02憲法・有事・ナショナリズム– category –
-
兵役拒否の思想 市民的不服従の理念と展開 <市川ひろみ>
明石書店 20070127 イラク戦争における米国、旧東西ドイツ、イスラエルの兵役拒否のありかたを紹介するともに、その背後にあるキリスト教や近代哲学の流れをフォローしている。社会主義独裁とされてきた東ドイツで、教会を支えにした兵役拒否の運動があり... -
昭和の戦争 <保阪正康対論集>
朝日新聞社 20070908 筆者は保守の立場から戦争を研究し、対談相手も保守的な人が多い。だから、外側や後世の視点からの批判ではなく、当時の視点から、軍の内側からの視点で「なぜあんな愚かな戦争をしてしまったのか」を論じていて説得力がある。 陸... -
ヒロシマ・ナガサキ White light, black rain <スティーブン・オカザキ>
1070823 日系米国人の撮った広島・長崎。 被害者の側だけでなく、エノラゲイの搭乗員らへのインタビューをしっかりとっているのがよい。 着実にあたえられた任務を遂行した彼らは今も、「後悔はしていない」「悪夢も見ない」という。でも同時に、爆弾投... -
丸山真男の時代 大学・知識人・ジャーナリズム <竹内洋>
中公新書 20070818 60年安保は戦後最大ともいえる運動だった。今では考えられないほど野党が強く、革命前夜的な雰囲気だった……と思っていたが、実際の支持率などをみると、わずか数カ月後には自民党が盤石の支持をとりもどしていた。今よりよっぽど自... -
ひめゆり
第七芸術劇場 20070812 すごいドキュメンタリーだ。 ひめゆり部隊の生き残りのおばあさんの証言をひたすらつなぐことで、当時の悲惨な状況を浮かびあがらせてしまう。米軍側のフィルムや、今のガマや壕の映像ももちろんある。が、ほとんどはおばあ... -
丸山真男 日本近代における公と私 <間宮陽介>
ちくま学芸文庫 20070811 言葉づかいはけっこう難しいし、とくに前半の朱子学の部分は難解だったが、丸山が終生もとめつづけたものがなんとなく見えてきた。 単なる(状態としての)自由ではない。単なる(型式的な)民主主義でもない。自由と民主主義... -
血にコクリコの花咲けば <森嶋通夫>
朝日文庫 20070630 福祉社会学の研究会で「福祉社会を考えるならこれは必読書ですよ」勧められた。 名前はきいたことがあった。イギリスで活躍した経済学者であることは知っていた。 でもこんなにおもしろいとは。 戦時中、学徒動員で海軍にはいり、敗... -
反戦軍事学 <林新吾>
朝日新書 20070623 戦争反対という人ほど、軍事を知らない。もっと軍事を勉強せよ、とは以前から言われていた。それで、自分がかかわる部分に関しては最低限の本を読んできたつもりだった。が、やっぱり基本的なことをわかってないなあ、ということを気... -
言論統制列島 <鈴木邦男 森達也 斉藤貴男>
講談社 20061125 石原慎太郎が「週刊ポスト」に、今の日本人が緊張感を失った理由は、この60年間戦争をしなかったからだ」などと書くなど、政治家や権力者は言いたい放題で、「舌禍」のハードルが大きく下がっている。 一方で、マスコミは萎縮し自己... -
昭和史発掘4 <松本清張>
文春文庫 20061120 □小林多喜二の死 好きな子ができて、入れ込んで、逃げられて……といった書生っぽくて情けない多喜二が、すさまじい拷問をともなう左翼弾圧を目にして、その実態を描き、特高ににらまれ、最後は自分自身が殺されるまでを描く。 最後に... -
いまここに在ることの恥 <辺見庸>
毎日新聞 20061027 --冷笑、あざけりというものを殺そう。必死で考えようとする人間、それがだれであろうが、殺人犯だろうが、もはや「形骸」ときめつけられたような魂でも、その声、聞こえないつぶやきに耳を傾けたい。もう居心地のよいサロンでお上... -
別冊世界 もしも憲法9条が変えられてしまったら
■別冊世界 もしも憲法9条が変えられてしまったら 岩波書店 20061012 第一次大戦後のドイツで、「孤独な個人」と国家権力と対峙するとき、中間組織がないために個人主義の不安感の足元をすくわれ、ヒトラーが生まれたという指摘は、「規制緩和」な... -
敗戦後論 <加藤典洋>
ちくま文庫 20061008 ■敗戦後論 護憲派は、押しつけ憲法、という「汚れ」をなかったこととして、戦後民主主義をピュアであることを主張しつづける。大江健三郎がその代表だ。 改憲派は天皇の戦争責任という自明な事実を無視して、同じくピュアであると... -
戦争で得たものは憲法だけだ <落合恵子・佐高信編>
七つ森書館 20060926 特養の順番待ちが来ないのもしかたない。病院を追いだされてもどうしようもない。医療費が上がるのもしかたない。有事法制ができてナショナリズムが色濃くなるのもどうしようもない…… 「しょうがない」「しかたない」「どうしよう... -
戦争の克服 <阿部浩己 鵜飼哲 森巣博>
集英社新書 20060701 森巣博が、哲学者の鵜飼哲と国際法学者の阿部浩己と対談する。 「戦争」が時代とともに「総力戦」となり、国全体を巻き込む形になり、 国民国家という形で画一化していく。「ふんどし」は、徴兵制によって全国に広まったという。 ... -
