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ひめゆり
第七芸術劇場 20070812 すごいドキュメンタリーだ。 ひめゆり部隊の生き残りのおばあさんの証言をひたすらつなぐことで、当時の悲惨な状況を浮かびあがらせてしまう。米軍側のフィルムや、今のガマや壕の映像ももちろんある。が、ほとんどはおばあ... -
キューバ映画2本
■コマンダンテ 0701 グアテマラからもニカラグアからアフリカからも、多くの学生がまなびにきている。キューバの獲得したものの大きさがよくわかる。 カストロとの独占インタビュー。往事の勢いと声のはりはない。老境にはいった革命家は痛々しくもあ... -
丸山真男 日本近代における公と私 <間宮陽介>
ちくま学芸文庫 20070811 言葉づかいはけっこう難しいし、とくに前半の朱子学の部分は難解だったが、丸山が終生もとめつづけたものがなんとなく見えてきた。 単なる(状態としての)自由ではない。単なる(型式的な)民主主義でもない。自由と民主主義... -
オリエンタリズム 上 <エドワード・W・サイード>
平凡社 200706 「オリエンタリズム」の流れをたどる。 欧州にとってのオリエントは、神秘であり、セックスであり、異教徒であり、カオスであり……。かつては世界最先進地だったが、今や遅れた場である、という位置づけ。そこに住む住民側からの視点はな... -
終わりよければすべてよし <森嶋通夫>
朝日新聞 20070714 「単科ディシプリン」という言葉が何回もでてくる。専門家として1つの分野をきわめなければならない、という意味だ。彼にとってそれは数理経済学だった。その立場から、丸山真男や鶴見俊輔らを「ディレッタント」(好事家・素人)と... -
智にはたらけば角が立つ <森嶋通夫>
朝日新聞社 1070707 プリンシプルに従って行動する人とそうでない人がいる。積極的な悪人や有徳の士は前者に属し、その他多くの「普通は善人だが、気が弱いためにいざという時に道徳的に腰抜けになってしまう人」は後者に属する。筆者は後者を「消極的... -
血にコクリコの花咲けば <森嶋通夫>
朝日文庫 20070630 福祉社会学の研究会で「福祉社会を考えるならこれは必読書ですよ」勧められた。 名前はきいたことがあった。イギリスで活躍した経済学者であることは知っていた。 でもこんなにおもしろいとは。 戦時中、学徒動員で海軍にはいり、敗... -
反戦軍事学 <林新吾>
朝日新書 20070623 戦争反対という人ほど、軍事を知らない。もっと軍事を勉強せよ、とは以前から言われていた。それで、自分がかかわる部分に関しては最低限の本を読んできたつもりだった。が、やっぱり基本的なことをわかってないなあ、ということを気... -
東京ファイティングキッズ <内田樹、平川克美>
朝日文庫 200706 --空中浮遊などの考えられないことがおきたとき、「何も見なかった」と経験そのものを否定する人も、尊師を信じてしまう人も、あるフレームワークが失効してから、次のフレームワークを自力で構築するまでの「酸欠期」を息継ぎなしで... -
検証日本の組織ジャーナリズム NHKと朝日新聞 <川上泰資、柴田鉄治>
岩波書店 20070507 組織ジャーナリズムがいかに弱体化してきたかを、NHKと朝日というメディアの経緯と現状をとおしてあきらかにする。 かつて日本の新聞は産経をふくめてすべて野党だった。それがまずは産経がころび、中曽根時代に読売がころび、最... -
新聞記者という仕事 <柴田鉄治>
集英社新書 200705 昔は新聞は野党だった。反戦平和は当たり前だった。読売・産経でさえもそうだった。ベトナム戦争のころもそうだった。新聞が輝いていた時代である。 野党精神の足並みは70年代に入って乱れ、まず産経新聞が自民寄りになる。80年代に... -
はじめての構造主義 <橋爪大三郎>
講談社現代新書 20070509 内田樹の入門書とならぶくらいわかりやすい構造主義の入門書だ。 リンゴという実体がまず存在するのではなく、「リンゴ」という言葉によって、リンゴが世界が切り取られ、認識される。リンゴと梨の区別をつけるか否かは「実体... -
悲しき熱帯Ⅱ <レヴィ=ストロース>
レヴィ=ストロース 中公クラシックス 200705 ブラジルの先住民族のフィールドワークを丹念に記している。 単なる「観察」ではなく、インディオの世界に心から共感していることが、あたたかみのある筆致からよくわかる。 その共感があるからこそ、欧米... -
悲しき熱帯Ⅰ <レヴィ=ストロース>
中公クラシックス 200705 文化人類学のおもしろさ。常識が常識でないことがわかる。人間が人間であるべき「本性」はどこにあるのか、を知る。 戦前のブラジルへの豪華客船の旅かと思えば、ドイツ占領下の劣悪な航海へ、インドの労働者の生活風景かと思... -
人文学と批評の使命 <E・W サイード>
岩波書店 200703 外部の状況・システムによって人間の思考は決められているとする構造主義は、デカルト以来の主体(コギト)に異議をつきつけ、従来の人文学(humanism)を圧倒した。隅においやられた人文学は、社会との接点をさぐることをやめ、すでに... -
