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死は存在しない 最先端量子科学が示す新たな仮説<田坂広志>

■光文社新書230213
 最先端の量子論では、過去も現在も未来もゆれうごいていて絶対的な「今」もない。「物」も実在せず「出来事」だけがあるという。「時間は存在しない」(カルロ・ロヴェッリ)にそう書かれていた。だとしたら「死」すらも存在しないのでは? そのへんを科学的に論じた本がないかさがしたら、そのものずばりのタイトルの本を見つけた。
 著者によると、量子科学では「真空」は実は「無」ではない。「量子真空」とよばれ、莫大なエネルギーがひそみ、そのなかから素粒子が生まれては消える「場」でもある。この世界の本質は「物質」ではなく「波動」であり「エネルギー」である。ここまでは前述の本と似ていて理解できないでもない。
 我々の生きる世界の「背景」である「量子真空」という世界には「ゼロ・ポイント・フィールド」と呼ばれる場があり、そこに宇宙のすべての出来事の情報が波動情報としてホログラム原理で「記録」されているという仮説を前提に論を展開している。
 予言や予知夢、治療を祈る遠隔治療といった不思議な現象は、宇宙のすべてを記録する「ゼロ・ポイント・フィールド」と接するから生じる。
 人間は死ぬと「ゼロ・ポイント・フィールド」にもどっていく。死後しばらくは生前の記憶や自我がのこっているが、少しずつ自我が消え、大きな生命体の一部になる。
 宗教がかたる「天国」「極楽」とはこうしたゼロ・ポイント・フィールドのことなのだ。だからここに接することができれば、死んだ人とも会える。
 この仮説を信じれば、宗教と科学は融合してしまう。
 夢のある内容だけど、「ゼロ・ポイント・フィールド」という仮説を信じなければなりたたない。仮説が実証されない以上、「ゼロ・ポイント・フィールド」教というべきスピリチュアル本だなと思った。

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▽53 現代の科学は、「生命」も「意識」も「心」も、すべて「物質」が物理的・化学的な相互作用を生じた結果生まれてきたという立場、「唯物論」の立場だ。「物質還元主義」
……現代科学の「第一の限界」は「要素還元主義」。対象を小さな要素に「分解」し「分析」し、その結果を「総合」すれば対象のすべてが解明できるという立場。
 これを超える科学的手法として「複雑系科学」が注目される。
 「意識」「精神」の本質をしろうとして脳を解剖しても本質は知ることができない。
▽58 極微のレベル「素粒子」のレベルで観察すると、「物質」の存在が消えていく。象徴的な例が「光子」が示す「粒子と波動の二重性」
▽60 量子科学では「真空」は実は「無」ではない。それは「量子真空」とよばれ、莫大なエネルギーがひそむ。そのなかから素粒子が生まれては消えていく場でもある。真空から生まれ真空へ帰って行く。
 最先端科学は、この世界の本質は「物質」ではなく「波動」であり「エネルギー」であることを示している。
▽63 一度絡み合った量子同士は、宇宙の彼方にひきはなされても、一方がある状態を示すと、他方も瞬時にその反対の状態を示す。情報伝達は光の速さより速い。「非局在性」
▽63 生物の帰巣能力 解明できない。
 神経の伝達速度よりもはやく反応する野球選手。解明できず。
▽65 物質そのものが原初的な次元で「意識」をもっているのではないか、という仮説。
▽116 量子真空のなかに「ゼロ・ポイント・フィールド」と呼ばれる場があり、そこにこの宇宙のすべての出来事のすべての情報が波動情報として「記録」されているという仮説。波動干渉を利用した「ホログラム原理」で記録されている。
▽118 宇宙はすべて「量子真空」から生まれた。量子真空には宇宙を生み出せるほどの莫大なエネルギーが潜んでいる。
 我々の生きているこの世界の「背景」に「量子真空」とよばれる無限のエネルギーに満ちた世界が存在している

▽122 量子物理学的に見るならば、この世界のすべては「波動」。
▽129 仏教の「唯識思想」では我々の意識の奥には「末那識」とよばれる意識の次元がありその奥には「阿頼耶識」とよばれる次元があるとされ、これはこの世界の過去の出来事のすべての結果であり、未来のすべての原因となる「種子」が眠っているとされる。
古代インド哲学の「アーカシャ」も、宇宙誕生以来のあらゆる情報が「記録」されている場とされる。
▽137 量子真空の「ゼロ・ポイント・フィールド」が記録する情報は「量子的波動」だから減衰はおこらない。
▽143「ゼロ・ポイント・フィールド」に我々の意識がつながるならば、「未来に起こる可能性のある出来事」についても知ることができる。「予感」「予知」「占い的中」がおこる理由。
▽155 「治癒を祈る想念」を送る遠隔治療
▽162 表面意識−静寂意識−無意識−超個的無意識−超時空的無意識
 ここまでいくと、未来に関する情報も感得する。意識の5つの階層。
▽176 死の直前の「過去のすべての思い出が走馬燈のように巡っていく」フラッシュバック現象。我々の無意識がゼロ・ポイント・フィールドにつながると、想像を絶する速さの「情報探索」の力を示す。天才に「アイデアがおりてくる」のも。
▽189 神や仏、天とは「ゼロ・ポイント・フィールド」に他ならない。
▽224 肉体は死んでも「自我意識」は、ゼロ・ポイント・フィールドから自分の肉体や遺族の姿を見ている。「幽体離脱」
 通夜や喪に服する風習は、故人の「自我意識」がまだ、遺族や現実世界での人生に思いを残している期間、の寂しさや不安に沿い続けるためである。
 ゼロでは、しだいに「自我」が消えるからかならず救われる。
▽234 「自我」が消えて「至福の世界」にむかうプロセスを、仏教では「成仏する」とよび、「至福の世界」を「涅槃」とよんだ。
▽278 死後の意識は「地球意識」に拡大し、さらに、宇宙の視点ですべてをみつめる「宇宙意識」へと拡大していく。
▽306 宇宙の歴史とは、量子真空が「自分とは何か」を問い続ける過程である

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