reizaru– Author –
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パッチギ <井筒和幸監督>
20070105 暴力の時代。アナーキーの時代のなつかしい京都。 グループサウンズのマッシュルームカットの日本人の高校生がいる。まもなくフォークの時代がくると髪型もかえる。 一方、朝鮮高校にかよう荒くれのアンソンは、日本人の右翼の不良と喧嘩ざんまい... -
疲れすぎて眠れぬ夜のために <内田樹>
角川文庫 20071222 男らしさ、女らしさ、商人らしさ、農民らしさ……。そういった「らしさ」は多様性をもたらすことになり、人類が存続するための生存戦略上有効だったという。 礼儀正しくしたり、冠婚葬祭で礼装をまとうのは、いらぬ摩擦を生まぬためのひ... -
死生観を問いなおす <広井良典>
20071202 ちくま新書 時間は絶対的ではない。時間というのは宇宙のはじまりと同時に生まれたのであって、「宇宙のはじまる前」には時間というものがなく、宇宙が消え去れば時間というものはなくなる。 という科学的知見は、長らくヨーロッパ理性の中心を... -
思想としての近代経済学 <森嶋通夫>
岩波新書 20071111 セイ法則がキーワード。供給が増えればそれによって需要は増えるという考え方であり、これがなりたつということはいくらでも投資機会がある状態だから、完全雇用がなりたっていた。 ところが、消費社会となり、投資の機会がなくなる... -
もう少し知りたい人のための「ソフィーの世界」哲学ガイド <須田朗>
NHK出版 20071107 あなたはだれ? 世界はどこからきた? という質問から入る「ソフィーの世界」。世界は何からできているか、と問いつづけたエジプトの科学者からはじまり、ギリシャのソクラテスにいたってようやく「哲学」が誕生する。 ソフィ... -
中流の復興 <小田実>
NHK出版生活人新書 200710 行動と哲学的思索とをむすびつけて生き抜いた人であることが、この本を読んでもよくわかる。 デモをせよ。体で表現せよと説く。住民投票の議論がでてくると議員連中はよく「議会制民主主義を軽視するのか」と批判する。おいお... -
メディア危機 <金子勝 アンドリュー・デウィット>
NHKブックス 20071027 メディア・リテラシー運動が先進国の学校教育に普及するのは1980年代後半からだという。日本では「新聞を学校教育に」という運動はあるが、メディアの批判的読み方をおしえるリテラシー教育はない。その手法さえマスコミの... -
私家版ユダヤ文化論 <内田樹>
文春新書 200710 「ユダヤ人」の定義さえあやふやだ。ユダヤ人というのは結局「○○ではない」「○○ではない」という消去法によって定義するしかない。 西欧の始祖であり、キリスト教の起源である。でも、だからこそ、恨まれつづける、という。 サルトル... -
権力に迎合する学者たち <早川和男>
20070922 研究テーマは本質的であるか 時代の課題に応えているか 研究は主体的か 研究の方法は科学的・論理的であるか 時代をリードする先頭に立っているか 研究体制は十分か 研究者のよってたつべきこうした原則に、研究者の世界でもマスコミの世界同様... -
陸にあがった軍艦 <新藤兼人原作、山本保博監督 >
200709 滑稽すぎる訓練。それをまじめな訓練と思わなければならなかった滑稽。ノーといえない組織・国がつくりあげた戯画。木でつくった戦車にむかって、たこつぼからでて、駆け足で接近し、円盤状の地雷をなげつける。その前に9割9分の兵士は殺される... -
SICKO <マイケル=ムーア >
200709 医療費を払えなくて、自分で自分の傷をぬうというショッキングな場面から入る。中指と薬指を切り落としてしまったけど、縫合するには1本あたり120万円かかる。だから薬指をえらんで中指をあきらめた男がでてくる。 保険に入っていても安心で... -
マックス・ウェーバーと近代 <姜尚中>
20070920 姜尚中だから買ったけど、やけに難しい。でもところどころなるほどと思うところもあった。 宗教が、呪術的な宗教から倫理的な宗教へと脱魔術化する。ユダヤ教はそうした役割をはたした。さらに、倫理的な宗教がプロテスタントにすすむと、脱組... -
現代思想のパフォーマンス <難波江和英 内田樹>
松柏社 200708 現代思想の概説書ではなく、現代思想をツールとして使いこなす技法を実演する……という「まえがき」にみせられた。 とりあげている思想家もソシュール、バルト、フーコー、ラカン、サイードといった、理解したいけど難解な人ばかり。内田... -
一億三千万人のための小説教室 <高橋源一郎>
岩波新書 20070820 ふっと思い浮かんで、おもろい! と思うのだけど、パソコンにむかうと文字にならない。ちょっと時間がたつとわすれてしまう。あれほどすばらしい着想だったのに、なぜいざ書こうとするとしおれてしまい、指のあいだから流れおちる砂... -
昭和の戦争 <保阪正康対論集>
朝日新聞社 20070908 筆者は保守の立場から戦争を研究し、対談相手も保守的な人が多い。だから、外側や後世の視点からの批判ではなく、当時の視点から、軍の内側からの視点で「なぜあんな愚かな戦争をしてしまったのか」を論じていて説得力がある。 陸... -
