年縞がたまっても浅くならず、むしろ深くなりつづける奇跡の湖になった。

・海水面の急激な上昇は1万1000年前にはじまり、7500〜7000年前には海面が今よりも2〜2.5メートルも高くなった。縄文海進。
・過去360万年で、少なくとも11回の地磁気逆転が起こった。地球の磁場が半天する時、磁場の強さも現在の10分の1程度になる。地表には放射線がたくさんふりそそぎ、生命にとって非常に危険な場所となる。この放射線の増加が、地球上に雲を増やして寒冷化をもたらしたり、大量絶滅を引きおこした可能性も指摘されている。
・地磁気逆転に似た現象に「地磁気エクスカーション」がある。地球中心の磁石の力がおよそ現在の半分以下に弱まったときに、地表の磁場が極の向きから大きくそれる現象。地磁気の逆転が数十万年に1回なのにたいし、エクスカーションは数万年に1回おきる。このとき、磁場の強さはもっとも弱い時で現在の10分の1まで弱まる。
 今から4万1000年前におこったエクスカーションは、数百年から1000年継続し、磁場強度が現在の5%まで弱まった地域もある。

▽縞々
・春から秋にかけては主にプランクトンが、秋から春にかけては主に鉄分や黄砂が滞積。
・水月湖の水深は34メートル、三方湖は2メートル。……三方湖ははす川がながれこんでいるが、水月湖は三方湖につながる細い水路しかなく、大量の土砂は三方湖にたまり、水月湖までははいってこない。

▽度量衡
・世界標準の「共通の時間尺度」であるIntCal。水月湖の年縞はまさに湖底に眠る「メートル原器」
 精度でいうと1万年前で誤差102年、4万年前でも誤差145年。
・文明=統一国家が誕生すると、度量衡の統一。……日本で最初に度量衡を統一したのは豊臣秀吉。太閤検地のときに定められた京枡という一升枡。さらに1669年には、江戸幕府によって「新京枡」が定められた。1升=1.8リットルという量は歴代為政者の試行錯誤の果てに落ち着いたのである。

▽古気候学
 現代は例外的に暖かい時代であり、過去50万年の地球にとって、標準的な状態とはむしろ氷期の方だった。
・地球の軌道が長細くなると、太陽に近い所を通るようになる。そのタイミングで夏がくると、それまでの10万年でなかったほどの暑い夏になる。この暑い夏は10万年かけてたまった氷を一気に溶かすほどの力をもっている。これが、氷期と氷期の間の暖かい時代が、10万年おきにやってくることの理由である。
・グリーンランドの内陸は、雪が過去10万年間、一度もとけず、今では厚さ3000メートルもの氷床になっている。
……グリーンランドのデータによれば、氷期だけに見られる特徴として、気温がきわめて不規則かつ急激に変動した。
 とくに、一時的に温暖化するときの変化は激しくなる傾向が見られた。温度の振幅は7度にも達し、それに要する時間は時に10年に満たないほど短かった。
……氷期が終わって温暖になった後の気候は、まるで別人のように大人しくなり、現在までつづいている。
・歴史上すべての文明は、氷期が終わった後の安定した時代のなかで繁栄した。
 現代文明は、思っているよりも脆弱な基盤のなりたっているということを、過去の地球は教えてくれる。
・水月湖の最近1万年ほどの年縞は、現在の湖周辺にみられるような、シイやカシ、スギなどの花粉をふくんでいる。2万〜2万5000年前の年縞からは、北海道に生えているような、シラカバやモミなどの花粉が見つかる。……当時の水月湖の平均気温は現在より10度以上も低かった。
・ひとつのサイクルが完結するのに必要な時間はおよそ2万3000年であり、これが少なくとも4回、寒くなりすぎて杉やブナが生育できなくなるまでつづいた。この「短い」サイクルを支配していたのは、太陽にたいする地軸の向きだった。地軸は2万3000年周期で方向をかえ、それによって夏の暑さと降水量が変化する。

・3万年前の大事件でさえ、誤差たったの48年で特定。

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