01思想・人権・人間論– category –
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映画「風の島」<大重潤一郎監督>
■20240115 1983年に沖縄の陶芸家・大嶺實清氏が西表島の沖にある無人島・新城島(パナリ)でつくられていた土器「パナリ焼」を復活させた際の記録映画。 パナリ島はシーカヤックのツアーで訪ねたことがあったが、無人島に古い土器文化があったことなどは... -
人は死んだらどこへ行けばいいのか 現代の彼岸を歩く<佐藤弘夫>
■興山舎20231201 人類の歴史において、死後世界は当然とされてきた。その伝統が壊れつつる。「直葬」がはやり、お盆を先祖との対話の時と考える人は少数派だ。これはおそらく、南北朝以来つづいた日本のムラの衰退と軌を一にしているのではないか。 この... -
火の国の女の日記(上下)<高群逸枝>
■講談社文庫20230924 高群逸枝の自叙伝。途中で亡くなったため、48歳から亡くなる70歳までは夫の橋本憲三が逸枝の日記などをもとにまとめている。「最後の人」の橋本は妻につくした聖人のようだが、この本でははじめ清らかな逸枝を翻弄するエゴイストとし... -
田中正造 21世紀への思想人<小松裕(ひろし)>
■筑摩書房20230816 水俣病の原田正純さん、震災被災地の農業をささえた新潟大の野中教授ら、現場からの発想と行動を徹底した人とおなじにおいがする筆者だ。そして、田中正造こそがその原点であると位置づけているようだ。 正造は伊藤博文とおなじ1841... -
究極日本の聖地<鎌田東二>
■kadokawa20230607 927年の「延喜式」で重要とされた「延喜式内社」2861社は、古代の「聖地」一覧だ。それらをもとに「聖地」とはなにかを考察する。 最初に能登の真脇遺跡がとりあげられていてなつかしい。 真脇遺跡は三方を山に囲まれる母の胎内のよ... -
21世紀の豊かさ 経済を変え、真の民主主義を創るために<中野佳裕・編訳>
■コモンズ 20230524国立民族学博物館の特別展「ラテンアメリカの民衆芸術」で、ラ米の民衆芸術は「多元世界への入口」と結論づけていた。「多元世界」の定義と背景を知りたくて、この本を入手した。 フランスやアルゼンチンの学者がつくった原本「21世紀... -
ひらめきをのがさない! 梅棹忠夫 世界のあるきかた<梅棹忠夫著、小長谷有紀・佐藤吉文編>
■勉誠出版20230501 私が学生時代、梅棹先生は雲の上の人で、2度か3度、講演会などで目にしただけだが、圧倒的な語りに魅了された。 梅棹は「あるきながら、かんがえる」という。彼が世界をどう見て、どのような調査をしていたのか。彼ののこした文章と... -
最後の人 詩人・高群逸枝<石牟礼道子>
■藤原書店202303 高群逸枝と石牟礼道子は出会ってはいない。でも石牟礼は高群を母か姉のように思い、逸枝とその夫の橋本憲三は石牟礼のことを後継者のようにかんじていた。 逸枝が亡くなった2年後の1966年、道子は逸枝と憲三の住まいだった東京・世田谷... -
新版 死を想う われらも終には仏なり<石牟礼道子、伊藤比呂美>
■平凡社新書 20230319 シャーマンのような石牟礼と、娘世代の詩人伊藤の「死」をめぐる対談。 いつも「死」の隣にいて、死のうとする人によりそい、自らも自殺未遂をくりかえした石牟礼だからこそ、伊藤の「死」についての直球の疑問に真正面からこた... -
評伝・石牟礼道子 渚に立つひと<米本浩二>
■新潮文庫20230317 はじめは新聞記者の文章だなぁと思って読みはじめた。ところがしだいに石牟礼道子や渡辺京二が乗り移ったように現実と幻の境をふみこえたり、もどったりする。 正気と狂気、この世とあの世、前近代と近代、陸と海のあいだの渚。 合... -
ドキュメンタリー「ただいま、つなかん」
■20230307 気仙沼市の唐桑半島にある鮪立(しびたち)という漁村はマグロ漁で繁栄し、「唐桑御殿」とよばれる豪勢な屋敷がたちならんだ。そんな豊かな漁村は2011年3月11日の東日本大震災の津波で壊滅する。 主人公の菅野一代さんの唐桑御殿も「全壊」... -
協同の系譜 一楽照雄<佐賀郁朗>2303
■日本農業新聞 農協の中枢にいて政治とも密接なつながりもっていた一楽照雄がなぜ、保守よりも革新に近い、ある意味で農協と敵対する有機農業研究会をたちあげたのか、以前から不思議だった。 この連載は、戦前から「協同組合主義」を体現し、協同組合... -
死は存在しない 最先端量子科学が示す新たな仮説<田坂広志>
■光文社新書230213 最先端の量子論では、過去も現在も未来もゆれうごいていて絶対的な「今」もない。「物」も実在せず「出来事」だけがあるという。「時間は存在しない」(カルロ・ロヴェッリ)にそう書かれていた。だとしたら「死」すらも存在しないので... -
ナチスのキッチン「食べること」の環境史<藤原辰史>
■共和国20230212 日本の公団団地やマンションのダイニングキッチンや「システムキッチン」は、20世紀前半のドイツの合理的キッチンがモデルという。そのキッチンはアウトバーンと同様、ナチスがつくったものだったというストーリーかと思ったらむしろ逆だ... -
時間は存在しない<カルロ・ロヴェッリ、富永星訳>
■NHK出版 時間や空間の大きさは絶対的であるというニュートン力学は、アインシュタインの相対性理論によってくつがえされた、ということは知っていた。では時間とはなにか? 生と死とはなんなのか? 「死後の世界」をどう解き明かすのか? この本... -
