01思想・人権・人間論– category –
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こう直さなければ裁判員裁判は空洞になる<五十嵐二葉>
■こう直さなければ裁判員裁判は空洞になる<五十嵐二葉>現代人文社 20160825 裁判員制度は、近代国家で唯一市民参加司法をもたない日本に対するアメリカの財界からの要求に応じてできたという。 アメリカの陪審員のようなものだと思っていたが、実際... -
明恵 夢を生きる <河合隼雄>
■明恵 夢を生きる<河合隼雄>講談社α文庫 20160811 明恵は、華厳宗の中興の祖で、南方熊楠の世界観にも影響を与えた。19歳から亡くなる1年前まで夢を記録しつづけたことでも知られる。生も死もすべてのものが一体となっていると考える華厳経の世界と、... -
対称性人類学-中沢新一
■対称性人類学<中沢新一>講談社選書メチエ 20160717 人類の思考の様式は、1万年前にはじまった新石器革命の時期にすべて獲得されていた。それが「野生の思考」だった。 第一次の「形而上学革命」である一神教は、こうした「野生の思考」を抑圧すること... -
日記をつづるということ 国民教育装置とその逸脱-西川祐子
■日記をつづるということ 国民教育装置とその逸脱<西川祐子>吉川弘文館 20160711 日記を史料として用いるためには、日記の通読「つづけ読み」と同時に、事実確認のために他の日記の併読「ならべ読み」をする必要がある。「つづけ読み」と「ならべ読... -
久野収集Ⅱ 市民主義者として
■久野収集Ⅱ 市民主義者として<佐高信編>岩波書店 20160709 1960年代から70年代の論文が多く、さすがにわかりにくい部分もあった。でも、国際連合とカント、さらにエラスムスといった思想家とのつながりなど、古い思想が現代の組織や運動にどうつなが... -
むらの社会を研究する<日本村落研究学会 鳥越皓之編>
■むらの社会を研究する<日本村落研究学会 鳥越皓之編>農文協 日本におけるむらの研究の流れや、研究の方法、現代の課題などを網羅していてわかりやすい。本格的にむら研究をはじめる人には必読の書だろう。私のような素人が読んでもおもしろかった。 ... -
熊楠の星の時間<中沢新一>
■熊楠の星の時間<中沢新一>講談社 20160602 思考が真の天才の火花を散らし、人生が星の輝きに包れる「星の時間」は、熊楠ほどの天才でも、那智の山ですごした数カ月だけだった。この時期に、現代科学や哲学をも凌駕する思想が手紙の形で表現されたと... -
いのちの場所<内山節>
■いのちの場所<内山節>岩波書店 20160403 いのち、は、個人のものなのか。命が個人のなかにとどまり、自分の命だけが至上のものとしたら、その喪失は世界のすべてを失うことを意味する。だから、死がとてもなくおそろしいものとなる。 だが、そうし... -
街場の文体論<内田樹>
■街場の文体論<内田樹>文春文庫 20160404 神戸女学院での最後の年のクリエイティブ・ライティングの講義のまとめ。 よい文章とは? あたりまえでないこと。斬新なこと。でも斬新だといわれたシュールレアリズムも最初の宣言はすばらしいが、あとは... -
旅と移動 鶴見俊輔コレクション
■旅と移動 鶴見俊輔コレクション<鶴見俊輔>河出文庫 時代の主流ではない部分、周縁部分にこそ、次の時代を担う大切なものがある。そんな存在を丹念にひろい、その意義を解明している。 中浜万次郎は、14歳でアメリカの捕鯨船に助けられ、船長に育て... -
街場の憂国会議<内田樹>
■街場の憂国会議<内田樹> 晶文社20160423 武道家にとって「驚かされること」は禁忌。「驚かされない」ためのもっとも有効な方法は「こまめに驚く」こと。「風の音にもおどろく」。ああその通りだと思った。日ごろのニュースにこまめに驚いておくこ... -
鶴見俊輔集2 先行者たち
■鶴見俊輔集2 先行者たち 筑摩書房1991年 20160306 プラグマティズムとは、実用主義とか現実主義とか、その場その場で対処する考え方という程度にしか思っていなかった。 デューイについての文章を読んで、場当たり的に思えたプラグマティズムの歴... -
南方熊楠の謎 鶴見和子との対話<松居竜五編>
鶴見は戦後、「山びこ学校」を通して「生活綴方」に共感し、自己史をつづることの重要性を説くようになる。このころの鶴見は、人々の生の声をどのように記録し、学問活動につなげるかを追究していた。対象を外から観察する近代科学のような社会学から、... -
増補 共同体の基礎理論 内山節著作集
■増補 共同体の基礎理論 内山節著作集15<内山節>農文協201 共同体は1970年代までは、封建時代の遺物と考えられた。 ところが共同体が消え、自立した個人が社会に参加することでよりよき社会が生まれる、という希望は実現しなかった。個人がバラバラ... -
戦後日本の大衆文化史<鶴見俊輔>
■戦後日本の大衆文化史<鶴見俊輔>岩波現代文庫2001(1984) 20160208 1980年頃につくられた同時代史。柳田国男の「明治大正世相史篇」の戦後版だ。その時代にそこに住む人の目から、戦後という時代の変遷を描く。同時代を客観的に描くことは難しいが、... -
