七つ森書館 20060926
特養の順番待ちが来ないのもしかたない。病院を追いだされてもどうしようもない。医療費が上がるのもしかたない。有事法制ができてナショナリズムが色濃くなるのもどうしようもない……
「しょうがない」「しかたない」「どうしようもない」というあきらめの積み重ねが、貴族社会(格差社会)や戦争参加への雪崩を生みだしてしまう。あのナチスも、中流階級の崩壊が生みだした魔物だった。落合恵子は石垣りんの詩を引用して「こんな時代とこんな社会に、どんな小さくてもいいから私たちは風穴をあけていく1人でありたい」と説く。彼女の言葉はなぜかしんみりとしみこんでくる。
「さだめ」ではなく、あきらめを克服して「課題」ととらえる大切さ。
三国連太郎は徴兵からの逃亡を図ったが、母が「なんとか穏便に」と憲兵に密告して故郷につれもどされたという。
「お前も散々親不孝をしてきたけれども、これで天皇陛下のお役に立てる」と、軍隊に行かされた。当時はそうやって息子を国に売る母親ばかりだったのだ。
軍隊は、国民を守らないどころか、国民を殺す装置として機能してきた。
「憲法」を歴史にひきつけ、身近なものにひきつけ、わかりやすく解説している。
---------抜粋など---------
▽護国神社 自衛隊制服組幹部が、肩書きで呼ばれて参拝していく。政教分離違反の現場。「私的参拝」と自衛隊はいいわけ。自民の新憲法草案では、儀礼的行為として当然とされてしまう。
▽国会 帽子、襟巻き、コート、傘、杖、着用・携帯ダメ。都道府県議会も同様。帝国議会を真似た。
▽軍隊は国民を守らないということが「自衛隊は必要だ」という人に対するポジティブブローとしてある。
▽日米間の秘密保護法に追加的措置をして、国会議員も漏洩の処罰対象にすることも検討している、と報じられた。
▽「新聞記者が上品な仕事だと思っているから飯島や小泉という下品なやつに全部やられてしまう。新聞記者はゆるり・たかり・強盗の類いだ」 北朝鮮のマツタケ300箱。日本テレビの記者が追いかけて報道した。官僚と大手マスコミの記者の腹の中に収まった。……食っても書かなかったことを責めなさい。堂々と書いてなにか言われたら「なに、オレを松茸で買収する気か」と開き直ればいい。問題の本質とは下品なことやつまらないことのなかにある。
▽竹中の逃税疑惑 1月1日に日本に居住してないと住民税を払う必要がない。アメリカに住民票を移している。サッチーはこれを知らなかったから捕まってしまった。
▽なかにし礼さん あのとき、満州にソ連が攻めてきた時、一番先に逃げ出したのは関東軍だった。「軍隊は私達を守らない」と言っている。……戦争というのは、基本的に石油がなければできない。石油がなくて戦争をやった国は1国しかない。北朝鮮の石油は中国がほとんど供給している。中国がバルブをちょっと閉めれば明日にでも倒れる。だから、なおさら中国と手を結ばないとだめ。
憲法とは、人権によって特権を規制する、というもの。
▽三国連太郎 戦争反対運動をして捕まる。徴兵を逃れるため、逃げる。が、母が密告して故郷につれもどされ軍隊へ。「自分の手紙を憲兵隊に見せたんだな。なんとか穏便にと頼んだんだな。だから自分は拷問を受けることなく兵隊に行くんだな」……「ああ、自分はどこかで、自分を国に撃った母親を許していなかったんだな」
憲法をひっくり返そうとする人たち、明らかに母親に息子を国に売らせる思想をもっている人。上品さを捨てても、それと対決していくということが、息子を守る道……。
▽刑務所も私企業に。国の刑務所ならば情報公開を迫れるが、私企業では企業秘密となる。
▽アルゼンチン 89年にペソと$の比率を一対一に。そのとき、水道・電気・ガスを民営化した。電気代を払えない家族から電気メーターを全部とってしまう。水道も出ないところがたくさんある。電気がついてないマンションも。中流の没落。
▽「特養に申し込みました。170番待たなければ私は入れません。私が終の棲家に落ち着くまでに、私の目の前にいる一七〇人が早く死んでくれることを祈るしかないのですか。それがつらいです」こんな時代だからしょうがない、仕方がないと言う前に、やっぱりこんな時代とこんな社会に、どんな小さくてもいいから私たちは風穴をあけていく1人でありたい。