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四国八十八カ所 <石川文洋>

岩波新書 20080502

とくに文章がうまいわけではない。写真がすごいわけでもない。でも引き込まれ、共感してしまうのは筆者の素朴なやさしさがにじみでているからだろう。
懐かしい風景。懐かしい宿。花やチョウの息吹に小さな感動を覚え、お接待に戸惑いながらもありがたい、と思う。若者がいなくなり寂れてしまったムラにひしひしと寂しさを感じる。
遍路道を歩いていると、こんなしんどい思いをして、いったい何のためにやってるんだろう、と疑問に思うときが何度も訪れる。でもふりかえると、沿道の風景はうるおいを保ちながら心に刻みこまれているし、細かな風景のちがいを感じ取る力を身につけられたような気がする。
さらに石川さんの場合は、ベトナムやカンボジアで亡くなったジャーナリストたちへの慰霊の思いを込めている。本にも、ジャーナリストたちの生き方を紹介している。ふだんの生活では、亡くなった人を思い出すのはたまにしかない。でも遍路道をただひたすら歩いていると、日頃考えないことを考えつづけ、忘れていた人たちと心のなかで対話する。遍路道は、死者と出会い直せる場でもあるんだなあ、と、この本を読んで思わされた。
遍路旅が終わる直前に、筆者は心筋梗塞で死にかけた。だからなおさら、今生きていることに喜びを感じ、感謝しながら生活しているという。
そう思えるようになりたいと思う。
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ロッジおざき
えびすや旅館(広田)
善通寺
金倉寺 乃木希典が宿にしていて、東京から会いに来た妻を追い返したという松。

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