12小説・エッセー– category –
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生きて語り伝える<G・ガルシア=マルケス>
■生きて語り伝える新潮社<G.ガルシア=マルケス> 20110810 子ども時代から、実質上の亡命によって祖国での青春時代が終わるまでをつづっている。 作家をめざしながら、貧しい生活を送る20歳代前半の著者が、母とともに「家」を売るために故郷を訪... -
嬉しうて、そして…<城山三郎>未
■嬉しうて、そして……<城山三郎>文春文庫 201008 城山三郎の最晩年の随筆や「私の履歴書」などをおさめる。 =================================== ▽23 学生の言い分に耳を傾ける教師が居なかったわけではないが、ほとんどの教師たちは教え子に... -
真昼の暗黒<アーサー・ケストラー>
■真昼の暗黒<アーサー・ケストラー> 岩波文庫 20100813 スターリンによって処刑されたプハーリンの裁判をモデルに書かれたとされ、オーウェルが「1984年」を執筆する際に参考にした小説だ。 人々を幸せにするはずの社会主義がなぜすさまじ... -
一歩の距離 小説予科練<城山三郎>
■一歩の距離 小説予科練<城山三郎> 201007 4人の少年。3人。軍神になると誓った秀才が一歩を踏み出す。人間魚雷の基地へ去っていく。もう1人「かーっとなって」踏み出す。塩月は「飛行機にも乗らずに死ねるものか。あくまで空で死ぬんだ」と決... -
打たれ強く生きる <城山三郎>
■打たれ強く生きる <城山三郎> 新潮文庫 20100416 城山が描く政財界の人物は、左遷されたり、不遇をかこったりした人が多い。エリート一直線でまっすぐに出世しました、という人は出てこない。不遇な時期にどうやってすごすかによってその後の... -
毎日が日曜日 <城山三郎>
■毎日が日曜日 <城山三郎> 新潮文庫 20100418 左遷されてもそれにくじけず「なにか」を求めつづける人、不遇の境遇のなかに次への芽を見いだす人を描くから、城山の小説は多くのビジネスマンに愛読された。 総合商社につとめる主人公は京都支... -
無所属の時間で生きる<城山三郎>
■無所属の時間で生きる<城山三郎>新潮文庫 20100411 そろそろ無所属の時間を考えなければいけない。定年になる前に「無所属」になりたい。できたら1,2年うちに。そう思いながら現実的に考えると不安も大きい。所属がないことに不安を覚えるよ... -
オリガ・モリソヴナの反語法 <米原万里>
■オリガ・モリソヴナの反語法 <米原万里>集英社文庫 201003 1960年代、チェコの首都プラハにあった、外国人の子弟が通うソヴィエト学校が舞台だ。ダンス教師オリガ・モリソヴナは、大げさな褒め言葉で生徒を罵倒する。50歳代というふれこ... -
青年は荒野をめざす <五木寛之>
■青年は荒野をめざす <五木寛之> 文春文庫 20100407 主人公のジュンはジャズのトランペット奏者を目指す20歳。技術はあるのに「なにかが足りない」と言われる。人生経験が少ないからではないかと考えて、バイカル号に乗って旅立つ。 船上で... -
嘘つきアーニャの真っ赤な真実<米原万里>
嘘つきアーニャの真っ赤な真実<米原万里> 角川文庫 20100302 1960年ごろのチェコのソビエト学校に通っていたときに出会った3人の女の子とのエピソードと、30余年をへて再会する話を描く。 ギリシャ人のリッツァは共産主義者の父ととも... -
スプートニクの恋人<村上春樹>
スプートニクの恋人<村上春樹>講談社文庫 20100215 主人公のすみれは小説家志望の22歳の女性だ。「僕」はすみれを愛し、性欲を抱いているが、すみれは「僕」(小学校教師)を性の対象としては見ない。すみれは17歳年上の女性ミュウを愛し、性... -
国境の南、太陽の西<村上春樹>
講談社文庫 20091231 村上の著作で最初に読んだのは「羊をめぐる……」だった。夢中になって時間をたつにも忘れた。「ねじまき鳥」もおもしろかったし、「ノルウェーの森」もよかった。そのあと、初期の作品を2作読んだら薄っぺらで物足りなく感じた。大江... -
風の歌を聴け 1973年のピンボール <村上春樹>
講談社文庫 1090810 一部の人にしかわからに固有名詞やテクニカルタームがたくさんでてくる。エルビスくらいはまだわかるが、ディランの「ナッスヴィル・スカイライン」と言われてもわからない。「ギムレット」も酒を飲まない人には知られていないだろう... -
遠い太鼓 <村上春樹>
講談社文庫 1090709 40歳をはさむ3年間、イタリアやギリシャに住んだ体験をつづったエッセー集。 40歳を前になにかを変えなければ……と思って妻と2人で欧州にわたった。その動機がまず共感できる。ミドルエイジクライシスじゃないけど、なにか竹の節... -
ノルウェーの森 上・下 <村上春樹>