滝山コミューン1974 <原武史>
講談社 20070827 新宿駅を発着した客車の鈍行列車の独特の魅力、「この電車は冷房車です」というステッカー、休日にはデパート屋上の遊具が一番の楽しみで、遠足やサイクリングはなによりの冒険だった。全共闘が投石し、ストがあれば電車やバスがとまっ... -
ためらいの倫理学 <内田樹>
角川文庫 20070819 知性とは、自分の知っていることをどれくらい疑っているか、自分が見たものをどれくらい信じていないか、自分の善意にまぎれこんでいる欲望をどれくらい意識化できるかを基準に判断する力だという。 言われてみればそりゃそうだ、と... -
レヴィナスと愛の現象学 <内田樹>
せりか書房 20070606 レヴィナスの本はこれまでほとんど理解できなかった。「入門」という題の新書も理解できなかった。この本も難しい。でもさすが内田樹氏だけあって、ところどころわかるし、なんとなくこんなことを言ってるんだな、という輪郭は見え... -
百姓が時代を創る <山下惣一、大野和興>
七つ森書館 20070729 農「業」はダメになるが、「農」は生き残る。農的生活は必要とされる魅力にあふれている。「業」として生き残るためには大規模化となるが、「農」には小規模のほうがよい--と説く。なるほど、と思う。「農業労働者」ではなく「百... -
悪あがきのすすめ <辛淑玉>
岩波新書 20070823 型どおりでない「悪あがき」の実例を紹介する。 四国の教科書問題をやってるおじさんたちの取り組みを「悪あがき」と評価する視点は新鮮だった。 なんといっても彼女のけんかのしかたは痛快だ。たとえば右翼から「朝鮮人は朝鮮に帰れ... -
ヒロシマ・ナガサキ White light, black rain <スティーブン・オカザキ>
1070823 日系米国人の撮った広島・長崎。 被害者の側だけでなく、エノラゲイの搭乗員らへのインタビューをしっかりとっているのがよい。 着実にあたえられた任務を遂行した彼らは今も、「後悔はしていない」「悪夢も見ない」という。でも同時に、爆弾投... -
丸山真男の時代 大学・知識人・ジャーナリズム <竹内洋>
中公新書 20070818 60年安保は戦後最大ともいえる運動だった。今では考えられないほど野党が強く、革命前夜的な雰囲気だった……と思っていたが、実際の支持率などをみると、わずか数カ月後には自民党が盤石の支持をとりもどしていた。今よりよっぽど自... -
ひめゆり
第七芸術劇場 20070812 すごいドキュメンタリーだ。 ひめゆり部隊の生き残りのおばあさんの証言をひたすらつなぐことで、当時の悲惨な状況を浮かびあがらせてしまう。米軍側のフィルムや、今のガマや壕の映像ももちろんある。が、ほとんどはおばあ... -
キューバ映画2本
■コマンダンテ 0701 グアテマラからもニカラグアからアフリカからも、多くの学生がまなびにきている。キューバの獲得したものの大きさがよくわかる。 カストロとの独占インタビュー。往事の勢いと声のはりはない。老境にはいった革命家は痛々しくもあ... -
丸山真男 日本近代における公と私 <間宮陽介>
ちくま学芸文庫 20070811 言葉づかいはけっこう難しいし、とくに前半の朱子学の部分は難解だったが、丸山が終生もとめつづけたものがなんとなく見えてきた。 単なる(状態としての)自由ではない。単なる(型式的な)民主主義でもない。自由と民主主義... -
オリエンタリズム 上 <エドワード・W・サイード>
平凡社 200706 「オリエンタリズム」の流れをたどる。 欧州にとってのオリエントは、神秘であり、セックスであり、異教徒であり、カオスであり……。かつては世界最先進地だったが、今や遅れた場である、という位置づけ。そこに住む住民側からの視点はな... -
終わりよければすべてよし <森嶋通夫>
朝日新聞 20070714 「単科ディシプリン」という言葉が何回もでてくる。専門家として1つの分野をきわめなければならない、という意味だ。彼にとってそれは数理経済学だった。その立場から、丸山真男や鶴見俊輔らを「ディレッタント」(好事家・素人)と... -
智にはたらけば角が立つ <森嶋通夫>
朝日新聞社 1070707 プリンシプルに従って行動する人とそうでない人がいる。積極的な悪人や有徳の士は前者に属し、その他多くの「普通は善人だが、気が弱いためにいざという時に道徳的に腰抜けになってしまう人」は後者に属する。筆者は後者を「消極的... -
血にコクリコの花咲けば <森嶋通夫>
朝日文庫 20070630 福祉社会学の研究会で「福祉社会を考えるならこれは必読書ですよ」勧められた。 名前はきいたことがあった。イギリスで活躍した経済学者であることは知っていた。 でもこんなにおもしろいとは。 戦時中、学徒動員で海軍にはいり、敗... -
反戦軍事学 <林新吾>
朝日新書 20070623 戦争反対という人ほど、軍事を知らない。もっと軍事を勉強せよ、とは以前から言われていた。それで、自分がかかわる部分に関しては最低限の本を読んできたつもりだった。が、やっぱり基本的なことをわかってないなあ、ということを気...