「久髙オデッセイ」をつくった監督の処女作は一度見てみたかった。
舞台は桜島の集落。おばあさんがサツマイモの畝をたて、貧しい夫婦が山刀をふるって山をおおう雑木の藪をひたすら伐採する。若い妻が櫓をこぎ、夫が漁をする。
映像にひきこまれるのだけど、ナレーションが暗くて劇画チックで都会のインテリの目をかんじてしまう。学生運動が敗北する1970年という時代故なのだろうか。
ぼくの知る1970年の農村は、子どもが走りまわり、五右衛門風呂を「あちち」といいながらはいり、貧しいけど独特の明るさがあった。
でも物語が進むにつれて、そんな違和感が消えていく。
「盆踊り」の指笛は沖縄のよう。「死からの再生」という説明が添えられていたが、これは「死者との交流」ではないかな。それのほうがいろいろな意味で救いになる。
桜島って沖縄や奄美の文化圏なのだろうか? と不思議に思っていたら、「黒神は奄美の人が移住してきた」と上映後に解説してくれて納得できた。
賽の河原の石を積む地獄の罰のように思われた藪の伐採は、物語の終盤、頂のてっぺんまで拓かれる。そこから子どもが立ち小便をする。
アニメの「太陽の王子ホルスの冒険」を思わせる人間賛歌だった。
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