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なぜかモテる親父の技術 <北村肇>

 ベスト新書 20070121

硬派中の硬派のジャーナリストである著者がいったいぜんたい。
「オヤジのもてかた」なんてテーマをどうやって書くのか、平積みになっている本をみて、その意外性に驚いた。つい買ってしまった。
「おやじはおやじらしくあればいい」自分のよさに気づけ、若者にこびるな。
「レオン」などのおやじ対象のファッション雑誌のふりまく「もてるおやじ」像を徹底的にこきおろすのは痛快だ。こんな服を着たらいい、チョイ悪オヤジがいい、こんなファッションがいい……どれも売らんかな、の企画である。その通りのオヤジが目の前にいたら、きっとせせら笑うだろう。
要はオヤジは年を重ねたことに自信をもって、じっくり話をきいて、若い奴には決して示すことのできない包容力を示せばよい、月光仮面のように弱いものの味方であれ、勝ち組といわれる人は必ずしも幸せじゃないぞ。
……というありきたりな結論なのだが、ま、それ以外はありえない結論でもある。
オヤジ論の部分や、結論の部分は既視感があっていまひとつだが、筆者自身の経験を語る部分はおもしろい。ことに、社内の勝ち組、出世組の人たち、世の中の金持たちがいかにビクビクしながら生きているか、といった実話は、長い取材経験があるからこそ書けることだろう。
さて、自分ならどんなことが書けるかなあと考える。
「渋い人生を書けばおもしろいよ」と、あるフリージャーナリストのKさんに言われた。
はて……

-----抜粋など------

▽新年企画 「有名人を取り上げるか、一般人の生き様を追うか」で悩むが、ほぼ例外なく後者の企画は失敗します。……ごくごく普通のモテるオヤジはメディアのネタにならない。
▽サンデー毎日で「不倫のススメ」特集 ……労働組合の委員長時代、社長退陣闘争を指揮した経験などがあり、…役員のあいだでは「首にしろ」みたいな発言もあった。……案の定、目くじらを立てているのは、およそモテないヤツばかり。
▽ずっと教師死志望。実習で自信をなくし記者に。
▽かつて、子ども部屋のある家は少なく、狭い空間で一緒にテレビを見る時間が長ければ、何気なく恨みごとを口にしたりする。そんなとき親はだいたい、喜んで話に応じる。 ……「よし、お母さんが先生に文句を言ってあげる」 単純にうれしかったことを覚えています……親や祖父母は貴重なカウンセラーでした。と同時にシェルターでもありました。若い人は、かつてのような「家族」が消失している。
▽宗教の教祖 人を受け入れる包容力があり、言葉にも説得力があった。……オヤジだからこそ「教祖」にもなれる
▽30歳になったころは「もう20代も終わり。あとは老いる一方」などと、変に老成して人生を悲観していました。……45歳くらいのとき。徹夜ができなくなり、髪が薄くなり、酒が弱くなった……そう自覚しはじめたとき、目の前が開けたのです。「もう中年ではなく、まだ中年。これからだ」 自分がつきあっていくしかない「自分」に気づいたからです。腰が曲がろうが、耳が遠くなろうが、そのような自分を自分として認識する。自分を認め、尊重し、愛する。

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