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05環境・農業
農山村は消滅しない<小田切徳美>
■岩波新書240731 「限界集落」という言葉や、「増田レポート」が「消滅自治体」をリストアップしたことに違和感を感じてきた。一方、そう簡単にムラはつぶれないと、山下氏や徳野貞夫氏は論じる。筆者は基本的に後者の立場である。 農山村の空洞化は「... -
04民俗・食
今日の芸術<岡本太郎>
■光文社文庫240702 岡本太郎は「芸術は爆発だ」のへんなおじさん、あるいはコメディアンだと幼いころは思っていた。 1950年代に書いたこの本を読むと、岡本が芸術のために必死でたたかっていたことがわかる。 家元制度などのかたちで、師匠の模倣... -
04民俗・食
村の社会学 日本の伝統的な人づきあいに学ぶ<鳥越皓之>
■ちくま新書 20240627 封建制の地盤のように思われてきた「村」の積極的な意義をわかりやすくときあかす。 東日本大震災で原発事故から逃げてくる避難民のためにみんなで炊き出しをした。その仕事は強制でもなくボランティアでもない村人の「つとめ」... -
福島・東北
東北発の震災論 周辺から広域システムを考える<山下祐介>
■ちくま新書240625 東日本大震災から2年後の本。筆者は2011年4月まで、弘前大におり、その後東京の大学に移って、被災地を歩いてきた。 <広域システム>と<中心ー周辺>の問題こそが震災であらわになったとする。原発事故にそれが典型的にあらわれ... -
11歴史〜現代史
限界集落の真実 過疎の村は消えるのか? <山下祐介>
■筑摩新書 20130806 「限界集落」は高齢化によって消滅することになると1990年代初頭に予想したが、高齢化で消えた集落はほぼない。「高齢化→限界→消滅」の事例はほぼゼロ。これまでにも集落消滅はあったが、そのほとんどは、集落が元気で人口も若い... -
Uncategorized
「日本」とはなにか<米山俊直>
■人文書館 240619 著者はアフリカから祇園祭などの日本の祭りまで調べてきた文化人類学者。学生時代、私は彼の祇園祭フィールドワークのゼミに参加させてもらった。えらぶらない人で、フィールドワークで鉾町に2カ月みっちりかかわるのは得がた... -
11歴史〜現代史
谷川雁 永久工作者の言霊<松本輝夫>
■平凡社新書 240613 谷川雁は1960年前後、吉本龍明とならびたつカリスマ的思想家で、「連帯を求めて孤立を恐れず」というフレーズの生みの親であり、「原点」という言葉を普及させた。 筆者は東大の学生時代に筑豊で雁とであった。柳田国男と折口信... -
04民俗・食
美の呪力<岡本太郎>
■新潮文庫240607 1970年の連載中のタイトルは「わが世界美術史」。 美術史といいながら、印象派とかバロックとか分類して歴史をたどる本ではない。 最初にとりあげるのが、カナダエスキモーの積み石「イヌシュク」や霊山の石積みなどだ。 石積み... -
01思想・人権・人間論
日本人の知らない武士道<アレキサンダー・ベネット>
■文藝春秋20240519 著者は剣道・居合・長刀を実践するニュージーランド人の武道家。 新渡戸稲造の「武士道」とは異なり、みずから武道をやっているからこそわかる身体感覚についての記述がおもしろい。 たとえば「残心」。「一本が決まっても、気を抜か... -
文化人類学・構造主義
季刊民族学165 岡本太郎の民族学
■20240518 「芸術は爆発だ」というヘンなおじさん、というのがぼくらの子どものころの岡本太郎のイメージだった。 戦前にマルセル・モースに師事して民族学をまなび、帰納的で具体的な姻族学と、演繹的で抽象な芸術の双方で創的な世界をつくりあげた天... -