パッチギⅡ
暴力的になってやけに元気でるよね。なんだかハイになるわぁ。 冒頭からして「あ、いいなあ」だ。胸がきゅんとくる、というのか。 「安保粉砕」などと落書きされた京浜東北線の電車で、学ラン姿の「国土館大学」の右翼学生が朝鮮人学校の生徒をなぐり... -
サンジャックへの道
200704 巡礼をしなければ遺産を相続させない、という遺言を母から残された男2人と女1人の初老の兄弟が、フランスからスペインにいたる巡礼ツアーにいやいやながら参加する。 兄は会社長で心臓病に持病を抱えている。真ん中の姉はいつも苛立ってい... -
ブラッドダイヤモンド
200704 シエラレオネの内戦が舞台。デカプリオが演じる主人公は、ジンバブエ出身の元傭兵でダイヤの密輸業者をしている。 ダイヤの密輸で武器を購入したゲリラRAFが全土を席巻し、平和な生活をいとなむムラを破壊し、少年を連れ去り、兵士にそだ... -
希望の教育学 <パウロ・フレイレ>
太郎次郎社 20070315 これまた10年ぶりの再読。 「被抑圧者の教育学」は抽象的でストイックな印象の本だった。老境にはいって、「被抑圧者」のできた過程と、その後の広まりをふりかえってつづった「希望の教育学」は、フレイレのやさしさが行間から... -
被抑圧者の教育学 <パウロ・フレイレ>
亜紀書房 20070306 10年ぶりの再読。 「俺になにができるって? ただの百姓なのに」「しかたない」……うちのめされ搾取された読み書きもできない被抑圧者には宿命論的なあきらめが蔓延している。これを「沈黙の文化」と著者は呼ぶ。日本の農山村を歩... -
知識人とは何か <エドワード・W・サイード>
平凡社ライブラリー 1070221 「知識人」に求められる資質としてサイードは、権力と対峙すること、専門外のことでも大事な問題は積極的に発言すること……などをあげる。 イタリアの哲学者ヴィーコは、権威に威圧されないためには、社会的現実の起源にさか... -
旅の話 鶴見俊輔 長田弘
晶文社 20060215 旅は恋ににている。異性との出会いへの期待はもちろんだが、不安だけど歩をすすめざるをえない落ち着かない感覚は、未知の世界への恋ではないのかと感じてきた。 だが、歳をかさねて30歳代もへて、「恋」への旅でいいのかな、そ... -
「伝える言葉」プラス <大江健三郎>
朝日新聞社 20070210 晩年をむかえた大江健三郎が、若い世代への伝言として新聞に連載した文章を集めたエッセー集。 「老人がいつも悲しい顔をしているのは『未来への未練』の表情だったと気づいた」と記す、老年をむかえた大江の悲しみと、死の床で「考... -
「帝国以後」と日本の選択 <エマニュエル・トッドほか>
藤原書店 200702 トッドの「帝国以後」をめぐる、トッドと日本の知識人との議論。 米帝国という覇権時代はすでに終わっており、フランスをはじめとする米国と距離をとる国々の態度は、強大な存在に反発する「反米」ではなく、ポスト・アメリカの「脱米」... -
映画「となり町戦争」
20070211 普通の日常がつづくなか、とくに実感されないまま、「町づくり」の一環で戦争がはじまり、つづき、終わる。 自分の身にふりかかってこないと、戦争が実感されることはない。 そんな硬質のというか薄ら寒い感覚を原作はかもしだしていた。 映... -
なぜかモテる親父の技術 <北村肇>
ベスト新書 20070121 硬派中の硬派のジャーナリストである著者がいったいぜんたい。 「オヤジのもてかた」なんてテーマをどうやって書くのか、平積みになっている本をみて、その意外性に驚いた。つい買ってしまった。 「おやじはおやじらしくあればいい... -
M/世界の、憂鬱な先端 <吉岡忍>
文春文庫 20070110 ベルリンの壁が崩れる。歴史は人間が動かせるのだ、と実感できる場面に立ち会う。そのときふと「では日本は?」と思う。 まさにその年、昭和天皇が吐血し、報道は翼賛体制となり、戦争という歴史を徹底的に忘れるメルクマールとなっ... -
居住福祉資源発見の旅 <早川和男>
東信堂 20061221 寺社や銭湯、商店街、駅舎など、町中にあるあたりまえの「場」を居住福祉資源として再評価し、紹介している。寺社は健康福祉ウォーキングの場であり、人々と語りあうデイサービスの場にもなっている。商店街もしかりだ。ほんのちょっと... -
世界像革命-家族人類学の挑戦 <エマニュエル=トッド>
藤原書店 20061221 フランスをはじめとする「平等主義核家族」、イギリスなどの「絶対核家族」、東欧からアジアへと広く分布する「共同体家族」、ドイツや日本などの「直系家族」。 親子関係と兄弟間の相続のありかたによって分類し、それぞ... -
コーヒーと南北問題 「キリマンジャロ」のフードシステム <辻村英之>
日本経済評論社 20061210 4200円という値段的ボリュームがあり、しかも横書きの論文集といえば、ふつうなら読もうと思わないのだが、最初の数ページの理論部分を乗り越えたらあとはスイスイと読めた。 論文集なのに、対象のタンザニアの村人への共感と...