reizaru– Author –
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熊野謎解きめぐり 大地がつくりだした聖地<後誠介>
■はる書房 20221206 熊野には不思議な光景がいくつもあった。火山もないのにたくさんの温泉がわき、奇岩があちこちにあり、それぞれ聖地になっている。なぜ? 科学的に調べるほど神秘的に思えてしまう不思議。科学と神秘は矛盾するわけではないんだな、... -
詩のこころを読む<茨木のり子>
■岩波ジュニア新書20221227 「自分の感受性ぐらい 自分で守れ ばかものよ」で有名な茨木のり子は昔から好きだったが、彼女が好きな詩ってどんな詩なんだろう? そう思って手にとった。 「生命」をめぐる詩にまずひきつけられる。「空の世界からきて... -
映画宣伝おばちゃん 映画と仕事<松井寛子>
■零号出版20221229 大阪で居酒屋を営みながら映画宣伝の仕事をしている松井寛子さんこと「カンコさん」の半生記。 高校を卒業して結婚して子どもができたのに連れ合いは失踪。32歳で友だちと一膳飯屋を開き、いつのまにやら映画の道へ。「市民の映画館... -
「美食地質学」入門 和食と日本列島の素敵な関係<巽好幸>
■光文社新書221212 日本食が豊かになったのは明治以降、早く見積もっても江戸期以降だから、「日本食が豊かなのはこの地質のおかげ」とは言い切れないと思うけど、発想のしかたはおもしろい。 ごく簡単に結論をかくならば、4枚のプレートがひしめきあい... -
京都不案内<森まゆみ>
■世界思想社 221207 京都には計6年すんでいたから、見知った店や地名、人があちこちにでてきてそれを見るだけでなつかしい。住民でも意外に知らない歴史や「裏話」があちこちに埋まっている。それに筆者の建築や町並みの知識が加わって、生活者視点で京... -
映画「ミスター・ランズベルギス」<セルゲイ・ロズニツァ監督>
■20221223 ソ連崩壊前後のリトアニア独立闘争の経緯を、独立運動のリーダーで初代最高会議議長をつとめたランズベルギス氏のインタビューと、当時の膨大な映像で描く4時間の大作ドキュメンタリー。 ピアニストのランズベルギスは言葉のひとつひとつに豊... -
ラーメンの歴史学 ホットな国民食からクールな世界食へ<バラク・クシュナー>
■明石書店2210 数十年前までは、生魚を素材にするすしに不快感を覚える人が世界中に多かったが、今や、すしを食べるのは粋なコスモポリタンとなり、和食がユネスコの無形文化遺産になった。ラーメンも「和食」の一部として世界中で愛されている。そのラ... -
福島がそこにある<ロシナンテ社>
■解放出版社 20221029 有機農家、自主避難者、支援した人……福島の被害と苦しみをオムニバス形式で紹介する。「被曝すると障害者が生まれるかもしれないからというもっともな理由で語られていました。……ある人はお姑さんから「あなたがこの地で避難せずに... -
映画「荒野に希望の灯をともす」
■221201 中村哲さんの35年の活動の経緯を丹念に記録したドキュメンタリー。 登山隊の医師としてパキスタンを訪れたとき、貧しい人が殺到してなにもしてあげられなかったことを悔い、ボランティア医師として再訪し、ほかの医師が手をつけないハンセン氏... -
ある男<平野啓一郎>文春文庫
映画を最初に見た。その感想は下記のようなものだった。 ストーリーは原作もほとんど変わらないが、ラストだけは大きくちがった。 小説の結末は凡庸だったが、里枝一家の成長物語という意味づけが映画よりよくわかった。 原作と映画、どちらがよいか... -
裸のムラ<五十旗頭幸男監督>
■20221126 私はこの映画の舞台になった石川県で4年間新聞記者をしていた。 石川県のような超保守県で選挙を取材すると、日の丸の鉢巻きをしたどぶねずみスーツと作業服の建築会社員ら数百人が「ガンバロー!」をさけび、たすきをつけた候補者が支持者の... -
映画「ある男」(石川慶監督)
「月刊風まかせ」の映画評で園崎明夫さんがべた褒めしているのをみて映画館に足がむいた。原作は平野啓一郎。 赤ん坊を亡くして離婚し、幼い息子とともに実家にもどってきた里枝は、山仕事のために移住してきた大祐と恋に落ちて再婚する。息子とあ... -
百姓の百の声<柴田昌平監督>
農家の会話の内容はぼくら都市住民には外国語のようにチンプンカンプン。生活から「農」をうしなったわれわれにとって「百姓の国」はもはや異国になってしまった……という場面からはじまる。 農文協の職員は、50台のスーパーカブで村々を訪ね農家の話を... -
センス・オブ・ワンダー<レイチェル・カーソン、上遠恵子訳>
■新潮文庫 2209 海洋学者のレイチェルは、人間を超越する自然の不思議を実感している。「地球の美しさと神秘を感じとれる人は、科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまれることはけっしてないでしょう。たとえ生活のなかで苦... -
LAST STAGE 尾崎豊展
尾崎が死んで今年で30年と気づいて大丸梅田店に足をはこんだ。 没後10年の展示会をおもいだした。尾崎ファンらしく、ちょっとギラついた、あるいは繊細な雰囲気の同年代が多かった。 あれから20年、客の中心は、どこにでもいるおっさんおばさんだ... -
魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣<石井妙子>
■文藝春秋20220918 アイリーンはアメリカ人の父とお嬢さん育ちの母のあいだで生まれたが両親とも離婚し再婚した。居場所を失って米国の祖父母の家で育った。 ユージンは幼いころに母にカメラをあたえられ、絵画をたしなんで写真を「絵」としてつくりこ... -
黒潮ストリート<平田毅>
■ぷねうま舎202208 カヤックで岬にちかづくと波がたかくなり、目の高さに近いうねりがわれてデッキをたたく。ひたすらこげばよいが、手を休めたら転覆する。 岬の先端では波の鼓動のリズムがかわる。南方の台風からのうねりをかんじる。 無防備でむき... -
近江商人学入門<末永國起>
■淡海文庫 20210924 近江商人の出身地は、琵琶湖の湖西の高島、蒲生郡の八幡と日野、神埼郡の五個荘、愛知郡の愛知川沿いから犬上郡、機業地の長浜周辺にいたる地域にひろがっている。渡来人によって開かれた古代以来の近江の先進性を基盤に、中世には... -
日本探検<梅棹忠夫>
■講談社学術文庫20220906 知識は、あるきながらえられる。あるきながら本をよみ、よみながらかんがえ、かんがえながら歩く。これは、いちばんよい勉強の方法だとわたしはかんがえている-- あるきながら思想をふかめ、「日本」の文化や歴史の構造を発... -
調べる技術 書く技術<佐藤優>
■SB新書20220910 毎月平均2冊のペースで本をだし、コラムや連載などの締め切りはひと月約90。ひと月に書く原稿の分量は約50万字。執筆のために、多い月は500冊以上の本に目をとおす……そんな超人が凡人になにをおしえてくれるのか。 SNSやネット... -
映画「日本原 牛と人の大地」20220908
岡山県奈義町の陸上自衛隊日本原演習場。かつて2つの村があったが、日露戦争後に陸軍の演習場になり、戦後は連合軍をへて自衛隊が使用している。 広大な敷地には、住民の入会地があり、山すそまで田畑がひろがり、住民がでいりして耕作をつづけていた。... -
失われた時の中で<坂田雅子監督>20220905
ベトナム帰還兵から写真家になり、アジアの民衆を撮ってきた夫が2003年に急逝する。妻である監督は、夫の死の遠因が枯葉剤かもしれないときき、ドキュメンタリー映画の撮影を決心し、ベトナムに飛び、かよいつづけている。 枯葉剤はベトナム戦争中に米... -
ボローニャ国際絵本原画展
西宮市の大谷記念美術館に「ボローニャ国際絵本原画展」を見に行った。10年ぶりかな。 いろとりどりのプラスチックをたっぷりつかってたのしく生活したら、それが海にながれて、魚がたべて、プラスチックでいろどられた魚を「ああ、おいしい!」と人間... -
眠れないほどおもしろい日本書紀<板野博行>
■三笠書房20220810 高校時代、古事記は神話がおもしろかったけど、4倍の長さの日本書紀は読みとおせなかった。 古事記は、自国民にむけてかかれたのに対して、日本書紀は国家によって編纂された「正史」であり、皇室の支配の正当性を国の内外(特に中国... -
映画「岡本太郎の沖縄」20220815
▽太郎を魅了した沖縄の魂を再現 岡本太郎は芸術家ではあるけれど「画家」ではない。 画家ならば、自分の作品を大切にするのだけど、太郎は自分の作品を次々に上書きしていった。「岡本太郎展」(中之島美術館で開催中)では、いったい太郎はなにものだっ... -
チロンヌプカムイ イオマンテ(映画)
■20220713「チロンヌプカムイ イオマンテ」というキタキツネの霊送りの祭礼が1986年、屈斜路湖を望む美幌峠で75年ぶりに催された。 アイヌの伝統的な考え方では、動物は自分の肉や毛皮をみやげにして人間の国へやってくる。 我が子のようにかわい... -
みな、やっとの思いで坂をのぼる<永野三智>
■ころから 20220529 幼いころ、踊るように歩く水俣病患者のまねをして近所の患者を傷つけた。思春期になると水俣出身を隠すようになり、「患者がいるから私がこんな目にあうんだ」と考えた。子どもができると「この子を水俣出身にしたくない」と長期の... -
文覚 人物叢書<山田昭全>
■吉川弘文館 20220713 30年以上前、隠岐の「文覚窟」という洞窟近くでキャンプをした。京都から流された坊さんだとは聞いたが、平家物語にもでてくる有名な人だとは考えもしなかった。 文覚は私の好きな明恵上人の師匠にあたり、伝説に彩られているが... -
映画「僕とケアニンと島のおばあちゃんたちと。」
鹿児島港からフェリーで12時間、島民わずか100人というトカラ列島・宝島の介護施設を舞台にしたドキュメンタリー。 宝島は絶海の孤島として有名になったことがある。監督のことも映画のことも知らず、ただ宝島を知りたくて見てみた。 1992年生まれの若... -
にっぽん情哥行<たけなか・ろう>
■ミュージックマガジン 20220704 民謡の元歌は春歌であることのほうが多いのだから、春歌を切り棄てると、いつどこで歌が生まれたのかわからなくなってしまう。秋田音頭はもとは春歌の親玉であり、夜ばいから夫婦生活、老人セックスまでうたっていた。 ...