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映画「となり町戦争」

20070211

 普通の日常がつづくなか、とくに実感されないまま、「町づくり」の一環で戦争がはじまり、つづき、終わる。
自分の身にふりかかってこないと、戦争が実感されることはない。
そんな硬質のというか薄ら寒い感覚を原作はかもしだしていた。
 映画は、町の戦争担当職員を原田知世が好演している。
サイボーグのように業務を遂行する女性が、人間的な感情にふれてすこしずつ鎧がこわれていくさまがよくわかる。
 だが江口洋介はミスキャストだ。大柄で堂々としていて自信にあふれている二枚目は、イメージにあわない。
もっとオドオドして、小心なふつうの青二才であるべきだ。
 町長がやけに支持率を気にする様子や、室長補佐のダメ役人かげんなども、デフォルメしすぎてリアリティがない。
小説の原作者は福岡県の自治体職員であり、その経験を生かした、形式主義のはびこる「役場」の描写がおもしろかったのに、そういうイメージを表現しているのは原田知世だけだった。
 最後、新たな「業務」におもむこうとする原田知世に、「そんな人生でいいのか」と江口洋介が問いかけ、あれまっ、2人の恋は成就してしまう。
 ホッとはするけど、作品としては、安っぽいハリウッド映画に堕してしまった。
 原作がおもしろかっただけに残念な映画だった。
 小説の乾燥はこちら

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