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楡家の人びと第三部<北杜夫>
■楡家の人びと第三部<北杜夫>新潮文庫 20160518 戦争が進んでも、「不治の病だ」と称して病院の農場でのんびり過ごしていた米国(よねくに)にも赤紙が届く。職員のほとんどがいなくなり、医者も軍医として動員される。二代目院長の徹吉と龍子の長男... -
楡家の人びと第二部<北杜夫>
■楡家の人びと第二部<北杜夫>新潮文庫20160516 第2部を読んでいて、この物語には主人公がいないことに気づいた。広大な病院を築きあげた楡基一郎は、火災で焼失した病院再建を果たそうと郊外の土地の購入を決めたところで死んでしまった。狂言回しと思... -
楡家の人びと 第一部<北杜夫>
■楡家の人びと 第一部<北杜夫>新潮文庫 20160429 舞台は大正時代の東京郊外の私立の精神病院。院長の楡基一郎は、ふるさとの東北では平凡な名前だったが、東京に出て成功して巨大な病院の主となって名前を変え、政友会の代議士にもなった。西洋の宮... -
メディアの地域貢献-「公共性」実現に向けて<早稲田大学メディア文化研究所編>
■メディアの地域貢献-「公共性」実現に向けて<早稲田大学メディア文化研究所編>一芸社 20160419 一覧性に富む新聞は、記事を読んでいるうちに、全く予期せぬ出会いが生まれるというところが魅力だ。アマゾンと比較したときの書店の魅力もそこにある。... -
結社の世界史1 結集・結社の日本史<福田アジオ編、綾部恒雄監修>
■結社の世界史1 結集・結社の日本史<福田アジオ編、綾部恒雄監修>山川出版社 20160506 コミュニティや中間団体はどんな経緯で変化してきて、幸福な未来社会をつくるためにどう生かすことができるのだろう。そんな疑問をもって買ってから2,3年。し... -
旅と移動 鶴見俊輔コレクション
■旅と移動 鶴見俊輔コレクション<鶴見俊輔>河出文庫 時代の主流ではない部分、周縁部分にこそ、次の時代を担う大切なものがある。そんな存在を丹念にひろい、その意義を解明している。 中浜万次郎は、14歳でアメリカの捕鯨船に助けられ、船長に育て... -
街場の憂国会議<内田樹>
■街場の憂国会議<内田樹> 晶文社20160423 武道家にとって「驚かされること」は禁忌。「驚かされない」ためのもっとも有効な方法は「こまめに驚く」こと。「風の音にもおどろく」。ああその通りだと思った。日ごろのニュースにこまめに驚いておくこ... -
そして、メディアは日本を戦争に導いた<半藤一利、保阪正康>
■そして、メディアは日本を戦争に導いた<半藤一利、保阪正康>文春文庫 20160417 明治期のジャーナリズムを支えたのは旧幕臣で、民権主義者だった。政府の宣伝機関ではなかった。 日清・日露戦争で国家政策に共鳴する人が増えたことで、メディアは国... -
文明は農業で動く 歴史を変える古代農法の謎<吉田太郎>
■文明は農業で動く 歴史を変える古代農法の謎<吉田太郎>築地書館 近代農法は石油に依存している。石油を使わず、100年前の技術水準で養える人口を計算すると、現在の35%の人口にすぎないという。江戸時代の日本はほとんどが農民だったが、3000万人... -
鶴見俊輔集2 先行者たち
■鶴見俊輔集2 先行者たち 筑摩書房1991年 20160306 プラグマティズムとは、実用主義とか現実主義とか、その場その場で対処する考え方という程度にしか思っていなかった。 デューイについての文章を読んで、場当たり的に思えたプラグマティズムの歴... -
原発からの命の守り方<守田敏也>
■原発からの命の守り方<守田敏也>海象社 20160318 安全性の保証もなく、避難態勢のチェックもないまま再稼働の動きが進んでいる。 そういう実態を解き明かしたうえで、原発事故や天災が起きたときの身の守り方を説いている。原発だけでなく津波災害... -
原発を拒み続けた和歌山の記録
■原発を拒み続けた和歌山の記録<汐見文隆監修 「脱原発わかやま」編集委員会編>2012寿郎社 20160228 和歌山では、那智勝浦、古座、日置川と日高2カ所の計5カ所で原発計画があったのに、すべてが阻止された。なぜ和歌山で阻止できたのか。地域性が... -
現代地域メディア論<田村紀雄・白水繁彦編著>
■現代地域メディア論<田村紀雄・白水繁彦編著>日本評論社 20160304 メディアが、地域社会に役立つにはどうしたらよいのか、新たな可能性はあるのか…知りたくて手に取った。メディア当事者や関係が深い地域住民ではなく、研究者の論文だから、おもしろ... -
南方熊楠の謎 鶴見和子との対話<松居竜五編>
鶴見は戦後、「山びこ学校」を通して「生活綴方」に共感し、自己史をつづることの重要性を説くようになる。このころの鶴見は、人々の生の声をどのように記録し、学問活動につなげるかを追究していた。対象を外から観察する近代科学のような社会学から、... -
増補 共同体の基礎理論 内山節著作集
■増補 共同体の基礎理論 内山節著作集15<内山節>農文協201 共同体は1970年代までは、封建時代の遺物と考えられた。 ところが共同体が消え、自立した個人が社会に参加することでよりよき社会が生まれる、という希望は実現しなかった。個人がバラバラ... -
