筑摩書房 20050218
監視カメラが町に増えている。「安全のためには仕方ない」と言われると、反論しにくい。マスコミでも反対論は書きにくい。だが、町中にカメラが設置され、顔認識システムが導入され、総背番号制が隔離したら、まさにオーウェルの描いた1984年の警察国家になってしまう。その危うさを詳細に指摘する。
「禁煙」の動きの危うさ、というのも意識しないと気づきにくい。私はタバコを吸わないから、禁煙が広がるのは大歓迎だ。だが、国家が人間の健康管理を志向する方向性はナチズムに近いものがあり、山崎正和も「予防医学という発想そのものが、一歩間違えばファシズムに通じる危険性を持っている」と指摘したという。
「健康増進法」は、病気がちな人や障がいのある者は「国民の責務」を果たさない非国民とされかねない。「禁煙条例」の本質は、警察庁が主導する「生活安全条例」にほかならない。防犯対策を前面に押し出しつつ、警察と自治体、地域社会の一体化を狙っているという。
ハーレムの禁煙運動も取材したうえで、「ハーレムは拳銃や麻薬の温床でもある。…人々の健康、生命を重んじるなら、たばこより先に教育されるべきことがいくらでもあるのでは。たばこに諸悪の根元を求め、上からの革命を急ぐ現代の禁煙運動が、社会構造の矛盾を矮小化…ということを畏れる」と記している。
鳥取県智頭町の「ひまわりシステム」にも、旧内務省的な発想をかぎわけ、ディープエコロジーの動きのなかにもそうした動きを見る。
オウムに坂本弁護士が連れ去られたとき警察は、誘拐ではなく「失踪」と位置づけ、個人の責任であるように装った。それが事件解決を遅らせた。なのに、警察の幹部はなんの責任も問われない。
1億円の脱税をした大蔵官僚は大会社に天下りしてウハウハなのに、その10分の1しかしてない野球選手は永久追放されてしまう。
弱い者ばかりに負担を押しつけ、強者は好き放題する。異議を唱えると、監視システムを張り巡らせた警察によって圧力をかけられる。
そんなおそろしい世の中になりつつあるということを、具体的な事実で、これでもか、これでもか、と突きつける。
▽20歳でシベリア帰りの父が死ぬ。死亡届を出そうとすると「いつ死んだ? あ?」。……その場でたたきのめすべき相手に抗議さえできなかった未熟な自分自身にもオトシマエをつけなければならない。何者にも隷属しない立場で、人間の自由と尊厳を守るために働こうと誓った。
▽組織をかくれみのにする個人 再審無罪の事件で取り調べ当時の刑事課長。「責任があるのは俺という個人じゃねえ。刑事課長という職にあるんだよ」
▽監視カメラ 歌舞伎町には01年度中に50台。所轄署とネットワークで結ばれたカメラを繁華街のコンビニに設置させたのは愛知県警。。デジタル記録で必要な部分だけを瞬時に検索できる。顔認識技術もオムロンで開発すみ。
▽東広島市の行政書士・家森健さん。「住民基本台帳法のあり方を研究する行政書士の会」の99年の調査 東大阪市や福岡市、丸亀市などがq、国籍取得した人の住民票に帰化と記載したまま交付していた。
▽国民総背番号制度をめぐる連携は日韓台に広がっている。背景にはアメリカの極東戦略? アメリカでは、社会保障番号〓が、事実上の総背番号制になっている。61年に納税者番号としても利用され始め、次第にあらゆる行政サービスや民間分野にも広がっていった。82年には兵役登録拒否者狩りが始まる。ただしICカード化には至ってない。猛反発を食うのが明らかで、だから他国で実績を作らせてから自国民に適用させたい意向と見られる。
▽名簿業者「黙っていてもいろんな人が名簿を売り込みに来る。フィリピン人と結婚した人のリストとか、宗教団体の人が相談に来た人の名簿を持ってきたこともある」