かくれ佛教<鶴見俊輔>
■かくれ佛教<鶴見俊輔>ダイヤモンド社2010 20160205 キリスト教の「あなたは間違っている」という態度は、「罪なき者、この女を打て」と言ったイエスの時代にはなかった。一神教的な不寛容さは、キリスト教が国家宗教になってからの性格ではないかと鶴... -
思い出袋<鶴見俊輔>
■思い出袋<鶴見俊輔>岩波新書2010 20160203 ジョン万次郎や高杉晋作、坂本龍馬ら、幕末に活躍した人々は、時代を大きくとらえる力を持っていた。日露戦争で国民の反発を押し切ってでも講和できたのは、この世代の人々の冷静な判断力のおかげだった。 教... -
現代思想 総特集 鶴見俊輔 2015年10月臨時増刊号
■現代思想 総特集 鶴見俊輔 2015年10月臨時増刊号 青土社 鶴見は戦争中、敗戦を確信し、人を殺す場面に出くわしたら自殺しようと覚悟していた。だけど「戦争反対」とは言えなかった。鶴見と同様、先行きが見えていた知識人はいたが行動には移せなかっ... -
森のバロック<中沢新一>
■森のバロック<中沢新一>せりか書房1992年 20160119 南方熊楠の生涯のうちで「もっとも深く体験されたもの」だけを注意深く取り出そうとした、という。 粘菌研究者としての熊楠、民俗学者としての熊楠、奇行を繰り返した熊楠……それぞれを断片的に紹介す... -
日本文化の形成 中<宮本常一>
■日本文化の形成 中<宮本常一>ちくま学芸文庫 20151216 筆者はみずから農漁業の経験があるから、古い時代の道具を見て、それがどう使われるか即座に理解できる。生業の伝統を受け継いでいる人だから、歴史への想像力が生まれる。生業から切り離されて... -
サバイバル宗教論<佐藤優>
■サバイバル宗教論<佐藤優>文春新書 20151201 相国寺での僧侶を対象にした講演をまとめた。 宗教やさまざまな思想がどんな流れ・系譜の中で生まれてきたか、わかりやすく説明されている。 フランス革命以後の世界は基本的に理性を信頼し、合理的な思考... -
解放の文学 100冊のこだま<音谷健郎>
■解放の文学 100冊のこだま<音谷健郎> 解放出版社 20151103 被差別部落、大逆事件、プロレタリア文学、原爆、憲法、沖縄、在日朝鮮人の詩人、水俣病、東日本大震災……といったものをテーマにした本100冊を紹介している。 同和問題をめぐる文学といえば... -
南方熊楠 地球志向の比較学<鶴見和子>
■南方熊楠 地球志向の比較学<鶴見和子> 講談社学術文庫 20150609 □南方熊楠の世界 南方は文系・理系にとらわれない巨人だ。ヨーロッパの学問のまねではなく、ヨーロッパと日本とアジアの学問と格闘するなかで、大乗仏教を基礎に置いたみずからの理論... -
ハンナ・アーレント「戦争の世紀」を生きた政治哲学者 <矢野久美子>
■ハンナ・アーレント「戦争の世紀」を生きた政治哲学者 <矢野久美子>中公新書 201504 ユダヤ人として生まれ、大学時代に妻子もちの師のハイデガーと恋愛をする。 シオニストの活動に参加してナチスに逮捕され、パリへ脱出すると、今度は「ドイツ人」と... -
草の根グローバリゼーション 世界遺産棚田村の文化実践と生活戦略<清水展>
■草の根グローバリゼーション 世界遺産棚田村の文化実践と生活戦略<清水展>京都大学学術出版会 20150202 舞台はフィリピンの世界遺産の棚田の村。棚田観光の拠点のバナウエ町からさらに奥にあるフンドゥアン郡ハパオ村という。ルソン島の山奥の辺境... -
ぼくの住まい論<内田樹>
■ぼくの住まい論<内田樹>新潮文庫 20150404 「宴会のできる武家屋敷」として著者が神戸に建てた、住居兼道場。パブリックとプライベートのスペースを融合させた。どんな工夫があるのだろう、と興味をもった。 結論からいうと、どんな人をも家に受け入れ... -
作業中)哲学の使い方<鷲田清一>
■哲学の使い方<鷲田清一>岩波新書 201412 ▽性急に答えを出そうとするのではなくて、答えがまだでていないという無呼吸の状態にできるだけ長く持ちこたえられるような知的耐性を身につけること。…問うなかで、問いが解消するどころか、逆に増殖してゆく... -
草の根 農健懇500回特集号
■草の根 農健懇500回特集号 2015/01/14 稲葉峯雄先生を中心に、愛媛県で1967年から月1回開かれていた農村健康問題懇談会が2013年、500回で幕を閉じた。 10人程度の小さな集まりだ。愛媛にいた当時、何十年と継続していることには驚いたが、それがどれ... -
柳田国男入門<鶴見太郎>
■柳田国男入門<鶴見太郎> 角川選書 20141123 民俗学は社会に役立つのか。 「実践の民俗学」「介護民俗学」という本では、その具体例が示されていた。でも、全体としての民俗学は苔むしたイメージに覆われている。それを転換する方法はあるのだろうか、... -
古代から来た未来人 折口信夫 <中沢新一>
■古代から来た未来人 折口信夫 <中沢新一> ちくまプリマー新書 20140904 折口は神道などを論じた、超保守的、あるいは反動的な文学者というイメージだった。だが、そうではないという。折口は「古代人」の心を知ろうとした。古代の心を知ること...