04民俗・食– category –
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土と人間への手紙 <稲葉峯雄>
■土と人間への手紙 <稲葉峯雄> 家の光協会 201001 冒頭の「おっかあよ今もんたぞ」という詩は、想い出のなかにある「おっかあ」の姿を細やかに、愛情と哀しさを込めて描く。この本に載っている農協生活指導員への100通の手紙は、愛媛の... -
出雲神話の誕生 <鳥越憲三郎>
講談社学術文庫 2010/01/20 大和の中央集権の物語をつくるために古事記の3分の1を出雲神話が占めることになったが、古墳の規模の小ささを見ても、吉備にもはるかに及ばぬ弱小国にすぎなかった--という立場に立っている。後に荒神谷遺跡が発見され... -
武士道 <新渡戸稲造、矢内原忠雄訳>
岩波文庫 20091217 戦争中、この本が軍人たちの心の支えになったと聞いた。右翼的な本だと思って読んでいなかったが、よくよく見たら著者はキリスト者として有名な新渡戸稲造だ。新渡戸は平和主義であるクエーカー教徒だ。右翼思想とは正反対に位置す... -
庶民の発見〈宮本常一〉
講談社学術文庫 20090907 ▽13 昭和19年、民俗採集の旅行ができなくなったので、奈良県の田舎の中学につとめることに。生徒たちが敗戦の日に失望しないように、戦争の状況についてよくはなし、戦場における陰惨な姿について毎時間はなしてきかせた... -
バーナードリーチ日本絵日記 <バーナード・リーチ>
講談社学術文庫 20090517 昭和9年以来19年ぶりに昭和28年2月に来日する。29年の11月末に帰国するまでの1年10カ月の日記などをまとめた。(67歳)だった。 〓年の記録。柳宗悦 濱田〓 河井寛次郎 武者小路実篤らのスケッチ 志... -
隠岐共和国ふたたび 「隠岐学セミナー」での出会い <牧尾実>
論創社 20090502 隠岐の島で隠岐堂書店という本屋を営む人が書いた。 幕末に郡代を追い出して80日間だけできた「コミューン」の歴史を再検証し、単なる恥ずかしい一揆だと思っていたものが実は歴史上先進的な取り組みだったことを知る。 歴史をちがう角... -
四国八十八カ所 <石川文洋>
岩波新書 20080502 とくに文章がうまいわけではない。写真がすごいわけでもない。でも引き込まれ、共感してしまうのは筆者の素朴なやさしさがにじみでているからだろう。 懐かしい風景。懐かしい宿。花やチョウの息吹に小さな感動を覚え、お接待に戸惑い... -
大森哀愁浪漫 芋代官 井戸平左衛門 <小笠原秀昱>
20090502 日本中で餓死が相次いだ享保の大飢饉の前後、幕府の天領である石見国の銀山領に赴任した60歳の代官・井戸平左衛門は、役人の汚職を厳しく禁じ、地主などへの借金返済を5年間免除し、共同耕作によって上流と下流の争いを治めた。 いくら努力し... -
「出雲」という思想–近代日本の抹殺された神々 <原武史>
講談社学術文庫 20090421 出雲の神であるオオクニヌシは、スサノオの系統を継ぎ、アマテラスを奉じる伊勢と対称的な存在だった。本居宣長をはじめとする国学のなかでも、出雲の位置づけをめぐって論争が交わされた。オオクニヌシの国ゆずりは、「伊勢」に... -
今、出雲がおもしろい <藤岡大拙>
NPO法人出雲学研究所 20090414 出雲は古墳の規模は小さく、銅剣や銅鐸のような青銅器はほとんど出土しなかった。津田左右吉は、出雲神話は大和朝廷によって政治的に創作されたものと主張し、梅原猛も出雲の繁栄を否定し、大和朝廷にまつろわぬ勢力... -
実践の民俗学 現代日本の中山間地域問題と「農村伝承」 <山下裕作>
農文協 20080308 ワークショップやKJ法といった型どおりの手法で地域のニーズを把握し、成功事例を分析して抽象的なモデルをつくり、それをあらゆる地域にあてはめようという、現在の主流の官学アカデミズム(農学社系)を筆者は批判する。その問題... -
遍路と巡礼の社会学 <佐藤久光>
人文書院 20081224 四国遍路と西国、坂東、秩父の巡礼の歴史を紹介し、アンケートなどをつかって比較分析している。 アンケートの結果は社会学だけあって、あたりまえ、と言えば、あたりまえの結論がならんでいる。だからどうしたの? という理由... -
先祖の話 <柳田國男>
ちくま文庫 柳田國男全集13 終戦直前の昭和20年春に書かれた。無数の若者が死んでいくなか、古代からの日本人が死者をどう弔ってきたのか、どう弔えばいいのか、先祖と死者と「私」のかかわり方をつづる。 大晦日から正月にかけては、実は先祖の... -
旅の民俗学 <宮本常一ほか>
河出書房新社 20081021 旅を巡る対談集。歴史という縦軸と空間という横軸を縦横につかって、風景の意味や変遷を読み解いていく。アクロバティックでわくわくさせられると同時に、高度経済成長を経て日本人が失ってしまったものの大きさに愕然とさせら... -
世界を変えた野菜読本 <シルヴィア・ジョンソン>
晶文社 20080806 トマトがないころ、イタリア人はクリームやチーズや野菜で作ったソースをパスタにかけていた。麻婆豆腐などの四川料理も、トウガラシがなかったから山椒の辛みしかなかった。インド料理も、黒胡椒やクミン、コリアンダー、生姜で辛みをだ... -
