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スプートニクの恋人<村上春樹>

スプートニクの恋人<村上春樹>講談社文庫 20100215

 主人公のすみれは小説家志望の22歳の女性だ。「僕」はすみれを愛し、性欲を抱いているが、すみれは「僕」(小学校教師)を性の対象としては見ない。すみれは17歳年上の女性ミュウを愛し、性欲をおぼえるが、ミュウはだれにも性欲を感じない人間である。
 お互いにお互いをとても大切と思いながら、どこかですれちがい交わらない。ミュウは「本当の自分」を「むこうの世界」に置いてきてしまった、と感じている。すみれもまた、「むこうの世界」に行ったまま姿を消してしまう。(「むこうの世界」とは、村上独特のパラレルワールドなのだろう)だれもが真っ暗な宇宙を永遠に飛んでいる人工衛星のように孤独である。
 すみれを失った「僕」は孤独にさいなまれる。万引きを繰り返す教え子の小学生に対して、大事な人を失った自分が孤独であることを一人語りのように語る。固く口を閉ざした子がわずかに心を開く。
 人間は孤独である。でもその孤独を自らの口で真摯に語るとき、孤独を共感するという形で孤独を乗り越える道がわずかに残されているのではないか--。そんなことを伝えようとしているように思えた。

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