戦後日本の大衆文化史<鶴見俊輔>
■戦後日本の大衆文化史<鶴見俊輔>岩波現代文庫2001(1984) 20160208 1980年頃につくられた同時代史。柳田国男の「明治大正世相史篇」の戦後版だ。その時代にそこに住む人の目から、戦後という時代の変遷を描く。同時代を客観的に描くことは難しいが、... -
かくれ佛教<鶴見俊輔>
■かくれ佛教<鶴見俊輔>ダイヤモンド社2010 20160205 キリスト教の「あなたは間違っている」という態度は、「罪なき者、この女を打て」と言ったイエスの時代にはなかった。一神教的な不寛容さは、キリスト教が国家宗教になってからの性格ではないかと鶴... -
思い出袋<鶴見俊輔>
■思い出袋<鶴見俊輔>岩波新書2010 20160203 ジョン万次郎や高杉晋作、坂本龍馬ら、幕末に活躍した人々は、時代を大きくとらえる力を持っていた。日露戦争で国民の反発を押し切ってでも講和できたのは、この世代の人々の冷静な判断力のおかげだった。 教... -
現代思想 総特集 鶴見俊輔 2015年10月臨時増刊号
■現代思想 総特集 鶴見俊輔 2015年10月臨時増刊号 青土社 鶴見は戦争中、敗戦を確信し、人を殺す場面に出くわしたら自殺しようと覚悟していた。だけど「戦争反対」とは言えなかった。鶴見と同様、先行きが見えていた知識人はいたが行動には移せなかっ... -
季刊誌kotoba 2016年冬号 中上健次生誕70年記念特集
■「季刊誌kotoba 2016年冬号 中上健次生誕70年記念特集」 集英社 20160123 中上健次といえば、ガルシア・マルケスを思わせる小説群と、反戦運動などへの積極的な関与、酒と暴力……という印象だが、そもそもどんな人だったのだろう。彼の生き様を知... -
森のバロック<中沢新一>
■森のバロック<中沢新一>せりか書房1992年 20160119 南方熊楠の生涯のうちで「もっとも深く体験されたもの」だけを注意深く取り出そうとした、という。 粘菌研究者としての熊楠、民俗学者としての熊楠、奇行を繰り返した熊楠……それぞれを断片的に紹介す... -
JIN -仁-
■JIN -仁- TBSオンデマンド クレジットカードの明細を見ていて、いつのまにかアマゾンプライムの年会費を払っていることに気づいた。年間4000円ぐらい。プライム会員になるとどんな特典があるのかなあと調べてみたら、Kindle の本を月1冊読むことがで... -
帝国日本の生活空間<ジョナサン・サンド>
■帝国日本の生活空間<ジョナサン・サンド>岩波書店2015年 2016/01/09 住宅のつくりや椅子文化、味の素などの身近なモノや習慣と、大日本帝国やアメリカといった植民地帝国の歩みとのつながりを、サイードのオリエンタリズムの理論的枠組みを利用して描い... -
日本文化の形成 下<宮本常一>
■日本文化の形成 下<宮本常一>ちくま学芸文庫 1994年 20160103 ▽倭人 蘇我蝦夷の名に見るように、蝦夷や毛人を名乗ることは卑称ではなかった。もともと日本に住んでいた人たちは毛深かった。そこへ、朝鮮半島を経由して多くの人が渡来した。彼らは貧... -
熊楠の森−−神島<後藤伸、玉井済夫、中瀬喜陽>
■熊楠の森−−神島<後藤伸、玉井済夫、中瀬喜陽>農文協 2011年 20151229 田辺市の沖に浮かぶ神島は、神社合祀の伐採計画から南方熊楠が守ったことで知られる。 高校教師だった筆者たちは、紀伊半島の自然を守る取り組みのなかで、神島の自然も調査し... -
日本文化の形成 中<宮本常一>
■日本文化の形成 中<宮本常一>ちくま学芸文庫 20151216 筆者はみずから農漁業の経験があるから、古い時代の道具を見て、それがどう使われるか即座に理解できる。生業の伝統を受け継いでいる人だから、歴史への想像力が生まれる。生業から切り離されて... -
満洲暴走 隠された構造<安冨歩>
■満洲暴走 隠された構造<安冨歩>角川新書 2015 20151226 「東大話法」などユニークな著作を次々に出している筆者は、経済学者でありながら、民俗や自然環境、歴史など、幅広い分野を調べ、大きな物語をつくりだす。経済学者の森嶋通夫に似ているなあ... -
旅する力 深夜特急ノート<沢木耕太郎>
■旅する力 深夜特急ノート<沢木耕太郎>新潮文庫 平成23年 20151223 小学生のとき、わずか20分のバスに乗ってまちに出るのが大冒険だった。駅の近くの本屋やプラモデル屋はわくわくする空間だった。中学のとき、千葉県の犬吠埼まで3人で旅したときは大... -
イリオモテのターザン<水田耕平>
■イリオモテのターザン<水田耕平>南山舎 2009年 20151220 西表島の果ての白浜という集落から、船でしかいけない船浮という集落へ渡り、さらにそこから30分船に乗ったウダラ浜という無人の浜に、何十年も住みつづける「ターザン」と呼ばれる男性がいた... -
日本文化の形成 上 <宮本常一>
■日本文化の形成 上 <宮本常一> ちくま学芸文庫 20151212 著者最晩年の講演と遺稿をまとめた本。 蘇我蝦夷の「エミシ」というのは毛の深い人たちという意味であり、新たに海の彼方から来た人たちが、列島土着の縄文文化人たちを「エミシ」と言ったの...