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共犯者たち

■20190105
 2008年から10年間、韓国を席巻した報道弾圧を描くドキュメンタリー。
 盧武鉉大統領は「KBS(公共放送)と検察庁には電話をかけない」(圧力をかけない)と約束し、報道の自由、健全なジャーナリズムが花開いた。
 次の李明博、さらに次の朴槿恵大統領は徹底的に報道に介入した。KBSに圧力をかけて社長を解任し、調査報道チームは解体され、時事問題を取りあげる番組は廃止された。辞めた社長は検察によって背任容疑で逮捕された。
 KBSが屈服した後も批判的な報道をつづけていたMBCがBSE問題で政府を徹底批判すると、社長を辞めさせ、次の社長は時事問題の番組を廃止する。PDや記者を、スケート場管理などの職場に異動させる。
 徹底的な弾圧によって、2008年からの10年間で300人のジャーナリスト処分されたという。
 セウォル号事故では、現場記者が多くの乗客が閉じ込められていると報告しているのに、「全員救出」という政府発表だけを流しつづけた。ジャーナリズムの崩壊を象徴する事故でもあった。
 一方、激しい弾圧にさらされても、韓国のジャーナリストは頑強に抵抗した。労組は内部情報を暴露し、ストを決行する。既存の労組が反発力を失うと新労組を結成する。たった一人で社屋内で「社長はやめろ」と叫ぶ社員もいる。一般市民も、御用放送に堕したKBSやMBCの放送車両を実力で追い出そうとする。抵抗もなく政府の御用報道をたれ流すNHKなどと比べると、はるかに健全だ。
 職場を追われ、田舎で暮らす元記者がガンになってしまった。「子どもに伝えたいことを書いているんだ」と言う。たたかいには敗北したけれど、「あの最悪の時に少なくとも沈黙しなかった。そのことは記録される」と涙をこらえて語る姿は人間として美しかった。

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