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趣味は読書 <斎藤美奈子>

平凡社 20070515

批判のしかた、切れ味が鋭い。右翼の「新しい歴史教科書」から左翼の「金曜日」までバサリバサリと切りおとし、「いい人」の象徴のような大江健三郎や茨木のり子でさえも容赦しない。
たとえば、天声人語がべたぼめした茨木のり子の詩。

もはや/できあいの思想に寄りかかりたくない
もはや/できあいの宗教に寄りかかりたくない
……
もはや/いかなる権威にも寄りかかりたくない
ながく生きて/心底学んだのはそれぐらい……
寄りかかるとすれば
それは/椅子の背もたれだけ

「老人応援歌」というか現状肯定というか開き直りだ、と指摘し、「よりかからず」を「耳を貸さず」に交換したらとんでもない頑固ババーになってしまう、と切り捨てる。
「鉄道員」は、幽霊が育っていく怪談であり、娘の幽霊に日本中が心を洗われてさめざめと涙を流すの図こそがいちばんの怪談だ、と言う。
金曜日の「買ってはいけない」は、20年ほど前「食品公害」という呼称で添加物やら界面活性剤やらを告発した本がバシバシ出ていたのとそっくりだという。落ちぶれかけた左翼思想と疑似科学のドッキングだが、左翼的発想を忘れられてしまった今だからこそ、逆に新鮮で予想外に売れ、予想外のバッシングにもあった……と解説する。
-----メモ-----

▽229 新しい歴史教科書 それを批判する本は野暮ったくて、糾弾口調で……中身も杓子定規に批判……正しいけど、正しいだけ。正しい言説に人びとは飽きている。「つくる会」はそこにまんまと付け入った。……決まりきった「左翼的言説」への死亡宣告だったのではあるまいか。
▽293 世界がもし100人の村だったら チェーンメールをそのままコラムにした大バカ野郎な「天声人語」。その内容が本になったのがこれ。

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