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遠い太鼓 <村上春樹>

講談社文庫 1090709
40歳をはさむ3年間、イタリアやギリシャに住んだ体験をつづったエッセー集。
40歳を前になにかを変えなければ……と思って妻と2人で欧州にわたった。その動機がまず共感できる。ミドルエイジクライシスじゃないけど、なにか竹の節をつくらなければならない、と、オレも思った。いや今も思っている。でもそんな転機は残念ながらもてていない。転職していればなにか変化があったかもしれないが。
思えば節目はつまらぬ内勤生活のなかで訪れた。そのとき、どんな日記を書いたか……思い出せない。なにかむなしさを感じたのはたしかだが、たいしたことは書けてないだろう。せっかく現場にもどったのに、十年一日の仕事しかできていない。ああこのまま10年20年と過ぎ去ってしまうのか……
村上はたぶんこんなしょうもない停滞感ではなかったろうが、ナニカに焦っていたのは確かだろう。
エッセーじたいは、とくに盛り上がりがあるわけではない。でもやっぱりうまい。天気や自然の描写、出会った人々の描写……。たぶんこれは技術だけの問題ではない。風景から自分自身を引き離し、異邦人のような好奇心に充ち満ちた目で、自分自身を含めた全体をとらえる感性があるのだろう。そうじゃなかったら、オレの書く紀行文とこんなにも差がでる理由がわからない。
マフィアが跋扈するシシリーの落ち着かない生活。おいしそうな料理とワイン。たった200メートル離れただけでまったく異なる文化をもつ不思議な村。日曜日の午後に村の男が必ず集まってビールを飲むバール……。心配性で悲観的な奥さんのグチと小言--だけはうちと一緒かな。

========メモ=========
▽レスボス島 農業婦人会の活動が活発 家を提供して民宿をはじめたり、タヴェルナを経営したり。レスボス島のフェミニズム運動
▽ローマ 路上駐車 新築アパートが1930年代、地下を掘れば遺跡。縦列駐車、うまいと「ブラボー」
▽スポンゴ採りでにぎわった島。海綿。人工のスポンジができなくなり、アメリカの移民に出てしまった。
▽ギリシャの選挙 自分の生まれた村で投票しなければならない。選挙で帰省ラッシュに。投票は罰則付きの義務。
▽ワインを蔵元に買いに行く。
泥棒事情

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