04民俗・食– category –
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江戸という幻景<渡辺京二>
■弦書房 20240415 かつて江戸時代は封建的な遅れた体制だと評価されていたのにたいし、最近の江戸ブームでは、江戸時代の近代に通じる部分をとりだして「実は意外に近代的だった」と評する。どちらも近代を基準に過去を評価している。 渡辺は、江戸は、... -
呼び覚まされる霊性の震災学 3.11生と死のはざまで<金菱清編>
■新曜社 20240401 東日本大震災の被災地での学生のフィールドワークをもとにした本。 石巻市や気仙沼市のタクシードライバーに聞き取り調査をすると、幽霊をのせる経験をしている人が少なくなかった。。 石巻市は保守的で、ほとんど相手にしてくれな... -
円空とキリスト教<伊藤治雄>
■ブックショップマイタウン20240410 円空の木像は独特の魅力がある。天台宗の僧で修験道の修行者なのだけど、仏像だけでなく、柿本人麿、両面宿儺、青面金剛などなど、不気味ささえただよわせる神像や彼オリジナルの像もきざんでいる。 「仏僧」の枠に... -
日本の農村 農村社会学に見る東西南北<細谷昂>
■ちくま新書202403 南北朝時代以来つづいてきたとされる「村」が今、消えようとしている。能登半島地震は「村の終わりのはじまり」ではないかと思える。 「村」はそもそもどうやって生まれ、存続してきたのか? そんな疑問をもって本書を手にした。学者... -
巨大おけを絶やすな! 日本の食文化を未来へつなぐ<竹内早希子>
■岩波ジュニア新書 20240112 湯浅の醤油蔵でも、那智勝浦の酢の蔵でも「この木桶が壊れたら、もう新調できない。堺の業者しか残っていない」と聞いていた。 ところが、福島県の郡山の酒蔵で巨大な木桶を新調していた。それが小豆島で習ったという。いつ... -
映画「風の島」<大重潤一郎監督>
■20240115 1983年に沖縄の陶芸家・大嶺實清氏が西表島の沖にある無人島・新城島(パナリ)でつくられていた土器「パナリ焼」を復活させた際の記録映画。 パナリ島はシーカヤックのツアーで訪ねたことがあったが、無人島に古い土器文化があったことなどは... -
人は死んだらどこへ行けばいいのか 現代の彼岸を歩く<佐藤弘夫>
■興山舎20231201 人類の歴史において、死後世界は当然とされてきた。その伝統が壊れつつる。「直葬」がはやり、お盆を先祖との対話の時と考える人は少数派だ。これはおそらく、南北朝以来つづいた日本のムラの衰退と軌を一にしているのではないか。 この... -
民俗知は可能か<赤坂憲雄>
■春秋社 20231119 民俗学には興味があるけど、それが今に生きる知恵としてどういう形で生かせるのか、と疑問に思ってきた。この題名を見たら、買うしかなかった。つい最近亡くなった石牟礼道子から、日本の民俗学の原点である柳田国男まで、さかのぼって... -
四国遍路の世界<愛媛大学四国遍路・世界巡礼研究センター編>
■ちくま新書20231025 遍路道は世界遺産登録をめざしている。私が愛媛にいた2002年ごろからその動きはあったが、「ずっと先の話」と思われてきた。だが最近、外国人の遍路が急増し、世界の注目があつまってきたという。うれしいようなかなしいような……。 ... -
日本人の魂の原郷 沖縄久高島<比嘉康雄>
■集英社新書202310 久高島は、隆起珊瑚礁の小島で最高標高は17.1メートルしかない。畑地には石灰岩が露出し、農耕に適していない。水は、雨水をサンゴ石灰岩が吸収し、岩のあいだからしみでる水をためた井泉(西海岸沿いに9カ所、ほかに2カ所)をつかっ... -
原郷ニライカナイへ~比嘉康雄の魂(2001年)<大重潤一郎監督>
余命を告げられていた写真家の比嘉康雄さんが、大重監督にたのんで「遺言」として撮ってもらった作品。この映画をきっかけに大重監督は久高島にすみつき、「久髙オデッセイ」三部作につながった。 映画は比嘉さんが亡くなる半月前に久高島をおとずれる... -
二上山<田中日佐夫>
■学生社20230629 二上山と、中将姫伝説のある當麻寺、大津皇子について知りたくて購入した。1967年が初版だが、1999年に再版し、解説をくわえている。 二上山の西側、大阪府太子町の「山田」一帯には、敏達天皇、孝徳天皇、小野妹子、推古天皇、用明... -
究極日本の聖地<鎌田東二>
■kadokawa20230607 927年の「延喜式」で重要とされた「延喜式内社」2861社は、古代の「聖地」一覧だ。それらをもとに「聖地」とはなにかを考察する。 最初に能登の真脇遺跡がとりあげられていてなつかしい。 真脇遺跡は三方を山に囲まれる母の胎内のよ... -
異界・怪異は今もつづく……大阪歴史博物館の特別展
岩手県遠野市のカッパ淵は、最近まで河童の存在を信じられていたあかしだった。みなが信じているものは社会のアクターとして「存在」する。怪異現象が「現実」だった時代は実は今もつづいている−−。 そんなテーマをとりあげた大阪歴史博物館の「異界彷... -
「真宗移民」の歴史から何を学ぶか 報徳仕法の原動力にもなった宗教移民の研究を眺望する<太田浩史>
