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こころの旅<神谷美恵子コレクション>
■こころの旅<神谷美恵子コレクション>みすず書房 20190430 母親の体で受胎し、生まれて育ち、結婚し、やがて死ぬという一生を通して、人間の心はどうやって成長し、成熟していくのかを明らかにしている。 人間の赤ちゃんは生まれたばかりでも笑顔を... -
映画「春を背負わば」「岳」
アマゾンプライムで「春を背わば」を見た。北アルプスにある「スミレ小屋」を営んでいた父が、登山者を救助するために命を落とす。息子は東京で株のディーラーとして何十億というカネを動かしていたが、父の死をきっかけに山小屋を継ぐことに。 山小屋... -
映画「剱岳点の記」
■20190704 明治の時代、未踏峰とされていた剱岳に挑戦した陸軍陸地測量部の姿を描いた新田次郎の小説を映画にしたもの。 撮影のため実際に山に登り、吹雪を経験してきただけあって、映像がどれも美しい。案内人の宇治長次郎を演じた香川照之の演技が出... -
よみたい万葉集 <村田右富実監修、助手・阪上望、絵文・まつしたゆうり 文・松岡文、森花絵>
西日本出版社 20190622 「万葉集の入門書としては最高」と専門家に勧められた。 難しい解説よりもまず音読して雰囲気を味わい、短歌の作者の「私」に寄り添う。水彩の挿絵も万葉人の心象風景の理解を助けてくれる。短歌はいつも一人称の「私」が詠む... -
プルーストとイカ<メアリアン・ウルフ>
■20180703 文字を覚えることで脳を発展させてきた。 象を見て、それに似せた絵を描く、ということを覚えた時、ひとつの回路がつながり、その絵が抽象化することで新たな回路がつながる。文字が「音」を示すようにするには、さらに複雑な回路がつなが... -
富山県の歴史
■山川出版社 20190527 読みにくくおもしろくない。でもまあ、辞書的には使える。以下抜粋。 ▽2 「環日本海諸国図」は1994年に富山県土木部が作成。 ▽4 城下町富山は「外山」と記載されることが多かった。 …越中の国は、古代のはじめは越の国に属した... -
ニューヨーク公立図書館
物語ではなくドキュメントで、しかも3時間40分と長いから、慢性寝不足の身にはずっと目を開けているのは難しかった。でも内容は知的刺激に満ちている。 本を静かに読むという「図書館」ではない。 ネットに接続できないことは人権を侵害されているとし... -
悲しみが言葉をつむぐとき<若松英輔・和合亮一>
■岩波書店20190428 教師で詩人の和合亮一は被災地の福島から詩をつづりつづける。悲しみの底から言葉をしぼりだすという共通点をもつ2人が東京新聞で連載した往復書簡だ。若松の本は何冊か読んできたが、彼の思想が詩人と交流することで、よりわかりやすく... -
幻影の明治<渡辺京二>
■平凡社 20190422 筆者は、封建的で遅れていた江戸時代を、維新政府は近代的につくりかえた、という歴史観を「逝きし世の面影」で覆し、平和で穏やかで外国人を魅了した時代像を提示した。そんな渡辺氏は明治時代をどう見るのか知りたくて読んだ。 自由民... -
悲しみに寄り添う 死別と悲哀の心理学<ケルスティン・ラマ->
■201904再読 昔の人は「死」から「生」を捉えていたから、死は、苦しみからの救いという肯定的な面があった。だが医学の進歩で死は単に恐ろしいものとなった。死や悲哀は病院化し、死別のための共同作業は消え、遺された人たちを支えるコミュニティが失わ... -
人間をみつめて<神谷美恵子>
■河出書房新社20190414 動物と共通する古い脳は「本能」に左右され、新しい脳は、古い脳による衝動を抑制する力があり、自発性や抽象能力を司る。新しい脳があるから、悩みが生まれ、死が恐ろしくなる。一方で、シンボル的な思考ができるから、病床にいて... -
神谷美恵子「生きがいについて」<若松英輔>
■NHKテキスト 20190402 「生きがいについて」は読んだけど、それを若松英輔が解説したときに何が見えてくるのか興味を覚えてkindleで買った。 神谷は生きがいとは、自分が、大地とか自然とか神と言った何か大きなものに包まれているという実感から始まる... -
生きがいについて<神谷美恵子>
■みすず書房 20190317 「生きがい」なんて他人に教えてもらうものではないと思ってきた。 でも生きる意味を突然失うと、そうも言えなくなった。このまま死んでもよいのだが、もしかしたらこの経験を生かす道があるのかもしれない。若松英輔の著書を通して... -
悲しみの秘儀<若松英輔>
■ナナロク社 20190304 詩集か画集のような、小さくて美しい本。若松英輔の悲しみを巡る思いを色や形にしたらこんな本になるのだろう。 人を愛することは、悲しみを育むことになる。愛せば愛するほど、喪った時に訪れる悲しみも深くなるからだ。 それでも... -
くちびるに歌を(映画)
■ 20190317 産休の音楽教師の代理として、故郷の五島列島に帰って来たユリが主人公。プロのピアニストだったが、コンサートの当日に恋人を事故で失ってピアノをさわれなくなっており、頼まれた合唱部の指導もおざなりにしていた。 部員のナズナは、父が浮... -
