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とうわ よもやまばなし<紺野雅子>
■20211018 1日中かかった結婚式。貧しい家には負担だった。風呂は3,4日に一度しか水をかえないから垢で真っ黒だった。膳も洗うのは3,4日に一度。 うんちは肥料になるから自分の家でするようにする。馬糞を拾って歩いた。 嫁は暗いうちから働き、昼間... -
「男はつらいよ50 おかえり寅さん」
昨年封切り。amazonプライムで見た。 みつおが大人になって、6年前に妻を亡くして中学生の娘と2人で住んでいる。その設定だけでもたまらんな。 今は小説家。高校時代の恋人のいずみ(後藤久美子)がヨーロッパから一時帰国して出会うという物語。女性... -
MINAMATA 20210929
ユージン・スミスと水俣を描いた映画。楽しみにしていた。「ライフ」で活躍する巨匠だが、沖縄戦の取材の際のけがで、食事もろくにできず、アルコールに頼っていた。 そんなユージンが水俣と出会い、患者らとふれあうなかで生きがいを回復させていく。... -
ミス・マルクス(映画)
■20210923 マルクスの娘エリノアが主人公。 兄弟姉妹のなかでもっともマルクスに似て、戦闘的な革命家だった。 マルクスは天才だが、生活は親友のエンゲルスに頼り切りで、学問のことしか考えない堅物だった。一方で家政婦との間にも子どもをつくり、エ... -
くじらびと<石川梵>(映画)
■202109 インドネシアの漁村の、マッコウクジラを銛で獲る漁師ラマファたちが主人公。 クジラが年間10頭獲れれば1500人の村人がくらせる。船の舳先からクジラに向かって跳んで銛を突き刺すラマファは危険だが子どもにとってあこがれの職業だ。 そんな... -
ゴールデンカムイ20210912
(アニメと漫画) amazonプライムでアニメの第1部と第2部計25話を一気に見て、第3部はFODの無料お試しで10話を見た。その後の漫画も展開も見たい思ったら、ちょうど漫画を無料公開しているから一気に読んでしまった。 アイヌ関係の博物館や資料館で推奨... -
江差花街風土記 北前船文化の残像<松村隆>
■文芸社20210908 北前船の終着駅だった北海道・江差がどれだけ繁栄していたのか知りたくて入手した。 松前藩の中心である福山(松前)や箱館(函館)と比べても、入船数が圧倒的に多く、回船問屋の数も圧倒していた。 大きな回船問屋は、現在の江差町... -
神と自然の景観論 信仰環境を読む<野本寛一>
■講談社学術文庫20210803 島や岬、洞窟、岩などの自然の地形と信仰のかかわりを論じる。以下に紹介するようにその具体例はいちいち興味深い。でももう少し「意味」の体系を教えてほしかった。 三宅島は「御焼島」であり、伊豆東海岸の白浜は、御焼島... -
恋と日本文学と本居宣長<丸谷才一>20210815
中国の文学は恋愛は描かれず猥談も嫌がる。結婚制度を乱さない妓女への執着を歌うことが許された程度だ。詩歌の主流は友情の歌だった。 なのに日本文学では源氏物語や万葉集のころから恋愛が取りあげられてきた。歌の主流は相聞歌だ。柿本人麻呂も紀貫... -
須賀敦子全集 第1巻<河出文庫>20210903
■「ミラノ霧の風景」「コルシア書店の仲間たち」ほか 須賀は20代終わりから40代の初めの13年をイタリアで過ごした。カトリック左派の人々が運営するコルシア書店と出会ってミラノに住み、書店の中心メンバーだったペッピーノと結婚する。 登場人物はカト... -
眠れないほどおもしろい平家物語<板野博行>
■三笠書房王様文庫 20210819 平家物語の見どころを抜粋して、とくに人物に焦点を当て、原作にはないエピソードもふんだんに加えて登場人物の魅力を浮き彫りにしている。 平家=悪、源氏=善、という一般の印象を覆し、むしろ平家の人々の人間らしさとお... -
映画「パンケーキを毒味する」
■2021年8月8日 菅義偉は、雪深い東北から法政大学に進学して、秘書からのたたき上げで総理の座までのぼりつめた。人事で支配する陰険な男という印象だが、義理堅く、気配りをする一面もあるらしい。表裏がある政治家が多いなかで、管の言葉は信用できる... -
生命系の未来社会論 気候変動とパンデミックの時代 抗市場免疫の「菜園家族」が近代を根底から覆す<小貫雅男、伊藤恵子>
■御茶の水書房20210720 新型コロナウイルスによって、貧困に陥る母子家庭が増える一方、Go To トラベルで高級ホテルに予約が集中する。格差と分断が常態化した。 気候変動も、2030年までに温室効果ガス排出量を45%、50年までに実質排出ゼロにしなけれ... -
無と意識の人類史 私たちはどこへ向かうのか<広井良典>
■東洋経済新報社20210721 資本主義を超える新しい思想を考えたとき、それは新しいアニミズムとなる。「生」とは、時間も空間もない無(永遠)の世界から一瞬だけ与えられた火花のような瞬間であり、それが終わるとまた無(永遠)の世界にもどるという。最... -
智恵子抄の光と影<上杉省和>
大修館書店 20210730 気が狂ってしまった妻、智恵子に最後まで寄り添った高村光太郎。愛を貫いた日々を振り返った「智恵子抄」は涙なしには読めない。 でも戦後、いくつかの疑問が呈された。自由を求める「新しい女」が家庭に縛られることで精神を病ん... -
