12小説・エッセー– category –
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楡家の人びと第三部<北杜夫>
■楡家の人びと第三部<北杜夫>新潮文庫 20160518 戦争が進んでも、「不治の病だ」と称して病院の農場でのんびり過ごしていた米国(よねくに)にも赤紙が届く。職員のほとんどがいなくなり、医者も軍医として動員される。二代目院長の徹吉と龍子の長男... -
楡家の人びと第二部<北杜夫>
■楡家の人びと第二部<北杜夫>新潮文庫20160516 第2部を読んでいて、この物語には主人公がいないことに気づいた。広大な病院を築きあげた楡基一郎は、火災で焼失した病院再建を果たそうと郊外の土地の購入を決めたところで死んでしまった。狂言回しと思... -
楡家の人びと 第一部<北杜夫>
■楡家の人びと 第一部<北杜夫>新潮文庫 20160429 舞台は大正時代の東京郊外の私立の精神病院。院長の楡基一郎は、ふるさとの東北では平凡な名前だったが、東京に出て成功して巨大な病院の主となって名前を変え、政友会の代議士にもなった。西洋の宮... -
季刊誌kotoba 2016年冬号 中上健次生誕70年記念特集
■「季刊誌kotoba 2016年冬号 中上健次生誕70年記念特集」 集英社 20160123 中上健次といえば、ガルシア・マルケスを思わせる小説群と、反戦運動などへの積極的な関与、酒と暴力……という印象だが、そもそもどんな人だったのだろう。彼の生き様を知... -
旅する力 深夜特急ノート<沢木耕太郎>
■旅する力 深夜特急ノート<沢木耕太郎>新潮文庫 平成23年 20151223 小学生のとき、わずか20分のバスに乗ってまちに出るのが大冒険だった。駅の近くの本屋やプラモデル屋はわくわくする空間だった。中学のとき、千葉県の犬吠埼まで3人で旅したときは大... -
解放の文学 100冊のこだま<音谷健郎>
■解放の文学 100冊のこだま<音谷健郎> 解放出版社 20151103 被差別部落、大逆事件、プロレタリア文学、原爆、憲法、沖縄、在日朝鮮人の詩人、水俣病、東日本大震災……といったものをテーマにした本100冊を紹介している。 同和問題をめぐる文学といえば... -
枯木灘<中上健次>
■枯木灘<中上健次>河出文庫 20150626 入り組んだ血縁関係を読み解くだけでも大変で、読みやすい小説ではないが、いつかのめりこんだ。 主人公秋幸は、種違いの兄弟と腹違いの兄弟を何人ももつ。種違いの兄は12歳のときに自殺した。熊野の新宮という、... -
内灘夫人<五木寛之>
■内灘夫人<五木寛之>新潮文庫 20150318 主人公の霧子は学生だった1950年代、米軍の射撃訓練場建設に反対する石川県の内灘闘争に参加した。それから15年後、同志だったはずの夫は実業家になった。その裏切りに傷つき、夫婦間は冷え切り、霧子は... -
「いいね!」が社会を破壊する<楡周平>
■「いいね!」が社会を破壊する<楡周平>新潮社 20150403 筆者は、フィルム業界のガリバー・コダック社に勤めていた。超優良企業がつぶれる経緯の描写が興味深い。 コダックはフィルムをつくり、現像し、プリントするという各段階でもうけたから、利益率... -
わが六道の闇夜<水上勉>
■わが六道の闇夜<水上勉> 20141119 水上勉がみずからの青少年時代を振り返った自伝。 若狭の極貧の家に生まれた。電気代を払えず電柱を抜き取られ、昭和19年まで20年間、電気がなかった。風呂もない。便所は軒下のはだか桶だ。 10歳で京都の寺に出家さ... -
雁の寺・越前竹人形<水上勉>
■雁の寺<水上勉> 新潮文庫 舞台は、水上勉自身と思われる小僧がつとめる京都の禅寺だ。好色な住職のもとに、芸子出身の美しい女性がすまうようになる。寺には、水上本人がモデルと思われる若狭出身の根暗な小僧がいる。 チビで姿形も奇異な小僧の不幸な... -
ゼロの焦点<松本清張>
■ゼロの焦点<松本清張>20140815 久しぶりの再読。ヤセの断崖について書くために文庫本を買った。あらすじも忘れていた。 能登にいて読むと、土地の雰囲気がわかるからおもしろい。当時は鉄道が多かったが、ずいぶん廃線になってしまったこともわかる。羽... -
鶴のいた庭<堀田善衛>
■鶴のいた庭<堀田善衛> 20140718 富山県高岡市の伏木の取材に関連して読んだ短いエッセー。堀田善衛の本はずいぶん昔に読んだことがあったが、北陸の豪商の出身とは伏木を訪ねてはじめて知った。 堀田は伏木で最大の回船問屋「鶴屋」に生まれた。庭には... -
孤高の人(上下) <新田次郎>
■孤高の人(上下) <新田次郎>新潮文庫 20140711 夢枕獏の「神々の山嶺」に読後感が似ている。有名な藤木九三も藤沢という名で登場する。石鎚山の自然保護に一生を投じた峰雲行男さんは藤木を山の師としていた。もしかしたらこの本の主人公の加藤文太郎... -
ポエムに万歳!<小田嶋隆>
■ポエムに万歳!<小田嶋隆>新潮社 20140330 「ポエム化」の薄気味悪さを描く。小田島にしか書けないエッセーだ。 「ポエム」は詩とは似て異なる。ふわふわと浮いていて、何を言っているか分からないけど、なんとなく雰囲気だけをのせていて、けつの穴が... -