「放送禁止歌」森達也
■知恵の森文庫 20051230 「放送禁止歌」というと、キヨシロウのパンク調「君が代」とかをイメージしてたけど、実は天皇制関連の「放送禁止」は岡林の「ヘライデ」くらいだという。 大半はもっとささい理由ばかり。 え? この歌も? という歌が次々... -
ルポ改憲潮流 <斎藤貴男>
岩波新書 20060528 「生活安全条例」「自警団組織」「共謀罪」、マスコミの右傾化……具体的な事実をもとに、憲法をめぐって今起きていること、今後起きようとしていることを描く。緻密で広範なデータの収集と分析が筆者らしい。 住基ネットが成立するとき... -
日本海海戦とメディア <木村勲>
講談社選書メチエ 20060520 日露戦争といえば、日本海海戦の鮮やかな勝利が頭に浮かぶ。 意表をつく「敵前大回頭」「丁字作戦(T字ともUターン作戦とも聞いたことがあるが)」によってバルチック艦隊を撃破し、戦争の帰趨を決めたーー ほとんどの日本人... -
憲法力 <大塚英志>
角川 20060507 民俗学者の柳田国男からときおこす。 柳田は第1回普通選挙の結果を見て、旧来の地縁血縁によって投票していることに憤り、「明治大正史世相編」の最後に「われわれは公民として病みかつ貧しいのであった」と記した。 村的な共同体や利権... -
テレビの罠 <香山リカ>
ちくま新書 20060502 2005年秋の総選挙で自民党圧勝したことにショックを受けたのは、野党陣営だけではなかった。自民党に入れた人たちも「勝ちすぎ」と戸惑い、保守派の論客が「ファシズム」危惧する。 なぜそんな事態が起きたのか。だれがそんな... -
過去は死なない メディア・記憶・歴史 <テッサ・モーリス・スズキ>
岩波書店 歴史が100%客観的であるという考え方を著者はまず否定し、歴史には解釈的な側面と同時に情緒的な側面があることを認める。だが「つくる会」的な歴史相対主義に陥るのではなく、過去について真摯であろうとしなければならないと主張する。 過... -
9条どうでしょう <内田樹ほか>
毎日新聞社 20060408 「9条」というと、護憲と改憲という二分法的な論じ方ばかりだが、こんな論じ方もあるのかあ、と新鮮だった。とくにオダジマンの論は目から鱗だった。 たとえば「愛する者や家族が目の前で殺されているのを座視するのか」という... -
暗黒日記3 <清沢洌>
ちくま学芸文庫 20050609 昭和20年正月からの記録。冒頭の元旦の日記はなんだか今の時代を言い当てているようだ。 自分の上から爆弾が降ってきてはじめて初めて「戦争」であることを知り、しかしそれでもなお、戦争に懲りないだろうという。その理由... -
暗黒日記2 <清沢洌>
ちくま学芸文庫 20050525 昭和19年の日記。前年はまだ、外地でやっている戦争は「よそごと」という雰囲気で、東京は比較的のんびりしていたが、昭和19年に入ると、戦時体制がいよいよ身近に迫ってくる。 酒場やカフェーは閉鎖される。食糧が不足し... -
暗黒日記Ⅰ <清沢冽>
筑摩書房 20050408 「危険だ」と忠告されながら、現代史を書くための材料としてつけた昭和17年から18年の日記。細かな日々の事件やできごとの記述とともに、大量の新聞記事のスクラップを一緒に添付している。 「戦争」を記した本は通常、後の時代か... -
戦場が培った非戦 <渡邊修孝>
社会評論社 20050402 筆者はイラクで人質になり、「自己責任」のバッシングの嵐にさらされた。だが、テレビの画面からは頑としてゆずらない意思の強さが伝わってきた。同じようなめにあったら、私ならばめげて形だけでも謝ってしまうだろう。彼はなぜこれ... -
となり町戦争 <三崎亜記>
集英社 200503 市の広報に「町づくりの一環でとなり町との戦争をします」という主旨の記事がのる。詳細なプランは、コンサルタント会社が作成したという。 戦争が始まるというその日、となり町に通勤している主人公は緊張しながら車を走らすが、これとい... -
国家に隷従せず <斎藤貴男>
筑摩書房 20050218 監視カメラが町に増えている。「安全のためには仕方ない」と言われると、反論しにくい。マスコミでも反対論は書きにくい。だが、町中にカメラが設置され、顔認識システムが導入され、総背番号制が隔離したら、まさにオーウェルの描いた... -
戦争論争戦 <田原総一朗・小林よしのり>
幻冬舎文庫 20050130 かつて田原は保守系文化人と位置づけられていた。保守系リベラルだからこその説得力ある論を展開する。一方の小林よしのりの主張は、「日韓併合はしかたない」「大東亜戦争も仕方ない」「アジアの独立に寄与した」「今の視点から過去... -
日本の戦争<田原総一朗>
小学館文庫 20050124 久野収だったか、鶴見俊輔だったかが、こんなことを書いていた。 明治のはじめ、天皇教をつくりあげた明治政府のリーダーたちにとっては、表向き(顕教)は天皇を神としたが、裏(密教)では合理的な政策をすすめるための「道具」ぐ...
12