「3月のライオン」実写版を4時間かけてみた。
小学3年生のときに父母と妹を亡くした主人公の桐山零は、父の友だちの棋士の家で育てられる。家族も何もない。空虚のなかで将棋にしがみつき、そのなかで母を亡くした3姉妹と出会う。
家族が消えた穴は「傷」じゃない。穴だ。傷ならば癒えるけど、穴は塞がらない。
たとえば贈り物を交換したクリスマス、笑わせようと工夫をこらしたバレンタインのチョコ……そのすべてが消える。何も動かなくなる。
そういう虚無のような世界から、3姉妹とのであいによって、主人公はひとつひとつ何かを取り戻していく。
高校生のヒナちゃんは、いじめられていた子をかまったことで、自らがいじめの対象になる。「かばってたらやられるよって言われて怖かった。でも後悔なんかしちゃだめだ。私のしたことはまちがってなんか以内!」と泣きながら叫ぶ。
それを聞いて、幼いころいじめられていた桐山は救われた、と思う。
ヒナちゃんの祖父は「よくやった、ヒナ!」と褒める。こういう大人がまわりにいれば、どれだけ子どもは生き生きできるだろう。
主人公・桐山の義姉の香子は、A級棋士の後藤と不倫する。桐山は後藤を責めるが、後藤の妻は死の床にあった。
この物語には完全な悪者はいない。みんなが傷つきながら、関係のなかで新しい何かを生み出そうとしている。
「オマエが人を頼らなければ、困った時にオマエを頼ることができないんだぞ」とか、いちいち琴線に響く言葉がちりばめられている。作者はいったいどんな人なんだろう〓?
原作の方がわかりやすいが、この人間に対するあたたかさと信頼は何かに似ていると思った。
ハイジだ。「3月のライオン」や「ハイジ」は、とことんつらい時でも読める物語なのだ。
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