三木清 人生論ノート 孤独は知性である<岸見一郎>
■NHK出版230114「人生論ノート」は高校から大学にかけて何度か読んだが、理解しきれなかった。 三木清の出身地、龍野を訪れたのを機に、今度は解説書をよんでみることにした。 三木は結婚翌年の1930年に共産党に資金提供したとして逮捕されて法政大教授... -
月よわたしを唄わせて かくれ発達障害と共に37年を駈けぬけた「うたうたいのえ」の生と死<あする恵子>
■インパクト出版会20230113 ガラスのような感性をもち、37歳であの世にいってしまった「うたうたい」のえさんの足跡を、おなじ感性をもった18歳年上の母がたどったストーリー。 ガラスのような感性が全編にはりつめていて、緊張を解けないのだけど、なぜ... -
詩のこころを読む<茨木のり子>
■岩波ジュニア新書20221227 「自分の感受性ぐらい 自分で守れ ばかものよ」で有名な茨木のり子は昔から好きだったが、彼女が好きな詩ってどんな詩なんだろう? そう思って手にとった。 「生命」をめぐる詩にまずひきつけられる。「空の世界からきて... -
センス・オブ・ワンダー<レイチェル・カーソン、上遠恵子訳>
■新潮文庫 2209 海洋学者のレイチェルは、人間を超越する自然の不思議を実感している。「地球の美しさと神秘を感じとれる人は、科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまれることはけっしてないでしょう。たとえ生活のなかで苦... -
魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣<石井妙子>
■文藝春秋20220918 アイリーンはアメリカ人の父とお嬢さん育ちの母のあいだで生まれたが両親とも離婚し再婚した。居場所を失って米国の祖父母の家で育った。 ユージンは幼いころに母にカメラをあたえられ、絵画をたしなんで写真を「絵」としてつくりこ... -
日本探検<梅棹忠夫>
■講談社学術文庫20220906 知識は、あるきながらえられる。あるきながら本をよみ、よみながらかんがえ、かんがえながら歩く。これは、いちばんよい勉強の方法だとわたしはかんがえている-- あるきながら思想をふかめ、「日本」の文化や歴史の構造を発... -
みな、やっとの思いで坂をのぼる<永野三智>
■ころから 20220529 幼いころ、踊るように歩く水俣病患者のまねをして近所の患者を傷つけた。思春期になると水俣出身を隠すようになり、「患者がいるから私がこんな目にあうんだ」と考えた。子どもができると「この子を水俣出身にしたくない」と長期の... -
須賀敦子全集2
■河出書房新社 須賀敦子は1953年に24歳でパリに留学したが、パリでの暮らしはつらいものだった。帰国して一時NHK国際局で働いたあと、29歳のときカトリック留学生としてイタリアに向かった。イタリアにどっぷりつかり、貧しい鉄道員の家で育った夫ペッピ... -
暮らしの中の文化人類学<波平恵美子>
■福武書店20220503 気鋭の文化人類学が「暮らしと文化人類学」のつながりについて1980年代に新聞に連載したもの。 ふだんは貧しい食事なのに冠婚葬祭にどんちゃん騒ぎをする。数年に一度の行事のために豪華な食器をそろえる……そうした「因習」をやめるこ... -
21Lessons 21世紀の人類のための21の思考<ユヴァル・ノア・ハラリ>
■河出書房新社 20220402 産業革命後、工業国の経済や軍隊は、膨大な数の庶民を必要とした。その結果、20世紀はおおむね、階級や人種などの不平等は縮小してきた。 20世紀の後期は、民主国家が独裁国家を圧倒してきた。民主主義は、情報を処理して決定... -
古都の占領 生活史からみる京都1945-1952<西川祐子>
■平凡社20220415 ある時代を生きて空気感は感じていても、その時代について理解できることなどほんの一部に過ぎない。 筆者は少女時代を、米軍の支配下の京都で過ごした。自分自身の記憶にある当時の空気感の意味を、80人とのインタビューや府庁や市役... -
民俗学入門<菊地暁>
■岩波新書20220403 宮本常一や柳田国男ら、民俗学者ちの本は読んできたが「民俗学」の定義は考えたことがなかった。 柳田は、過去を知ることがよりよい社会をつくる力になると考えたが、今の民俗学は古くさい習俗を記録しているイメージしかない。 だ... -
後世への最大遺物・デンマルク国の話
■後世への最大遺物 20220122 我々は後世に何を遺せるのか。 金も大事だ。金がないなら事業を遺す。その力がないならば思想を遺す。思想は、文学を著述をすることや学生を教えることによって伝えることができる。 内村は 「源氏物語」を「われわれを女... -
内村鑑三 悲しみの使途<若松英輔>
■岩波新書20220117 無教会主義とほかのプロテスタントとはなにが異なるのか。妻と娘を亡くした内村鑑三はそれをどう自分の人生と信仰のなかに位置づけているのか。全国愛農会の創始者・小谷純一が有機農業を広めたことと彼が信じた無教会主義は関係がある... -
みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記<星野博美>
■文春文庫20220112 筆者自身のミッション系の学校での経験、祖父が漁師をしていた外房・御宿で1609年に南蛮船が難破した事実、留学した香港と澳門の経験、キリシタンへの興味からはじめたリュート……。 筆者自身の経験と、キリシタンの歴史が少しずつから...