01思想・人権・人間論– category –
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仏教と民俗 仏教民俗学入門<五来重>
■仏教と民俗 仏教民俗学入門<五来重>角川ソフィア文庫 20201006 お盆やお彼岸、葬式や年忌、位牌といった習俗は仏教だと思われているが、実は本来の仏教ではなく、仏教伝来以前の日本古来の在来宗教の名残だという。 日本の在来宗教は先祖の霊に対す... -
路上の映像論 うた・近代・辺境<西世賢寿>
■路上の映像論 うた・近代・辺境<西世賢寿>現代書館 筆者はNHKの元ディレクター。近現代の時代のなかで滅びつつある、精神文化のなかに地下水脈のように流れてぉた口承文芸や語り物芸能の世界を「語り物としてのドキュメンタリー」という形にしてきた... -
空海の思想について<梅原猛>
■空海の思想について<梅原猛>講談社学術文庫20200828 空海の宗教は明治以降、呪術的で前近代的なものとされてインテリ層に疎んじられた。親鸞や日連、道元がファンを獲得したのと対照的だった。歴史教科書でも、大師の宗教は貴族仏教・加持祈祷とされ... -
死の民俗学 日本人の死生観と葬送儀礼<山折哲雄>
■岩波現代文庫20200627Ⅰ 死と民俗 遺骨崇拝の源流 インドは火葬するが骨は川に流す。アメリカ人は遺体をきれいに整えて本土に送るなど、肉体的側面を重視する。エジプトのミイラ文化につながる。それに対して日本は、遺骨を尊重する。 だが万葉集を見... -
ふりまわされない自分をつくる「わがまま」の練習<谷地森久美子>
■角川書店 20200609 自分に自信が持てず人に振りまわされ、生きづらさや自己否定におちいってしまう人は「わがままな自分」になることで新しい人生を生きられるようになる。そのためのカギのひとつが自分と他人を分ける輪郭「心の境界線」という。 幼少... -
四国遍路の寺 下<五来重>角川ソフィア文庫 20200413(抜粋)
▽戦国から安土桃山にかけては遍路どころではないが、江戸時代になって盛んに。江戸末になるとふたたび衰えて、明治初めぐらいには88の半分ぐらいは無住だった。▽熊野の信仰は海を通して全国に広がった。熊野信仰が非常に強いのは東北地方や隠岐の島。鎌倉... -
四国遍路の寺 上<五来重>角川ソフィア文庫 20200421
納経所が霊場なのではない。八十八カ所をぐるりとまわる修行だけでなく、それぞれの札所はもとは独立した修行の場だった。その痕跡が残っているのが行場だった奥の院であり、そこををめぐらないと本来の遍路の意味はわからない、という。 お遍路をして... -
「お迎え」されて人は逝く 終末期医療と看取りのいま<奥野滋子>
■ポプラ新書 20200130 妻を看取った経験を思いだし、何度も涙で中断させられた。「お迎え」の重要さについては岡部健医師の本で読んでいた。筆者は緩和ケアの医者であるとともに、死生学を学んだ立場から、「お迎え」をより積極的に位置づけ、「看取り」... -
原民喜 死と愛と孤独の肖像<梯久美子>
■岩波新書 20191225 こんなにも繊細で、弱く、貧しく、悲しみに満ちた人だったとは。 裕福な家に生まれたが、小学校1年で弟、5年で51歳の父、高等科1年で21歳の次姉を亡くし、内向きな性格になった。 6歳下の妻貞恵は、小柄で丸顔で愛くる... -
さらば、政治よ 旅の仲間へ<渡辺京二>
■晶文社 20191216 安倍政権の進める有事法制などの動きを進歩的な人は「いつか来た道」と評することが多い。それに対して「日本が戦前のナショナリズムに回帰しているわけがない」「左翼は思考停止している」と批判する。安保闘争などで運動に参加した... -
本を読めなくなった人のための読書論<若松英輔>
■亜紀書房 20191107 この1年ちょっと、特定のテーマ以外の活字を読むことができていない。 世界から色がなくなり、たいていの本は無味乾燥の灰色に感じてしまう。でも、若松や神谷美恵子、内山節らの本は、なぜか彩りを感じる。死者の世界とつながっ... -
黒い海の記憶 いま死者の語りを聞くこと<山形孝夫>
■岩波書店 20191214 東日本大震災後の「花は咲く」、ちょっと前の「千の風になって」は個人的には好きになれない。筆者はこの2つを「死者がうたう歌」と位置づける。 戦前の日本社会は、仏壇を通して、身近な「生きている死者」に祈っていた。いま、... -
星と祭 上下<井上靖>
■角川書店20191208 主人公は、前妻との間にできた17歳の娘みはるを琵琶湖の水難事故で亡くした。大学生の男友達とともに遺体はあがらなかった。 夜中に何度も目覚め、目覚めるたびに心は悲しみで冷たくなる。何をしても張り合いを感じない。友だちづき... -
人と思想 神谷美恵子<江尻美穂子>
■清水書院 201910 神谷美恵子本人が最後に書いた「遍歴」の方が心に迫る。でも本人が書いていない部分がいくつかあって興味深かった。 「生きがいについて」では、「ある日本女性の手記」として記している変革体験は、結核や恋愛によって絶望に沈んでいた... -
遍歴<神谷美恵子>
■みすず書房 20190714 最晩年に自らの人生を振り返って書いた自叙伝。原稿を出版社に送った1週間後に亡くなったという。行間から「あなたはどう生きるの?」と語りかけてくる名著だ。 父前田多門は内務官僚で新渡戸稲造の弟子だった。戦後直後には文... -