福島第一原発事故の取材で訪れた南相馬市は、外の人も受け入れる気さくな人が多かった。昔から外からの人をうけいれてきたからだという。 江戸末期には間引きなどによる人口減少で荒廃していたムラを、北陸や新潟からの「真宗移民」が再生させた歴史が... -
森のめぐみ 熊野の四季を生きる<宇江敏勝>
■20230405岩波新書 大塔山は、古座川町、熊野川町、本宮町、大塔村の4町村(平成の合併以前)にまたがり、ふもとは照葉樹林、頂上ちかくは東北の山のようなブナ林が広がる。熊野の自然の多様性を象徴するような山だ。 山仕事をしながら山民について多く... -
最後の人 詩人・高群逸枝<石牟礼道子>
■藤原書店202303 高群逸枝と石牟礼道子は出会ってはいない。でも石牟礼は高群を母か姉のように思い、逸枝とその夫の橋本憲三は石牟礼のことを後継者のようにかんじていた。 逸枝が亡くなった2年後の1966年、道子は逸枝と憲三の住まいだった東京・世田谷... -
新版 死を想う われらも終には仏なり<石牟礼道子、伊藤比呂美>
■平凡社新書 20230319 シャーマンのような石牟礼と、娘世代の詩人伊藤の「死」をめぐる対談。 いつも「死」の隣にいて、死のうとする人によりそい、自らも自殺未遂をくりかえした石牟礼だからこそ、伊藤の「死」についての直球の疑問に真正面からこた... -
黒神<大重潤一郎監督>
「久髙オデッセイ」をつくった監督の処女作は一度見てみたかった。 舞台は桜島の集落。おばあさんがサツマイモの畝をたて、貧しい夫婦が山刀をふるって山をおおう雑木の藪をひたすら伐採する。若い妻が櫓をこぎ、夫が漁をする。 映像にひきこまれるの... -
巡礼の家<天童荒太>
■20230225 舞台は道後温泉の宿「さぎのや」。 水害で兄以外の家族を亡くした15歳の雛歩は、お世話になっていたおじの家の認知症のおじいさんを「殺して」家を飛び出し、山でたおれているところを「さぎのや」のおかみに救われる。 さぎのやは、帰る場所... -
ナチスのキッチン「食べること」の環境史<藤原辰史>
■共和国20230212 日本の公団団地やマンションのダイニングキッチンや「システムキッチン」は、20世紀前半のドイツの合理的キッチンがモデルという。そのキッチンはアウトバーンと同様、ナチスがつくったものだったというストーリーかと思ったらむしろ逆だ... -
消えゆく“ニッポン”の記録~民俗学者・神崎宣武~
■ETV 230212 宮本常一の弟子だった民俗学者の神崎宣武さんは、郷里の岡山・美星町の宇佐八幡神社で神主をしながら東京を拠点に全国の民俗を調査している。東京の花柳界やテキヤなども調査し、これまでに60冊以上の本を書いてきた。 神崎さんという民... -
昭和・東京・食べある記<森まゆみ>
■朝日新書 230105 東京のまんなかでそだった筆者だから書けた本。子どものころつれていってもらった店がいくつも登場する。 神田の藪そばは有名だけど、浅草の藪、池之端の藪、アメ横の上野の藪もあるとは知らなかった。 浅草の食通通りにある「ぱいち... -
「美食地質学」入門 和食と日本列島の素敵な関係<巽好幸>
■光文社新書221212 日本食が豊かになったのは明治以降、早く見積もっても江戸期以降だから、「日本食が豊かなのはこの地質のおかげ」とは言い切れないと思うけど、発想のしかたはおもしろい。 ごく簡単に結論をかくならば、4枚のプレートがひしめきあい... -
京都不案内<森まゆみ>
■世界思想社 221207 京都には計6年すんでいたから、見知った店や地名、人があちこちにでてきてそれを見るだけでなつかしい。住民でも意外に知らない歴史や「裏話」があちこちに埋まっている。それに筆者の建築や町並みの知識が加わって、生活者視点で京... -
ラーメンの歴史学 ホットな国民食からクールな世界食へ<バラク・クシュナー>
■明石書店2210 数十年前までは、生魚を素材にするすしに不快感を覚える人が世界中に多かったが、今や、すしを食べるのは粋なコスモポリタンとなり、和食がユネスコの無形文化遺産になった。ラーメンも「和食」の一部として世界中で愛されている。そのラ... -
黒潮ストリート<平田毅>
■ぷねうま舎202208 カヤックで岬にちかづくと波がたかくなり、目の高さに近いうねりがわれてデッキをたたく。ひたすらこげばよいが、手を休めたら転覆する。 岬の先端では波の鼓動のリズムがかわる。南方の台風からのうねりをかんじる。 無防備でむき... -
近江商人学入門<末永國起>
■淡海文庫 20210924 近江商人の出身地は、琵琶湖の湖西の高島、蒲生郡の八幡と日野、神埼郡の五個荘、愛知郡の愛知川沿いから犬上郡、機業地の長浜周辺にいたる地域にひろがっている。渡来人によって開かれた古代以来の近江の先進性を基盤に、中世には... -
日本探検<梅棹忠夫>
■講談社学術文庫20220906 知識は、あるきながらえられる。あるきながら本をよみ、よみながらかんがえ、かんがえながら歩く。これは、いちばんよい勉強の方法だとわたしはかんがえている-- あるきながら思想をふかめ、「日本」の文化や歴史の構造を発... -
チロンヌプカムイ イオマンテ(映画)
■20220713「チロンヌプカムイ イオマンテ」というキタキツネの霊送りの祭礼が1986年、屈斜路湖を望む美幌峠で75年ぶりに催された。 アイヌの伝統的な考え方では、動物は自分の肉や毛皮をみやげにして人間の国へやってくる。 我が子のようにかわい...