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逆回りのお散歩<三崎亜記>

■逆回りのお散歩<三崎亜記>集英社 20131106
「となり町戦争」がおもしろかったから読んでみた。炎上や電突、ネット右翼…といったものをテーマに選び、日常に潜む不気味さを描いている。だが、「となり町」に比べると、ストーリーの先が読めてしまい、話の展開もいまひとつ盛り上がりに欠けた。
主人公の聡美は、政治家の愛人をしている。高校時代に理想を語り合った和人と久しぶりに出会った。和人は、自治体合併に反対する活動に参加している。
ところが、反対運動はネット内だけで盛り上がり、リアルな社会には出てこない。合併相手の町を差別する落書き事件を景気に、合併反対者=「差別主義者」というレッテルがはられてしまったのだ。合併に異議を唱えるだけで、友人からも白い目で見られる。不気味な空気がただよっている。
さらに、反対派がはじめて街頭に出てきたとき、「主義者」の街宣車が同様の主張をがなりたてることで、両者が同じだという印象になってしまった。
実は落書き事件も、街宣車も、合併を推進する側の謀略だった。
そして反対派の掲示板は「室長」の裏切りによって賛成の宣伝の場になってしまう。完膚なきまでに反対派はつぶされる。
和人を巡るとあるどんでん返しがあるのだが、それは最初から予想した通りだった。
誠実だと思った見合い相手は、政治家の愛人に誘導されて、聡美のすべてをわかったうえで見合いを申し込んでいたようだ。和人もまた聡美の知らないところでうごめいていた。聡美は、仏様の手のひらのなかにいた孫悟空のようだ。
真実を求めようとしない者は被害者であり、加害者でもあり得る、と聡美は知る。ではどうすればよいのか。自分の「根」をとりもどすには、傍観者をやめて真実を求めるしかないという。
いまひとつ、パッとしない読後感だった。

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