魂にふれる 大震災と、生きている死者<若松英輔>
■トランスビュー 20190217 筆者は2010年2月に妻を亡くした。その経験をもとに、「死者とともに生きる」とはどんなことなのかを綴っている。 寂しさは、失ったものを取り戻そうとする時に湧き上がるが、悲しみは、新しい何かを生みだそうと世界の彼方... -
死者との対話<若松英輔>
■トランスビュー 201902 愛媛の友人に著者の名を聞き、死者は単なる思い出ではなく実在する、という主張にひかれた。 「記憶にある限り死者は生きている」とはよく聞く。だがそれでは、生きている私のなぐさめにはなっても、死者の幸せにはならない。死... -
大正=歴史の踊り場とは何か<鷲田清一編著>
■大正=歴史の踊り場とは何か<鷲田清一編著>講談社選書メチエ チンが買っていた本。体がつらくても好奇心は衰えていなかった。 大正は「歴史の踊り場」だった。歴史の転換点だった。そこで何が生まれ、なにが消えたのかを検証する。 農村か... -
深い河<遠藤周作>
■講談社文庫 20190225(新幹線で) 磯辺という男は妻をがんで亡くそうとしている。子どもがいないから妻が死んだら一人になる。 妻は、「命は決して消えない」と樹木が語ったと言う。死を間近にすると不思議な感性が得られる。それは永遠の命とつながる... -
「3月のライオン」実写版と漫画 20190121
「3月のライオン」実写版を4時間かけてみた。 小学3年生のときに父母と妹を亡くした主人公の桐山零は、父の友だちの棋士の家で育てられる。家族も何もない。空虚のなかで将棋にしがみつき、そのなかで母を亡くした3姉妹と出会う。 家族が消えた穴は「... -
沖縄文化論 忘れられた日本<岡本太郎>
■沖縄文化論 忘れられた日本<岡本太郎>中公文庫 20180107 映画「岡本太郎の沖縄」を見て、そのもとになったこの本を読んでみることにした。 岡本は、日本の風土と運命が純粋に残る辺境から生活力や生命力を掘り起こそうと考え、日本各地の辺境を訪... -
ボヘミアンラプソディー
■2010106 一世を風靡したロックバンド「クイーン」の歩みをたどる映画。 クイーンは激しすぎるイメージがあって、同時代では聴いてなかったけど、映画に出てくる音楽はどれもすばらしい。しっとりした情感も感じるし、歌詞も研ぎ澄まされている。 ... -
共犯者たち
■20190105 2008年から10年間、韓国を席巻した報道弾圧を描くドキュメンタリー。 盧武鉉大統領は「KBS(公共放送)と検察庁には電話をかけない」(圧力をかけない)と約束し、報道の自由、健全なジャーナリズムが花開いた。 次の李明博、さらに次の朴... -
現代語訳 般若心経<玄侑宗久>
■現代語訳 般若心経<玄侑宗久>筑摩新書 20181223 今まで読んだ般若心経の解説本でもっともわかりやすかった。 人は成長するにしたがって世界を言語で認識し、概念という枠にしたがって世界を理解するようになる。「私」という自我を確立して「概念」を... -
没イチ パートナーを亡くしてからの生き方<小谷みどり>
■没イチ パートナーを亡くしてからの生き方<小谷みどり> 新潮社20181216 何か参考になることはないかと思って手に取った。筆者は死にまつわるさまざまなことを第一生命の研究所で研究してきたが、2011年に当時42歳だった夫を突然死で亡くした。 ... -
歌に私は泣くだらう 妻・河野裕子 闘病の十年<永田和宏>
■歌に私は泣くだらう 妻・河野裕子 闘病の十年<永田和宏>新潮社201812 有名な歌人夫婦。妻の河野裕子は乳がんになり、手術は成功したが、精神を病み、延々と罵りの言葉を浴びせられ、ついには筆者も爆発していすをテレビに投げつけ、息子の肩にすがっ... -
アミターバ 無量光明<玄侑宗久>
■アミターバ 無量光明<玄侑宗久>新潮文庫 20181201 がんで余命幾ばくもない女性が主人公。娘とその夫で僧侶である慈雲さんが付き添っている。 病気が進み、ベッドから起き上がれなくなると、夢が多彩になり、さまざまな時間と空間が入り乱れてくる... -
知の体力<永田和宏>
■知の体力<永田和宏>新潮新書 20181126 京都大学で長年生物学の研究をすると同時に歌人として有名。でもそれで読もうと思ったのではなく、歌人だった妻を亡くした経験について京都新聞で次のように語っていたからだ。 「よく時間が癒やしてくれると... -
中陰の花 <玄侑宗久>
■中陰の花 <玄侑宗久>文春文庫 20181118 「中陰」とは、「有」と「無」の中間、陰と陽のどちらでもあるようなあり方という。49日に中陰が終わると、あちら側に行って成仏するのだ。 主人公の禅僧が、幼いころからお世話になった拝み屋のおばあさ... -
看取り先生の遺言 2000人以上を看取った、がん専門医の「往生伝」<奥野修司>
■看取り先生の遺言 2000人以上を看取った、がん専門医の「往生伝」<奥野修司>文春文庫 2018/11/03 仙台を拠点に早くから在宅緩和ケアに取り組み、自らがんとなり、震災ではスタッフの看護師を失う。医者は回復は助けてくれるが、「死への道しるべ」...