04民俗・食
日本の伝統の正体<藤井青銅>
■柏書房20240518 日本の伝統っていうけど、実はこんな程度やで、という本。 商売柄けっこう知っていたはずだけど、知らない「伝統の暴露」もあっておもしろかった。 七五三は、徳川綱吉が、嫡男・徳松の健康を願った祝いをした1681年11... -
能登・北陸
古文書返却の旅 戦後史学史の一齣<網野善彦>
■中公新書20240507 東海区水産研究所の一室で1949年、全国の漁村の古文書を蒐集・整理・刊行し、文書館・資料館をつくるという事業がはじまる。研究所の月島分室が担当し、日本常民文化研究所に委託した。 だが1954年度で水産庁は研究所への委託予算を... -
04民俗・食
最澄と空海<梅原猛>
■小学館文庫 20240429 ▽仏教の流れ 釈迦の言行録の経典をもとに、500年ほど原始仏教(小乗仏教)がつづき、1世紀から3世紀にかけて龍樹らが革新運動をおこす。 欲望を否定して清い生活をしているだけではなく、大衆のなかにはいれ、と説き、大衆救... -
20映画・美術館など
民博「日本の仮面――芸能と祭りの世界」
民博の「日本の仮面――芸能と祭りの世界」を見に行った。 能や狂言など、さまざまな面がある。それらをただ年代別やカテゴリーで分類してならべるだけでなく、「仮面」の意味をさぐる。民博の展示のおもしろさはそんな「意味」の抽出にある。 縄文時代... -
01思想・人権・人間論
ポストコロナの生命哲学<福岡伸一・伊藤亜紗・藤原辰史>
■集英社新書 20240419 コロナをめぐってさまざまな悲劇があったけど、人影が消えた大阪の町は広々していて、空が澄んでいて、空気がおいしかった。あのときの不思議な感覚をもう忘れかけている。 コロナの経験から、なにを学べるのか。どんな変化があり... -
06福祉・災害・住宅
災害と人間 地震・津波・台風・火災の化学と教育<寺田寅彦>
■仮説社 「天災は忘れた頃来る」という言葉で知られる寺田寅彦の災害関連の文章をまとめたブックレット。日本人の忘れやすさを批判する論考は、東日本大震災や能登半島地震を体験した今の時代にこそ読まれるべきだ。 ▽津波と人間 1933年の東北への津... -
11歴史〜現代史
江戸という幻景<渡辺京二>
■弦書房 20240415 かつて江戸時代は封建的な遅れた体制だと評価されていたのにたいし、最近の江戸ブームでは、江戸時代の近代に通じる部分をとりだして「実は意外に近代的だった」と評する。どちらも近代を基準に過去を評価している。 渡辺は、江戸は、... -
福島・東北
呼び覚まされる霊性の震災学 3.11生と死のはざまで<金菱清編>
■新曜社 20240401 東日本大震災の被災地での学生のフィールドワークをもとにした本。 石巻市や気仙沼市のタクシードライバーに聞き取り調査をすると、幽霊をのせる経験をしている人が少なくなかった。。 石巻市は保守的で、ほとんど相手にしてくれな... -
04民俗・食
円空とキリスト教<伊藤治雄>
■ブックショップマイタウン20240410 円空の木像は独特の魅力がある。天台宗の僧で修験道の修行者なのだけど、仏像だけでなく、柿本人麿、両面宿儺、青面金剛などなど、不気味ささえただよわせる神像や彼オリジナルの像もきざんでいる。 「仏僧」の枠に... -
02憲法・有事・ナショナリズム
明日ぼくは店の棚からヘイト本を外せるだろうか<福嶋聡>
■dZERO 20240401 「ヘイト」をめぐって「うちはヘイト本はおきません」と宣言する書店はある。共感しつつも、それがどれだけの意味があるの? とも思っていた。 ジュンク堂につとめる筆者は、ヘイト本を徹底的に批判しつつも、書店から「はずす」こと... -
20映画・美術館など
戦雲-いくさふむ<三上智恵監督>