逆回りのお散歩<三崎亜記>
■逆回りのお散歩<三崎亜記>集英社 20131106 「となり町戦争」がおもしろかったから読んでみた。炎上や電突、ネット右翼…といったものをテーマに選び、日常に潜む不気味さを描いている。だが、「となり町」に比べると、ストーリーの先が読めてしまい、話... -
もうひとつのこの世 石牟礼道子の宇宙<渡辺京二>
■もうひとつのこの世 石牟礼道子の宇宙<渡辺京二> 弦書房 20131105 石牟礼作品の多くを清書し、食事の世話までしてきた筆者による石牟礼文学論。 「苦界浄土」は、公害の悲惨を描破したルポルタージュであるとか、患者を代弁して企業を告発した怨念の... -
私の遺言<佐藤愛子>
■私の遺言 <佐藤愛子>新潮文庫 20130709 筆者の兄は佐藤ハチロー、父は佐藤紅緑。 北海道に山荘を建てて以来、奇怪な現象におそわれつづける。霊能者に相談し、原因をさぐると、さまざまな因縁がからみ、佐藤家の先祖の問題や、虐殺されたアイヌの... -
1Q84(1~6)<村上春樹>
■1Q84(1,2)<村上春樹>新潮文庫 20150520 予備校講師をしながら小説家をめざす天吾と、マーシャルアーツのインストラクターをしながら、女性を虐待する男を殺す青豆という2人の主人公の話が交互につづられる。 どこにでもある日常の1984年が... -
花石物語<井上ひさし>
■花石物語<井上ひさし> 文春文庫 20130515 「世界の中の柳田国男」という評論集にこの本が出てきた。柳田は遠野物語できれいな話ばかりを集めていて、土のにおいのする下ネタは意識的に排除している。それを皮肉る内容が含まれている、と書いてあった... -
神去なあなあ日常<三浦しをん>
■神去なあなあ日常<三浦しをん>徳間書店 20130401 高校を卒業してフリーターでもしようと思っていた「俺」が、母親の陰謀で三重県の山奥の村の林業会社につとめることになる。携帯も届かない。下草刈りをしても何をしてもうまくいかない。ダニやヒルに... -
小田嶋隆のコラム道
■小田嶋隆のコラム道<小田嶋隆>20120923 コラムの書き方を伝授するノウハウ本の体裁をとりながら、それじたいがコラムになっている。独特の視点がおもしろい。中身になにが書いてあったのかは覚えていないのだけど、おもしろかったという後味が残る。 奇... -
風の影LA SOMBRA DEL VIENTO カルロス・ルイス・サフォン
■風の影(LA SOMBRA DEL VIENTO)カルロス・ルイス・サフォン 集英社文庫 20120826 最初はスペイン語で読んだ。わからない単語だらけだったが、1日20-30ページずつ辞書も使わず500ページを読み終えた。ストーリー構成がしっかりしているから... -
虹の彼方に 池澤夏樹
■虹の彼方に 池澤夏樹 講談社文庫 20120629 鶴見俊輔の対談で、「外の目」「旅人の目」の視点からつづった本だとと書いてあって興味をもった。 中央の官僚は、日本全体を分割して統治しようと発想する。だが「民」にとってはすべては自分が住む「こ... -
青春の門第7部挑戦編 五木寛之
■青春の門 第7部 挑戦編 五木寛之 講談社文庫 20120415 第6部の再起編から13年後の1993年に発表された作品がようやく文庫化された。偶然書店で見つけた。2002年に第6部まで読んだから、私にとっても10年ぶりの続編だ。 興奮しながら読... -
精霊たちの家<イサベル・アジェンデ>
■精霊たちの家<イサベル・アジェンデ>国書刊行会 20111120 作者は、1973年のチリのクーデターで死んだアジェンデ大統領の姪。 19世紀からクーデターにいたる100年間の歴史を、ひとつの家族を通して描く。超常現象が次々に起きる物語の展開はガ... -
男の子の躾け方<クラウス・シュペネマン>
■男の子の躾け方<クラウス・シュペネマン> 20111111 筆者は、佐藤優の同志社の師で日本人女性と結婚し3人の子を育てたドイツ人だ。筆者と佐藤はいったいどこで響き合うのか? という視点で読み進んだ。 学校秀才ではなく、創造性のあるアタマが必... -
走ることについて語るときに僕の語ること<村上春樹>
■走ることについて語るときに僕の語ること<村上春樹>文春文庫 20111025 村上が珍しく自らのことを語る本。 ジャズバーを経営していたが、「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」で注目され、小説に専念するために1981年に廃業した。そ... -
族長の秋 <ガルシア=マルケス>
■族長の秋 <ガルシア=マルケス> 集英社文庫 20110922 過去にとび、今にとび、また過去にとび……時間軸がめちゃくちゃ。 独裁をつづけた大統領が死んだと思われ、禿鷹が出入りする荒れ果てた大統領官邸に人々はおそるおそる踏み込む。それでも20... -
百年の孤独
■百年の孤独<G・ガルシア=マルケス、鼓直訳> 新潮社 20110829 マコンドという密林のムラが市に発展し、蜃気楼のように記憶からも消えてしまうまでの100年間を、ムラを拓いたブエンディア一族を通してたどる物語。 マコンドは、ホセ・アルカデ...