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MINAMATA 20210929

 ユージン・スミスと水俣を描いた映画。楽しみにしていた。
「ライフ」で活躍する巨匠だが、沖縄戦の取材の際のけがで、食事もろくにできず、アルコールに頼っていた。
 そんなユージンが水俣と出会い、患者らとふれあうなかで生きがいを回復させていく。水俣を描くと同時にユージンの人間回復のストーリーに仕立てている。
 ユージンといえば尊敬すべき巨匠としか思っていなかったから、妻のアイリーンに支えられ、励まされてなんとか歩む姿がかわいくて親しみをもてた。
 水俣にちょっと通ったせいか、最初は海の色がぴったりこなかった。スミス夫妻は月の浦という漁村に家を借りていたはずだが、不知火海というより熱帯に近い海に見えてしまう。たぶんロケ地が南国だったのだろう。
 ユージンの家が放火されたという事実はないし、チッソの社長がカネを渡そうとしたというフィクションだ。ユージンが暴行されたのは水俣工場ではなく千葉の工場だった。事実に「もとづいて」はいるけれど、事実そのものではない。
 川本輝夫さんをモデルにした患者運動のリーダーが訴訟に参加しているのもおかしいが、これは、自主交渉派と訴訟派で対立していた運動を映画のなかで融和させたのだろう。
 ハリウッドという巨大な商業ベースに載せ、水俣病は今にいたる行政やチッソが十分な責任を果たさず、患者が苦しみつづけていることを世に知らしめただけでもすごい。
 水俣を知らない人が見れば、それほど違和感を感じず、素直に感動できるのかもしれない。
 久しぶりに水俣を訪ねたくなった。

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