▽サラリーマン税制 自分で払う税金の計算を放棄させられた人の納税者としての権利意識は極端に薄まっていく。税金が浪費されても誰も何も言わない。
確定申告権を奪う制度は法の下の平等を定めた憲法14条違反として、総評は裁判をたたかったが、最高裁で敗訴。「サラリーマン税制に異議あり!〓」
▽年棒1千万円に満たない野球選手が悪質な脱税犯として永久追放された人もいた一方で、1億円近くも脱税した中島義雄氏はわずかな追徴課税だけで方面され、京セラに役員並の待遇で迎えられた。大衆や見せしめにできる者にはどこまでも酷薄で、身内や有力者には甘い。
▽禁煙ファシズム 山崎正和。国家が人間の健康管理を志向する方向性を危険だと感じ、「予防医学という発想そのものが、一歩間違えばファシズムに通じる危険性を持っている」
▽ハーレム たばこ税があがり、価格値上げが続いたため、違法なばら売りが横行するようになった。……ハーレムは拳銃や麻薬の温床でもある。……人々の健康、生命を重んじるなら、たばこより先に教育されるべきことがいくらでもあるのでは。たばこに諸悪の根元を求め、上からの革命を急ぐ現代の禁煙運動が、社会構造の矛盾を矮小化し、……ということを畏れる。
▽「健康増進法」 病気がちだったり何かの障がいのある者は「国民の責務」を果たしていない非国民ということになる。禁煙条例の本質は、警察庁が主導する「生活安全条例」にほかならない。防犯対策を前面に押し出しつつ、警察と自治体、地域社会の一体化を狙っている。
▽砂川孝子さん不当逮捕 待合室にいたら「不法侵入」、警察のデジタル無線傍受で「電波法違反」、3年に及ぶ長期拘束。
▽坂本弁護士事件 オウムのバッジが部屋に落ちていても、「バッジだけで有罪にはできない」。室内に14カ所も血痕があるのに、「誘拐」「拉致」ではなく「失踪事件」とした。あげく果てに県警は、失踪の原因は借金だの内ゲバだの、男関係だのとまで噂を流した。警察官「いつも警察を攻撃している連中が、助けてくれだなんて虫がいい」
▽森岡正博〓 ディープエコロジーは自然に大きな価値を置くあまり、ちっぽえな人間を軽視しがち。過剰な人口を削減するためにはエイズも歓迎であるという考え方に転化しかねない。
▽鳥取県智頭町の「ひまわりシステム」 ひとり暮らしの老人の家に、特殊な郵便受けをつくる。そんなことやると危なくて仕方ないから、警察に介入していただく。……郵便屋さんが昨日行ったんだったら、福祉の人が今日行くことない、という。パソコンで、郵便屋さんと役場と消防署と警察も情報を共有しようということになる。「電子ひまわり」という。……旧内務省時代の部落会あたりと近い。地域ぐるみで互いに監視しあうシステムがいつの間にか作られている。省庁再編が背景にあり、郵便局と自治体との協力関係が作られる。自民党の支持基盤である特定郵便局が地域を把握するということを考えr得必要がある。
▽集団的自衛権の行使を認めよと強調する財界人は「海外に展開している日本企業の権益を守るため」と言う。そして、70年代のIJPCを引き合いにだす。アメリカと同じ。
▽イラク人質事件での自己責任論 「週刊現代」だけは安易な自己責任論に抗しつづけた。
責任転嫁のために小泉内閣が考え出した「自作自演説」。事件直後、小泉は「事実確認を急いでいる」と行ったが、それは、自作自演説を裏付けるための身辺調査だった。
▽鳥インフルエンザとBSE 鳥インフルは、直接接触しなければ人には感染せず、感染した鶏肉を食べても併記。なのに騒がれ続けたのは、イラク派兵などから国民の目をそらさせる情報操作。インフルエンザワクチン市場を活性化させたい医療関係者らの思惑、があるのでは。
BSEは、実際に危険なのに、牛丼に関心が集中した。
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