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言論統制列島 <鈴木邦男 森達也 斉藤貴男>

 講談社 20061125

石原慎太郎が「週刊ポスト」に、今の日本人が緊張感を失った理由は、この60年間戦争をしなかったからだ」などと書くなど、政治家や権力者は言いたい放題で、「舌禍」のハードルが大きく下がっている。
一方で、マスコミは萎縮し自己規制し、言論の空間はどんどん狭まっている。かつて「サザエさん」には、天皇が御簾の陰から手だけだすシーンが描かれていたが、今ならば無理だろう。
右翼が跳梁跋扈する「今」をもたらす原動力となったのは、左翼的な組織論だという。 敵か味方か、といった判別が組織内で優先され、相互監視が強まり、ヒエラルキーが強化される。「危機管理意識が過剰に発動して、敵か味方か、正義か悪か、の二分法に陥っている日本社会は、左翼的ダイナミズムをはらみながら、組織共同体として再統合されつつある。……擬似左翼的組織論に陥り、その果ては、組織共同体の暴走……」と言う。
右翼の論客・鈴木邦男が語る戦後右翼の形成過程の話なども新鮮だった。

---------抜粋など-------------
▽鈴木 60年安保のとき、自民党が任侠やテキ屋、生長の家とか集めて組織した。そのときテキ屋ややくざに、おまえたちは右翼だと警察が言った。警察から怒鳴られていたのが、今度は先生扱いだから、任侠からどっと右翼が入ってきた。60年以前は、右翼は蔑称だった。
▽鈴木 赤尾敏は、街宣車で日章旗と星条旗の両方もって演説していた。戦後に総転向した右翼と違って、赤尾さんは戦前からずっと親米だった。
▽斉藤 イギリスでインターナショナル・スタディーズを勉強
▽森 敵か味方か、といった判別が組織内において最優先される。だから相互監視が強まるし、ヒエラルキーも強化される。二分法のダイナミズムが組織下部で常に活性化されていれば、上層部は安泰。〓危機管理意識が過剰に発動して、「敵か味方か」「正義か悪か」の二分法に陥っている日本社会は、左翼的ダイナミズムをはらみながら、組織共同体として再統合されつつある。……危ない二分法というのは、擬似左翼的組織論に、陥っているということ。その果ては、組織共同体の暴走。スターリンの粛清、文革、連赤、ナチス、オウム。
▽鈴木 明治維新の元勲と言われた人たちは自分の子供を政治家にさせていない。(世襲議員)は江戸時代の封建領主のような意識。
▽かつて南京大虐殺は、20万でも30万でも、犠牲者の数が多ければいいことになっていて、ちょっとでも異論をはさもうものなら「右翼か」と責められる。左翼に寛容性がなかった。そしてこんどは右が同じようなことをしている。
▽児玉誉士夫も石原慎太郎も天皇は退位すべきだと言っていた。治安維持法制定を推進した国粋主義の権化のような平沼騏一郎(平沼赳夫の養父)が終戦前後の御前会議で天皇の責任を追及したという記録もある。
▽鈴木 天皇制をなくしたり新しい国旗国歌をつくるほうが危険。新しい国旗をつくったら、おれたちはもうかつての戦争とは全く関係ねえんだと言いだしかねない。あれは前の世代の人間が愚かだったからやったことだと。
天皇に選挙権も与えて自由にしたら、じゃあせっかくだから選挙に出てもらおうとか、天皇中心の政党か集団をつくろうとか、なりかねない。憲法から全部天皇条項を取っ払ったらそうなるんじゃないか。
▽貧乏人は戦争にでも行かない限り教育も受けられない社会。アメリカのオーバービーさんが「9条の会」をつくっている。……秋田県なんかでは自衛隊がものすごい競争率。本荘市は、TDKの工場が中国に行ってしまって、採用がなくなって、みんな自衛隊に行く。一昔前は高校の教組が絶対自衛隊に行くな運動をしていた。でも今そんなこと言うと、「先生、じゃあ、どこに仕事があるんだ」となるから組合も何も言えない。
▽いま、公園や幼稚園にはシーソーや箱ブランコはない〓
▽森喜朗「子どもも産まない女が年をとってから福祉を受けるのはおかしい」
▽自民党の改憲試案「家族は、社会の基礎として保護されなければならない」 国が家族を社会の基本的な単位と規定した場合に、結局、社会保障で見てもらえるはずだったのが家族に押しつけられることになる。それを引き受けるのはやっぱり女性になりやすい。
▽斉藤 04年に松山で開かれたタウンミーティングでも、毛利衛が江崎玲於奈と同様(人間にとって遺伝が大切)の話をしたといいます。……マスコミ業界の圧倒的多数が高みからものを言っている。……つくる会の西尾幹二は「(黒人は)何か国家的事故が起きると必ず損をするような仕組みになっています。そこにおいてある種の圧力が九州されるのです。……社会の仕組み全体にとしてはアメリカの強さなのです」と。

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