reizaru– Author –
-
菊と刀 <ルース・ベネディクト>
現代教養文庫 20090109 米国人の人類学者が、敵である日本人の人生観を日本人の立場に立って見ようとしているから、外部からの興味本位の観察とちがって説得力がある。著者が来日したことがなかったとはとても思えない。構造主義的な観察眼の強みだろ... -
いのちの作法 --沢内「生命行政」を継ぐ者たち <小池征人監督>
20080104 老人医療費をいちはやく無料化して有名になった旧沢内村の「今」を映したドキュメンタリー。よくある「福祉の町」の紹介映画なのかなあと、みる前は多少危惧していたが、戦後直後、後に村長になる深沢らがつくった「民俗誌」を冒頭に紹介して... -
遍路と巡礼の社会学 <佐藤久光>
人文書院 20081224 四国遍路と西国、坂東、秩父の巡礼の歴史を紹介し、アンケートなどをつかって比較分析している。 アンケートの結果は社会学だけあって、あたりまえ、と言えば、あたりまえの結論がならんでいる。だからどうしたの? という理由... -
日本にできることは何か <森嶋通夫>
岩波書店 20081220 中国の大学での講演と講義の内容をまとめている。 ウェーバーによると、資本主義の源はプロテスタントであり、中国や日本の儒教はプロテスタントに近い合理的な宗教ではあるものの、上位者を尊敬する考え方が非合理的だったが故... -
わら一本の革命 <福岡正信>
春秋社 200812 福岡正信氏は2008年8月に亡くなるまで、いかに手をかけず野菜や果物をつくるかを追求し、何十年も試行錯誤を繰り返した。その結果、不耕起直播の米麦連続栽培が生まれた。密柑山は、高木・ミカン・クローバー・野菜……が立体的に生育し... -
哲学は人生の役に立つのか <木田元>
PHP新書 20081205 海軍兵学校で終戦をむかえ、闇屋をして暮らしたあと農林学校でまなぶ。なんのために生きているのか悩みつづけ、ドストエフスキーをへてハイデガーを読みたくて21歳で大学に入学した。 哲学者=「青白きインテリ」というイメージ... -
貧困の克服–アジア発展の鍵は何か <アルマティア・セン>
集英社新書 20081201 経済が発展すると、教育が発展し識字率もあがるという従来唱えられてきた順番ではなく、高い識字率こそが経済発展の基盤になるという。江戸時代から識字率がきわめて高かった日本などの例をあげ、アジアの経済発展の基盤だとみる... -
ルイ・ボナパルトのブリュメール18日 <カール・マルクス>
平凡社ライブラリー 20081125 フランス革命からナポレオンへ移り、その後、王政が復活する。その王制を倒す革命によって共和制が返り咲き、普通選挙制が施行される。ところが、議会内の王制派やブルジョア会派は労働者階級を排除し、反発したプロレ... -
先祖の話 <柳田國男>
ちくま文庫 柳田國男全集13 終戦直前の昭和20年春に書かれた。無数の若者が死んでいくなか、古代からの日本人が死者をどう弔ってきたのか、どう弔えばいいのか、先祖と死者と「私」のかかわり方をつづる。 大晦日から正月にかけては、実は先祖の... -
旅の民俗学 <宮本常一ほか>
河出書房新社 20081021 旅を巡る対談集。歴史という縦軸と空間という横軸を縦横につかって、風景の意味や変遷を読み解いていく。アクロバティックでわくわくさせられると同時に、高度経済成長を経て日本人が失ってしまったものの大きさに愕然とさせら... -
他者と死者 <内田樹>
海鳥社 20081030 「師=死者=他者」というのが、この本の骨格のような気がする。「他者」とは、「私」には絶対的に理解できない境地にある絶対的な存在であり、ラカンの言う「象徴界」(その反対が「想像界」)もほぼ同様の意味である。難解なレヴィ... -
反哲学入門 <木田元>
新潮社 20081104 古来、人間は現実の世界・自然にどっぷり浸かっていた。自然とはそこから生まれいずるもの、「なる」ものであるとされた。 ソクラテス・プラトンにはじまる哲学は「存在するもの全体がなんであるか」と問い、自然から切り離された... -
臨床の知とは何か <中村雄二郎>
岩波新書 20081017 近代科学は、「客観主義」の名のもとに「専門」という蛸壺にはまり、「現実」そのものを見なくなってしまった。全体をバクっととらえる目(生命そのものの全体を見る目)を失い、観察者である私たちも観察対象に影響を与えていると... -
砦に拠る〈松下竜一〉
ちくま文庫 20081001 筑後川の上流、阿蘇山北麓の志屋という小さな集落に、下筌ダムと松原ダムという2つのダム建設計画がもちあがった。 主人公の山林地主・室原知幸は、大正デモクラシーの時代に早稲田で政治を学び、「大学さま」と呼ばれる... -
メキシコ人はなぜハゲないし、死なないのか <明川哲也>
文春文庫 20081008 日本では、年間3万人が自殺している。3年間で10万人の市がひとつ消滅すると考えると、そのすさまじさがわかる。たぶん自殺未遂や、けがして生き残った人はこの何倍にものぼるのだろう。 世界を見比べると、ロシアや東欧など... -
戦争絶滅へ、人間回復へ 93歳・ジャーナリストの発言 <むのたけじ 聞き手 黒岩比佐子>
