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バッド・ドリーム 色恋村選挙戦狂騒曲<落合誓子>

■バッド・ドリーム 村長候補はイヌ? 色恋村選挙戦狂騒曲<落合誓子>自然食通信社 20111114
 能登半島の珠洲原発計画への反対運動を担ってきたルポライターの筆者が、実際に体験した選挙戦のエピソードをもとにつくった小説。
 小さな村に巨大産廃処分場をつくる計画が浮上。開発側が選管ぐるみで不正選挙をしたり、視察の名のもとに無料接待旅行を催したり、怪文書をまいたり……ほんまにこんなことあったんかいな、という内容だが、その大部分は実際にあったことらしい。
 開発側の市長候補をイヌにするという配役の設定が滑稽でおもしろい。非現実的なのだけど、そのぐらい現実にはあってはならないことが、実際に起きたのだ。
 他人同士が親子の杯を交わして、以来、親子として子はその親の家に出入りするし、親はその子の後見人になるという「烏帽子子」という習慣。真宗王国ならではの報恩講などの行事……そういった文化や伝統の描写も興味深い。

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▽18 視察は形だけ。農家の仕事が一段落した「秋上がりの慰安旅行」として利用するグループがではじめる。団体旅行を唯一の楽しみと考える、田舎の人々をてなづける効果ある方法かも。
▽47 色恋村には昔から「一向一揆」の残党が開いた村という言い伝えがあった。戦国時代、一向宗が国司を追い出して作った百姓の持ちたる国があった。……敗れてやがて武士の支配に組みしかれ江戸時代に……
▽50 山田住職の曾祖父は自由民権運動にかかわり……山田自身も信仰者として学者として、現実の重さにぶつかった時に生身の人間としてどう生きるか、きつい問いを突きつけられつつ試されていると感じてた。
▽56 「俺らを敵に回したら、こそ泥でも、ひき逃げでも絶対に犯人なんか挙がらんにょうになるだけや。警察が俺らを怖がらな、いかんのや、わかったか」自分たちの生活を中心に据えて、国家や警察という権威さえも値踏みしてしまうしたたかさ、腹の据わった感覚はいったいどこから出て来るのだろう。
▽58 推進派の議員
▽72 他人同士が親子の杯を交わして、以来、親子として子はその親の家に出入りするし、親はその子の後見人になる。その関係は一生続いて……「烏帽子子」
▽78 寺での寄り合いの座席ひとつとっても、座る場所が家柄によって1人ひとり決まっていて、遅れて来る人があっても、その場所は序列どおり、ちゃんと空いている。……江戸時代の基準がそのまま化石のように生きているらしい(〓〓今でも? 変化は?)
その序列の頂点に寺の住職。寺請け制度を作り、一向一揆という火種を上手になだめて、うまく取り込みながら、統治に利用してきた江戸時代の政策が現在まで生きているのである。宗祖親鸞の教えは矮小化されて、封建時代を生き抜く知恵と化してしまった。〓
▽83 脅迫文書、虫の死骸を封筒で送りつける。
▽97 ミニ集会の会場を確保できない。公民館はいち早く、どちら側にも貸さないという館長たちの決議を発表してしまった。(推進側は)地縁血縁と金で票を集めるからミニ集会など不要なのだ。
▽100 「反対すれば補償金が上がる。でも今反対したら本当に中止されてしまう。それじゃ、元も子もないでないかい」
「どうしても反対をやめんということなら、推進派の全戸が門徒をやめたらあんたらどうされますかね」
▽104 ミニ集会に寺の本堂を貸して門徒から突き上げられる。……過去を暴いて、反対をやめさせる
▽106
▽126 「過疎は私たちが作ったものでしょうか。私たちの努力が足りなかったからでしょうか」
▽133 選挙カーを尾行して、握手する人をカメラで撮影する。その家にその晩から、親戚・町内会長・上司など一番効果がある人から脅しが入る。
▽142 報道機関の名前を偽って電話し、有権者が何人で、誰が誰に入れるか……と聞く。……新聞の調査のはずなのに、関西なまりだったり、背後に子どもの泣き声がしたり……。
▽157 都市の問題も村から人が消えるその深刻さも、きっとどこかで繋がっている。ゴミ捨て場の問題を辿っていったらきっと同じところに行き着くに違いない。
▽190 「反対派に恐ろしい過激派が潜んでいた」それだけでも使われ方しだいでは運動そのものを揺さぶる事件になりかねない。一般の村民を巻き込むことはもうできなくなる。関係者の過去を洗い、弱みを見つけて作戦をたてる。権力のどす黒い暗闇に……

▽193 (銭湯を経営する)山本は、村が「健康ランド」をつくって経営がたちゆかなくなったら、裁判をふっかけてでも補償金をせしめてやろうと考えていた。……いばりながらスナックに業種転換して、反対派の根城になるような商売にしてやろう……(〓仕出し屋さん?)

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