講談社文庫 20090616 おもしろい。切ない。哀しい。 村上春樹の作品で最初に読んだのは「羊をめぐる冒険」だった。次はノモンハンを描いた作品、それから「アンダーグランド」。どれもおもしろい。「ノルウェーの森」は彼には珍しく、リアルで現実的な小... -
才能を伸ばす4つの「アホ」力 <板野博行>
サンマーク出版 20090502 なんでもメチャクチャやってみろ。考える前に動け。それで失敗するならそれは糧になる。「とりあえずアホになっやる」ことを説く。 漫画家になるため高校を中退して新宿のラーメン屋で働いて8カ月で挫折する。もう一度高校1年... -
メキシコ人はなぜハゲないし、死なないのか <明川哲也>
文春文庫 20081008 日本では、年間3万人が自殺している。3年間で10万人の市がひとつ消滅すると考えると、そのすさまじさがわかる。たぶん自殺未遂や、けがして生き残った人はこの何倍にものぼるのだろう。 世界を見比べると、ロシアや東欧など... -
神々の山嶺 上下 <夢枕獏>
集英社文庫 20080819 たかだか3000メートルの山でも、重いリュックを背負ったまま中腰になってカメラをかまえ数秒息を止めるだけで何度も荒い息をつかなければならない。3700メートルのラサでは、4キロ坂をのぼるのがしんどい。5000メートル... -
趣味は読書 <斎藤美奈子>
平凡社 20070515 批判のしかた、切れ味が鋭い。右翼の「新しい歴史教科書」から左翼の「金曜日」までバサリバサリと切りおとし、「いい人」の象徴のような大江健三郎や茨木のり子でさえも容赦しない。 たとえば、天声人語がべたぼめした茨木のり子の詩。 ... -
「源氏物語」に学ぶ女性の気品 <板野博行>
■ 青春新書 20080504 源氏物語は、一流の恋愛小説でもありエロ小説でもあるってことがよくわかる。登場する女性を1人1人生き様を紹介する。 当時の貴族は妻問婚である。セックスするまでは顔をみることができず、だから、噂話を収集し和歌の交換によっ... -
空疎な小皇帝–「石原慎太郎」という問題 斎藤貴男
20080416 石原の「評伝」ではない。佐野眞一がつくる評伝を期待したらダメだ。 権力にへつらい弱者に高飛車で、こびへつらう者ばかりを重用する、「小皇帝」石原の言動がなにをもたらすか、もたらしているかを丹念に描いている。 秘書時代から暴力事件をお... -
少年Mのイムジン河 <松山猛>
木楽舎 20080225 フォーククルセダーズがうたった「イムジン河」の誕生秘話である。 筆者の生まれ育った京都の南は、在日朝鮮人が多く、朝鮮戦争で負傷した米兵が後送される病院もあった。当時の京都は、ニンニクはおろか納豆とも縁がなく、ニンニクのに... -
一億三千万人のための小説教室 <高橋源一郎>
岩波新書 20070820 ふっと思い浮かんで、おもろい! と思うのだけど、パソコンにむかうと文字にならない。ちょっと時間がたつとわすれてしまう。あれほどすばらしい着想だったのに、なぜいざ書こうとするとしおれてしまい、指のあいだから流れおちる砂... -
クライマーズ・ハイ
横山秀夫 文春文庫 20060805 文句なしにおもしろい。元上毛新聞記者だけあって、新聞社と記者の生態を余すところなく描いている。 主人公は群馬の「北関東新聞」の40歳の記者である。 1985年8月、地元出身の中曽根首相が靖国公式参拝をする... -
家畜人ヤプー(全5巻) <沼正三>
幻冬舎アウトロー文庫 20060718 未来世界。アングロサクソンの子孫であるイースが宇宙を支配し、日本人の子孫であるヤプーは奴隷以下の「道具」「家畜」とされている。イースの便器はヤプーの口であり、足置き場もヤプーであり、靴の底敷もヤプーだ。白... -
流浪 金子光晴エッセイ・コレクション
大庭萱朗編 ちくま文庫 20060620 放浪の詩人の文章を一度読んでみたかった。 子どもの思い出から、30歳代の7年間にわたる旅行の後までを記したエッセーをあつめている。 とりわけ妻の森三千代とともに歩いた7年間の旅行の描写は興味深い。 旅の途... -
借家と持ち家の文学史 <西川祐子>
三省堂 20050124 「江戸川乱歩シリーズ」と吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」を読んだとき、まったくジャンルの異なる作品なのに、どこか似ているなあと思った。太宰治と島崎藤村、あるいは志賀直哉の描く「家」にも同じにおいがした。この本を読ん... -
となり町戦争 <三崎亜記>
集英社 200503 市の広報に「町づくりの一環でとなり町との戦争をします」という主旨の記事がのる。詳細なプランは、コンサルタント会社が作成したという。 戦争が始まるというその日、となり町に通勤している主人公は緊張しながら車を走らすが、これとい... -
或る『小倉日記』伝 <松本清張>
新潮文庫 20050302 週刊金曜日で、佐高信が司馬と比較して清張のすばらしさを説いていた。それを見て、もう一度読んでみようと思った。 下に、短編の登場人物をずらりと並べてみた。一言で言うと暗い。屈折している。繊細で鋭敏な心と、コンプレックスと...