岩波新書 20080923 戦中に朝日新聞の記者をつとめ、敗戦後、戦争責任をとって30歳で朝日を退職した。以来、東北地方の実家にひっこみ、週刊新聞「たいまつ」を発行しつづけた。生活のめどがたたず一時は自殺しようと思いつめたという。 戦前にマ... -
姜尚中の青春読書ノート <姜尚中>
朝日新書 20080920 気鋭の政治学者であり、専門の論文は難解なことを書いているのに、自らを語るときはみずみずしく若々しい悩みに満ちている。東大という象牙の塔のなかで、なぜこんな感性をもちつづけることができるだろう。その答えの一部は「在日... -
街場の中国論 <内田樹>
ミシマ社 200809 中国数千年の歴史をつらぬく「パターン」(=変化する仕方)として、まず、「易姓革命論」をあげる。王朝の天命が尽きれば王位を譲らなければならない。譲位を拒否した場合は、その王を伐つことは天理にかなった行為とされる。だから... -
ジャーナリズム崩壊 <上杉隆>
幻冬舎新書 20080905 ガソリンの暫定税率期限切れで一斉値下げになったとき、新聞は一斉に「混乱へ」と報じた。値下げで混乱するのは、政治家や官僚、一部のガソリン業者だけなのに。いつの間にか、記者が政治家の立場でモノを見ていた。 「インド... -
こんな日本でよかったね 構造主義的日本論 <内田樹>
木星叢書 20080830 私たちの感受性も観察眼も属している文化によって規定さており、客観的な視点や歴史観などありえないことを説いた「構造主義」、あらゆる制度の起源に「身体的感覚」をもとめる思考と、「存在しないのだけれど、存在する」というねじれ... -
世界を変えた野菜読本 <シルヴィア・ジョンソン>
晶文社 20080806 トマトがないころ、イタリア人はクリームやチーズや野菜で作ったソースをパスタにかけていた。麻婆豆腐などの四川料理も、トウガラシがなかったから山椒の辛みしかなかった。インド料理も、黒胡椒やクミン、コリアンダー、生姜で辛みをだ... -
神々の山嶺 上下 <夢枕獏>
集英社文庫 20080819 たかだか3000メートルの山でも、重いリュックを背負ったまま中腰になってカメラをかまえ数秒息を止めるだけで何度も荒い息をつかなければならない。3700メートルのラサでは、4キロ坂をのぼるのがしんどい。5000メートル... -
わが夫、チェ・ゲバラ 愛と革命の追憶 <アレイダ・マルチ>
後藤政子訳 朝日新聞社 200807 チェ・ゲバラの妻アレイダ・マルチは、40年近くも、チェの思い出を語ろうとしなかった。胸の中にためた個人的な思い出を一気にはきだした本である。 完成された革命家としてのチェではなく、たえず自らを成長させつづけ... -
狼少年のパラドクス ウチダ式教育再生論 <内田樹>
朝日新聞社 20080809 明治以来、日本の教育は管理しやすい「小粒の人間」をそろえ、「みんなとおなじ」という均質化することを目標にしてきた。それがみごとにうまくいき、うまくいきすぎたことが、最近の教育問題だという。 「小さい粒」は管理しやすい... -
炉辺夜話 日本人のくらしと文化 <宮本常一>
20080709 河出書房新社 他者に依存したり卑屈になったりするのではなく、主体性をもち自立したヒト・コミュニティが外の文化を積極的に吸収することによって、文明・文化は進歩し、コミュニティは発展する。そうした取り組みのつみかさねが「伝統」を形づ... -
調査されるという迷惑 <宮本常一 安渓遊地>
みずのわ出版 200807 安渓さんという山口県立大の先生は、伊谷純一郎や宮本常一の薫陶をうけた人類学者で、アフリカや西表島でフィールドワークをしてきた。「バカセならいっぱいくるぞ」という痛烈な言葉でむかえられ、いったいその調査は地元に役立つの... -
生活環境主義でいこう <嘉田由紀子語り 古谷桂信構成>
20080715 岩波ジュニア新書 嘉田氏は新幹線の新駅着工をとめ、ダムの建設に異を唱える話題の滋賀県知事である。この本を読むと、彼女はまさに、フィールドワーカーとして滋賀県の隅々まで歩いた滋賀県版の宮本常一であることがよくわかる。 埼玉の農家に... -
福祉社会 社会政策とその考え方 <武川正吾>
有斐閣アルマ 20080626 「福祉社会」とはなにかを知るための概説書。けっしてわくわくする本ではないが、効率的であるはずの官僚組織が硬直化し、福祉を進展させるうえで障害となってしまう過程をウェーバーの理論をもとに論ずる部分などは、興味深かった... -
沢内村奮戦記〈太田祖電、増田進、田中トシ、上坪陽、田邊順一〉
あけび書房 20080605 いちはやく老人医療費の無料化を実現したことで知られる岩手県沢内村の歴史を、元村長、医師、保健師といった人たちがオムニバス形式でえがく。田邊氏の写真も心をうつ。 「老人医療の無料化」は、徹底的に草の根レベルでかたりあい... -
ハンセン病とともに心の壁を超える<熊本日日新聞社>
岩波書店 20080612 熊本の新聞社のルポをまとめた。新聞記事はえてして型にはまってしまうことが多いが、この本は、新聞社自らの責任をも追求し、自己切開し、マスコミも「個」が大切であると言い切っている。ハンセンの問題は、個人・組織・社会の本物と...