ぼくは石垣島には5回、宮古島も1度旅行した。最後は2015年だった。迷彩服の米軍人が闊歩する沖縄本島とちがって、平和で明るい島だった。 ところが2016年ごろから、自衛隊の進出がはじまった。 石垣島の聖地である於茂登岳のふもとにミサイ... -
05環境・農業
日本の農村 農村社会学に見る東西南北<細谷昂>
■ちくま新書202403 南北朝時代以来つづいてきたとされる「村」が今、消えようとしている。能登半島地震は「村の終わりのはじまり」ではないかと思える。 「村」はそもそもどうやって生まれ、存続してきたのか? そんな疑問をもって本書を手にした。学者... -
20映画・美術館など
記者たち 多数になびく社会のなかで20240306
MBS斉加尚代さんが制作した番組。 沖縄の新聞記者の明さんは、東京に異動して防衛省担当になり、全国紙の記者は与党にばかり近づいているとかんじる。 毎日新聞の小山美砂記者は広島の被爆者を追ってきた。「小山さんの記事はあついけど、中立公平じゃ... -
文化人類学・構造主義
学ぶことを学ぶ<里見実>
■太郎次郎社20231226 テーラーシステムとフォード・システムの特徴は、労働過程における「構想と実行の分離」にある。働く者の「構想する」権利を拒むことによって、巨大な生産力を実現してきた。それによって、生き甲斐と自己実現につながっていたはずの... -
04民俗・食
巨大おけを絶やすな! 日本の食文化を未来へつなぐ<竹内早希子>
■岩波ジュニア新書 20240112 湯浅の醤油蔵でも、那智勝浦の酢の蔵でも「この木桶が壊れたら、もう新調できない。堺の業者しか残っていない」と聞いていた。 ところが、福島県の郡山の酒蔵で巨大な木桶を新調していた。それが小豆島で習ったという。いつ... -
06福祉・災害・住宅
まちで生きる、まちが変わる つくば自立生活センターほにゃらの挑戦<柴田大輔>
■夕書房 20240221 たんなる「障害者福祉の本」ではない。自立生活に挑む障害者と、地域住民と、地域社会のダイナミックで感動的な成長物語だ。 かつて重度障害者は「就学免除」という名目で学校に通う権利を奪われていた。養護学校に行けるようになっ... -
07地方自治・行政
コモンの「自治」論<斉藤幸平・松本卓也編>
■集英社 20240124 「人新世」の危機が深まれば、市場は効率的だという新自由主義の楽観的な考えは終わりを告げる。コロナ禍でのロックダウンのように、慢性的な緊急事態に対処するため、大きな政治権力が要請され「戦時経済」が生まれ、政治がトップダウ... -
12小説・エッセー
眠れないほどおもしろい紫式部日記<板野博行>20240128
■王様文庫 中宮彰子につかえていた和泉式部が語り手として、同僚の紫式部や、彰子のライバルの中宮定子とその下の清少納言らついても解説するという組み立て。 中宮定子が清少納言らをあつめて最高の文化サロンをつくっていたが、道長のごりおしで彰子も... -
文化人類学・構造主義
映画「風の島」<大重潤一郎監督>
■20240115 1983年に沖縄の陶芸家・大嶺實清氏が西表島の沖にある無人島・新城島(パナリ)でつくられていた土器「パナリ焼」を復活させた際の記録映画。 パナリ島はシーカヤックのツアーで訪ねたことがあったが、無人島に古い土器文化があったことなどは... -
20映画・美術館など
翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~
■映画 240110 昨年試写会で見たけど、荒唐無稽すぎて感想を書けなかった。だからもう一度見た。 埼玉県民は「どちらの出身ですか?」と聞かれると「東京のほうです」と答える。滋賀県民は「京都の近く」と答える。共通する卑屈な県民性をもとに「埼玉解...