修験道という生き方<宮崎泰年、田中利典、内山節>
■新潮社 20190919 役行者が開祖とされる修験道は教団組織を持たず、明文化された教義もない。仏教以前の自然信仰を土台に、仏教や道教と混ざり合って成立した。インドの仏教には「山川草木悉皆成仏」という思想はなかった。自然信仰の名残りだという。修験... -
時間についての十二章<内山節>農文協
人々は時間をどうとらえてきたか、ではなく、時間はどのようなものとして存在しているか、を論じる。時間は絶対的な物ではない、と。 子どもの時間はけっして等速ではなかった、という。なるほど。台風後の川の土手で時間を持て余して延々と時間がたた... -
こころの旅<神谷美恵子コレクション>
■こころの旅<神谷美恵子コレクション>みすず書房 20190430 母親の体で受胎し、生まれて育ち、結婚し、やがて死ぬという一生を通して、人間の心はどうやって成長し、成熟していくのかを明らかにしている。 人間の赤ちゃんは生まれたばかりでも笑顔を... -
プルーストとイカ<メアリアン・ウルフ>
■20180703 文字を覚えることで脳を発展させてきた。 象を見て、それに似せた絵を描く、ということを覚えた時、ひとつの回路がつながり、その絵が抽象化することで新たな回路がつながる。文字が「音」を示すようにするには、さらに複雑な回路がつなが... -
悲しみが言葉をつむぐとき<若松英輔・和合亮一>
■岩波書店20190428 教師で詩人の和合亮一は被災地の福島から詩をつづりつづける。悲しみの底から言葉をしぼりだすという共通点をもつ2人が東京新聞で連載した往復書簡だ。若松の本は何冊か読んできたが、彼の思想が詩人と交流することで、よりわかりやすく... -
幻影の明治<渡辺京二>
■平凡社 20190422 筆者は、封建的で遅れていた江戸時代を、維新政府は近代的につくりかえた、という歴史観を「逝きし世の面影」で覆し、平和で穏やかで外国人を魅了した時代像を提示した。そんな渡辺氏は明治時代をどう見るのか知りたくて読んだ。 自由民... -
悲しみに寄り添う 死別と悲哀の心理学<ケルスティン・ラマ->
■201904再読 昔の人は「死」から「生」を捉えていたから、死は、苦しみからの救いという肯定的な面があった。だが医学の進歩で死は単に恐ろしいものとなった。死や悲哀は病院化し、死別のための共同作業は消え、遺された人たちを支えるコミュニティが失わ... -
人間をみつめて<神谷美恵子>
■河出書房新社20190414 動物と共通する古い脳は「本能」に左右され、新しい脳は、古い脳による衝動を抑制する力があり、自発性や抽象能力を司る。新しい脳があるから、悩みが生まれ、死が恐ろしくなる。一方で、シンボル的な思考ができるから、病床にいて... -
神谷美恵子「生きがいについて」<若松英輔>
■NHKテキスト 20190402 「生きがいについて」は読んだけど、それを若松英輔が解説したときに何が見えてくるのか興味を覚えてkindleで買った。 神谷は生きがいとは、自分が、大地とか自然とか神と言った何か大きなものに包まれているという実感から始まる... -
生きがいについて<神谷美恵子>
■みすず書房 20190317 「生きがい」なんて他人に教えてもらうものではないと思ってきた。 でも生きる意味を突然失うと、そうも言えなくなった。このまま死んでもよいのだが、もしかしたらこの経験を生かす道があるのかもしれない。若松英輔の著書を通して... -
悲しみの秘儀<若松英輔>
■ナナロク社 20190304 詩集か画集のような、小さくて美しい本。若松英輔の悲しみを巡る思いを色や形にしたらこんな本になるのだろう。 人を愛することは、悲しみを育むことになる。愛せば愛するほど、喪った時に訪れる悲しみも深くなるからだ。 それでも... -
魂にふれる 大震災と、生きている死者<若松英輔>
■トランスビュー 20190217 筆者は2010年2月に妻を亡くした。その経験をもとに、「死者とともに生きる」とはどんなことなのかを綴っている。 寂しさは、失ったものを取り戻そうとする時に湧き上がるが、悲しみは、新しい何かを生みだそうと世界の彼方... -
死者との対話<若松英輔>
■トランスビュー 201902 愛媛の友人に著者の名を聞き、死者は単なる思い出ではなく実在する、という主張にひかれた。 「記憶にある限り死者は生きている」とはよく聞く。だがそれでは、生きている私のなぐさめにはなっても、死者の幸せにはならない。死... -
深い河<遠藤周作>
■講談社文庫 20190225(新幹線で) 磯辺という男は妻をがんで亡くそうとしている。子どもがいないから妻が死んだら一人になる。 妻は、「命は決して消えない」と樹木が語ったと言う。死を間近にすると不思議な感性が得られる。それは永遠の命とつながる... -
現代語訳 般若心経<玄侑宗久>
■現代語訳 般若心経<玄侑宗久>筑摩新書 20181223 今まで読んだ般若心経の解説本でもっともわかりやすかった。 人は成長するにしたがって世界を言語で認識し、概念という枠にしたがって世界を理解するようになる。「私」という自我を確立して「概念」を...