■20210923
マルクスの娘エリノアが主人公。
兄弟姉妹のなかでもっともマルクスに似て、戦闘的な革命家だった。
マルクスは天才だが、生活は親友のエンゲルスに頼り切りで、学問のことしか考えない堅物だった。一方で家政婦との間にも子どもをつくり、エンゲルスの子ということにしていた。映画でも、くそまじめで融通のきかない父親として回想される。
エリノアは、晩年のマルクスを介護し、亡くなった姉の子を育てた。
社会主義運動で出会った劇作家のエドワード・エイヴリングと恋をして、「自分のために生きる」と、甥っ子を父親のもとに送り、周囲の反対を押し切って同棲をはじめる。
ところが芸術家のエドワードは典型的なダメ男だった。浪費癖があり、借金を重ね、次々に女をつくる。日本の社会主義者や進歩派にも、家庭では亭主関白だったりマッチョだったりする人が少なくない。その典型的な例だった。エリノアもまた、男による女の搾取を論じていたが、自ら搾取されることを受けれていた。
友人たちはエリノアにエドワードと別れるように助言するが、彼女は「子どものような」エドワードを捨てることができない。くさまじめな天才だった父に搾取された過去のトラウマを埋め合わせるように、父とは正反対のいいかげんなエドワードにのめりこみ、もてあそばれる。トラウマにともなう共依存だった。
彼女は自死することによってしか、女性としての自らの解放を勝ち取ることができなかった。
ところどころで挿入される「インターナショナル」がなつかしい。
ただ、けたたましいロックのBGMは、作品にそぐわなかった。
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