炉辺夜話 日本人のくらしと文化 <宮本常一>
20080709 河出書房新社 他者に依存したり卑屈になったりするのではなく、主体性をもち自立したヒト・コミュニティが外の文化を積極的に吸収することによって、文明・文化は進歩し、コミュニティは発展する。そうした取り組みのつみかさねが「伝統」を形づ... -
調査されるという迷惑 <宮本常一 安渓遊地>
みずのわ出版 200807 安渓さんという山口県立大の先生は、伊谷純一郎や宮本常一の薫陶をうけた人類学者で、アフリカや西表島でフィールドワークをしてきた。「バカセならいっぱいくるぞ」という痛烈な言葉でむかえられ、いったいその調査は地元に役立つの... -
生活環境主義でいこう <嘉田由紀子語り 古谷桂信構成>
20080715 岩波ジュニア新書 嘉田氏は新幹線の新駅着工をとめ、ダムの建設に異を唱える話題の滋賀県知事である。この本を読むと、彼女はまさに、フィールドワーカーとして滋賀県の隅々まで歩いた滋賀県版の宮本常一であることがよくわかる。 埼玉の農家に... -
ジャガイモのきた道–文明・飢饉・戦争 <山本紀夫>
岩波新書 20080603 穀物じゃないと文明はできない、と言われてきた。麦や米などの穀物は貯蔵できるから、富の蓄積になる。多くの人口も養える。それに対して芋は、単位面積あたりの収穫量は多いけど、水分が多いから貯蔵がきかない。だから、文明の発祥に... -
久妙寺に生きて <永井民枝>
20080609 古くから伝わる行事や言い伝えは、ムラで生きていくための知恵にあふれている。たとえば、川を神聖なものと考えて、小便をしたり汚いものを流すのは昔はタブーだった。今はそういうタブーがなくなり、ゴミだらけになった。田植えがはじまって「お... -
冷蔵庫で食品を腐らす日本人 <魚柄仁之助>
朝日新書 20080130 あまったリンゴやらご飯やら野菜やらを干して保存食にする……といった筆者の知恵はすごい。独身で自炊しているころに知っていたら、もっと食生活は安く豊かになったことだろう。 「食」をめぐる観察も興味深い。 たとえば、かつて塩っ辛... -
悲しき熱帯Ⅱ <レヴィ=ストロース>
レヴィ=ストロース 中公クラシックス 200705 ブラジルの先住民族のフィールドワークを丹念に記している。 単なる「観察」ではなく、インディオの世界に心から共感していることが、あたたかみのある筆致からよくわかる。 その共感があるからこそ、欧米... -
悲しき熱帯Ⅰ <レヴィ=ストロース>
中公クラシックス 200705 文化人類学のおもしろさ。常識が常識でないことがわかる。人間が人間であるべき「本性」はどこにあるのか、を知る。 戦前のブラジルへの豪華客船の旅かと思えば、ドイツ占領下の劣悪な航海へ、インドの労働者の生活風景かと思... -
世界像革命-家族人類学の挑戦 <エマニュエル=トッド>
藤原書店 20061221 フランスをはじめとする「平等主義核家族」、イギリスなどの「絶対核家族」、東欧からアジアへと広く分布する「共同体家族」、ドイツや日本などの「直系家族」。 親子関係と兄弟間の相続のありかたによって分類し、それぞ... -
コーヒーと南北問題 「キリマンジャロ」のフードシステム <辻村英之>
日本経済評論社 20061210 4200円という値段的ボリュームがあり、しかも横書きの論文集といえば、ふつうなら読もうと思わないのだが、最初の数ページの理論部分を乗り越えたらあとはスイスイと読めた。 論文集なのに、対象のタンザニアの村人への共感と... -
風の祈り 四国遍路とボランタリズム <藤沢真理>
創風社出版 20061118 お遍路をしていると、しばしば「お接待」される。ミカンだったり、お菓子だったり、現金だったり、うどんだったり……。気のせいか、遍路道沿いの人々は外の人間に対して愛想がよくて、やさしい気がする。 ボランティアはキリスト教... -
旅する巨人宮本常一 にっぽんの記憶 <読売新聞西部本社編>
みずのわ出版 060803 宮本常一が残した膨大な写真をもとに、その写真の舞台を再訪し、その写真に載っていた人や、ゆかりの人々の話を記者が聴いてまわった記録だ。 新聞の文章だけあって舌足らずな表現や、体言止め、情景描写が定型的すぎるところなどは... -
寝ながら学べる構造主義 <内田樹>
文春新書 20060603 ちょっと読んではあきらめ、読んではあきらめを繰り返していた「構造主義」だが、「寝ながら」という軽さと、内田樹が書いたということで、もう一度だけ試してみることにした。 構造主義の基本の基本をわかりやすく説明してくれてい... -
借家と持ち家の文学史 <西川祐子>
三省堂 20050124 「江戸川乱歩シリーズ」と吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」を読んだとき、まったくジャンルの異なる作品なのに、どこか似ているなあと思った。太宰治と島崎藤村、あるいは志賀直哉の描く「家」にも同じにおいがした。この本を読ん... -
住まなきゃわからない沖縄 <仲村清司>
新潮文庫 200501 本州から沖縄に引っ越した人がつづった、かるーい沖縄文化論。 さらりと読み流すのにはおもしろい。編集者という仕事をやめて沖縄に渡り、いかに最初は食べていくのがタイヘンだったか、といった部分には個人的に興味をもった。へーぇ...