人新世の「資本論」<齋藤幸平>
■集英社新書20210717 人新世とは、人間たちの活動の痕跡が、地球の表面を覆いつくした年代という意味らしい。 気候変動は待ったなしのところに来ている。エコ産業によって環境と経済成長を両立できると考えるグリーンニューディールなどの気候ケインズ主... -
霧の彼方 須賀敦子<若松英輔>
■集英社202106 1929年生まれの須賀敦子はイタリアに長く暮らし、「カトリック左派」の立場で現実社会とのかかわりのなかで信仰を深めた。 夫のペッピーノとともに参加したコルシア書店は、キリスト教の殻に安住せず「人間のことばを話す場」をつくり、特... -
映画「巡礼の約束」
■20210705 チベット映画4本目。 自らの病気が治らないと知った女ウォマは、病状を夫のロルジェには告げずラサへの巡礼に出る。前夫との間に息子がいて実家にあずけている。 巡礼の途中、医者から病状を聞いたロルジェが追いかけてくる。息子のノルウも... -
チベット映画「オールド・ドッグ」
■20210704 BGMもなく、一見、単調な日々をだらだら撮っているだけのように見える。でも見終わると、細部にまでこだわっていることに気づかされる。 チベット犬と呼ばれるマスチフ犬はチベットの牧畜民に番犬や猟犬として飼われてきた。経済成長とともに2... -
映画「ラモとガベ」
■20210630 ラモとガベが婚姻届を出そうとしたところ、ガベが以前に結婚していて離婚が成立していないことになっていた。婚約者の親せきが勝手に届けを出してしまっていたらしい。 元婚約者をさがして離婚届に署名してもらおうとしたら、彼女は尼僧になっ... -
映画「ラサへの歩き方 祈りの2400キロ」
■20210629 四川省に近いチベット東部の村で、ラサへの巡礼を夢見ていた老人が死んだ。その弟が「巡礼に行かせてあげたかった。俺も死ぬ前にラサを参りたい」と言う。村人10人あまりで1200キロ離れたラサとさらに1200キロ西の聖山カイラスに出かけることに... -
身体の零度 何が近代を成立させたか<三浦雅士>
■講談社選書メチエ20210620 衣服の目的は寒さを防ぐためではないという。動きやすさを求めるなら裸が一番だからだ。そもそもの目的は入れ墨と同様「飾る」ことだった。 18世紀のロココの時代までは衣装の目的は装飾にあった。 軍服も当初は装飾目的だっ... -
廃仏毀釈ー寺院・仏像破壊の真実<畑中章宏>
■ちくま新書20210626 廃仏毀釈は、政府の命令でお堂や仏像を破壊しつくす日本の文化大革命だった。なぜこんな政策がとられたのか。日本独特の「神仏習合」の成立から廃仏毀釈にいたる経緯とその結果を丹念にたどる。 神仏習合は神宮寺の建立という形では... -
南方熊楠と宮沢賢治 日本的スピリチュアリティの系譜<鎌田東二>
■平凡社新書20210616 2人ともイニシャルはM.K。賢治は清澄な仏の世界、熊楠は混沌の曼荼羅というイメージだけど、スピリチュアリティという視点から見るとふたりはよく似ていると筆者は説く。 宮沢賢治の「春と修羅」「心象スケッチ」などは、意味不明の... -
「死の国」熊野と巡礼の道古代史謎解き紀行<関裕二>
■(新潮文庫) 202106 いろいろ物議をかもす民間研究者が熊野の歴史をひもといた本。そのまま信じてよいかわからないけど、おもしろい。 熊野への道を石畳で舗装したのは、死者の国に対する憧れだろう(五来重)、新宮市の徐福伝説を裏づけるように昭和3... -
農と言える日本人 福島発・農業の復興へ<野中昌弘>
■コモンズ 20210616 福島はやませが夏に吹き、冷害を受けやすかったから、江戸時代から、稲の品種改良や農具や農耕馬の改良などの工夫をしてきた。明治後期には、会津では稲の品種だけで約60種あり、早稲、中稲、晩稲と植える時期が異なる稲を分散して... -
一人になる 医師 小笠原登とハンセン病強制隔離政策<高橋一郎監督>
■20210615 ハンセン病は結核などに比べて伝染力はきわめて弱く、隔離の必要などないことは戦前からわかっていた。なのに、国家の政策として強制的に隔離された。皇室の権威がそれに箔をつけた。 戦後の新憲法下でも隔離は強制力を強め、断種の手術も広が... -
日本一小さな農業高校の学校づくり 愛農高校、校舎たてかえ顛末記<品田茂>
■岩波ジュニア新書20210604 愛農会と小谷純一を知りたくて入手した。生徒数60人の私立農業高校、愛農学園農業高等学校(三重県伊賀市)の歩みと、老朽化した校舎を減築という手法で再生する様子を紹介している。 デンマークは、1864年にプロシア、オー... -
記憶力を強くする 最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方<池谷裕二>
■講談社20210603 「歳のせいで覚えが悪い」という人は、昔自分が者を覚えるためにどれほど努力したのかを忘れている。「物忘れがひどい」も、単にはじめから覚えていないということ……と断言する。歳を食ったら記憶力が衰えるというのはうそだと筆者は主... -
身体から革命を起こす<甲野善紀、田中聡>
■新潮文庫20210519 同じ側の手足を同時に出すナンバ歩きをはじめ、江戸時代以前は今とはまったく異なる身体の使い方をしていた。甲野は古武術を通して失われた身体技法を再発見し、ふつうでは考えられない動きや技を編み出している。それは武術やスポーツ...