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空疎な小皇帝–「石原慎太郎」という問題 斎藤貴男

20080416

石原の「評伝」ではない。佐野眞一がつくる評伝を期待したらダメだ。
権力にへつらい弱者に高飛車で、こびへつらう者ばかりを重用する、「小皇帝」石原の言動がなにをもたらすか、もたらしているかを丹念に描いている。
秘書時代から暴力事件をおこしてきた浜渦副知事にすべてまかせ、都庁には週2,3日しかでてこない石原の実態と、それを批判されると開き直る様子。そのおかしさを報じようとしないマスコミの感覚の鈍磨加減……
三宅島の事例が示すように、自分が面子をつぶされると嵩にかかったように攻撃し、悪口雑言を浴びせかける。
良識とか良心という言葉は、彼にはまったく通じない。最低限の「礼儀」やらたてまえやらといった感覚をぶちこわしてしまった。
でも、石原自身よりも周囲の状況のほうが怖い。権力者にへつらい、流され、憲法違反ともいえる強権的な政治を展開する都庁の役人たち、教委の役人や校長たち、書くべきことを書こうとしないメディアなどのメダカ体質こそがファシズムをもたらそうとしているのだ、ということがよくわかる。

▽43 「三国人」発言 00年4月9日「今日の東京を見ますと、不法入国した多くの三国人、外国人が非常に凶悪な犯罪をですね、繰り返している」「もし大きな災害が起こった時には大きな大きな騒擾事件すらですね、想定される」 うやむやに。最初に記事を書いた共同通信の記者が都庁記者クラブを去るまでに、さほどの時間も必要としなかった。
▽中山正暉 かつての同志。 ▽49 「私が総理だったら、北朝鮮と戦争してでも(拉致された人々を)取り戻す」
▽99
▽112 「これは僕がいってるんじゃなくて、松井孝典がいってるんだけど、”文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババァ”なんだそうだ。”女性が生殖能力を失っても生きてるってのは、無駄で罪です”って。男は80,90歳でも生殖能力があるけれど、女は閉経してしまったら子供を生む力はない。そんな人間が、きんさん、ぎんさんの年まで生きてるってのは、地球にとって非常に悪しき弊害だって……」(週刊女性) 都議会で批判されると、「発言の片言隻句をとらえて都合よく断じるのは共産党の古来常套手段でファッショ的デマゴーグ以外の何物でもない」……
▽119 東京女性財団廃止 ……ジェンダーという表現がご法度に……。バックラッシュ、首都から地方へ。
▽130 山口県宇部市の「男女共同参画推進条例」には「男らしさ」「女らしさ」の表現も登場。
▽131 シルバーパス全面有料化、老人医療費助成の廃止、心身障がい者医療費助成への本人負担の導入、公立保育所の市場化・民営化。都立の入所型福祉施設36カ所のうち22カ所を廃止または規模縮小、民間委譲の方針。小児病院の廃止。
▽136 職員の精神疾患も急増。「特に女性が辛い目に遭うケースが目立ちます。何かと言えばオンナ、オンナと、女性を見下したがる管理職がやたらに増えていますから」 都庁職員労組 匿名だけでなく、支部名も出さないでほしいと懇願する。
▽175 三宅島NLP 大噴火への予兆が高まっていた時期に現地を訪れた石原知事 「三宅は食い物が不味いんだよな。で、いつまでNLPに反対してるんだ。受け入れちまえば復興だって簡単だろうに」
▽183 防災スペクタクル 在日朝鮮人向け新聞の女性記者。集会やデモ行進を取材。どこへ行くにも公安の私服がぴったりと張りつき、威圧してきた。「外国人登録証を見つけられたらどうしようと、ずっとおびえていました。それだけで警察の態度はさらに悪くなるはずです。もしかしたら他に誰もいない場所につれて行かれて、殺されるかもしれない。そんな恐怖さえ覚えました」 関東大震災での朝鮮人虐殺。6115人が定説。震災に乗じた騒擾計画ありとの出所不明のデマを名分に戒厳令が敷かれ、朝鮮人取り締まりを命ずる緊急通達が、内務省警保局長から各地方長官宛に出された。これを受けた軍隊、警察、民間の自警団が一体となり、……朝鮮人を次々に殺し、あるいは火炙りや鋸引きの拷問を加えていった。
▽193 防災訓練。少しでも抵抗する人々に対する監視は執拗で、徹底していた。白鬚西地区では、訓練会場と、反対派が集会の拠点とした対岸の公園とを結ぶ水神大橋が機動隊に封鎖された。取材スタッフの一人が強引に橋を渡ってみようとした。とっさに両肩に手が掛かる。「あなただけを通すわけにはいかないんだよ!」 責任者らしい機動隊員が、大声で怒鳴りつけてきた。
▽206 講評「中にはバカな左翼が数人いて、わけのわからんことを言ってましたが、多くの市民はこれを冷笑したり無視したりしていることが、私は非常に象徴的な光景だったと思っております」「でも助けますよ、同胞だから」 ここに至って「同胞」と限定してみせることに、この人物の本質がある。
▽217 小笠原 98年現在、旧島民の人口は25%を切っていた。……2002年7月の小笠原でも、石原知事は同行記者団が船で到着する前々日に飛行艇で来島し、兄島、弟島付近でのダイビングを楽しんだ。……小笠原は人々が暮らす生活の場ではない。彼自身が遊ぶために浮かぶ島なのである。
▽231 大道芸人にパフォーマンスを認める「ヘブン・アーティスト」
▽240 国立 市民活動が盛ん。「西の広島、東の国立」と称される平和・人権教育のメッカだった。90年には市議会が、卒業式・入学式における日の丸掲揚・君が代斉唱の強行の取り止めを求める付帯決議をしている。ところが1999年から……。多摩教組の拠点分会になっていた国立二小がねらいうちされる。 「産経新聞」の記事が引き金になって、国立の教育はがらりと還られていく。「校長に土下座要求」のみだしで報じた。連日のように右翼の街宣車が押しかけ、下校途中の生徒が罵声を浴びせられる事態に。
▽245 教科書問題
▽258 広島県戸河内町の戸河内中学。94年の卒業生による卒業制作「寺内町景観図」を校長が破壊した。〓「公教育の中立性を損なうと判断」。時の支配権力に抵抗する民衆など悪でしかないのだと、彼は言いたかったのだろうか。これだけの事件が全国紙では1行も報じられなかった〓 石原都知事が連日のように繰り返す差別的な言辞が、どういうわけかあまり批判的に取り上げられることのない現象とも共通する底流。
▽275 都議会でも気にくわない質問の主を罵倒する。「答えてるんだ、黙って聞け、この野郎。失礼じゃないか貴様」と絶叫。
▽287 「お前ら東京の顔をつぶしたな。そのうち酷い目にあわせてやる。覚えてろよ、この野郎」って言ったんだ。ほんとにそうだよ ▽292 夏季五輪招致 瑞穂町議会が招致決議案を否決。 「オリンピックが仮に決まって、その前に三多摩は(2013年東京国体が)あるわけでしょ。その時になってほえ面かかないようにしたほうがいいよ」 石原知事にとって、東京の何もかもは自分の私物である。逆らう者はすべて「頭がおかしい」「ばかども」にされてしまう。

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