20映画など– category –
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大重潤一郞監督のドキュメンタリー2作 基地や公害を民俗誌的な深みで描く
能勢 能勢ナイキ反対住民連絡会議 ナイキJは、アメリカの核ミサイルから核を抜いた国産ミサイルで、1970年に能勢町への配備計画があきらかになった。時代遅れの兵器だったが、いつでも核兵器に転換できる。すでに北海道や関東、九州に配備が決まってい... -
ラ・ヨローナ〜彷徨う女<ハイロ・ブスタマンテ監督>
ラ・ヨローナ(泣く女)とは、夫に捨てられた女が、子どもを溺死させて自らも自殺し、ずぶ濡れの白い服をまとう亡霊となってあらわれる、という中南米では有名な伝説だ。ガルシア・マルケスの魔術的な世界にもつながるこの伝説をベースに、グアテマラの... -
黒神<大重潤一郎監督>
「久髙オデッセイ」をつくった監督の処女作は一度見てみたかった。 舞台は桜島の集落。おばあさんがサツマイモの畝をたて、貧しい夫婦が山刀をふるって山をおおう雑木の藪をひたすら伐採する。若い妻が櫓をこぎ、夫が漁をする。 映像にひきこまれるの... -
ドキュメンタリー「ただいま、つなかん」
■20230307 気仙沼市の唐桑半島にある鮪立(しびたち)という漁村はマグロ漁で繁栄し、「唐桑御殿」とよばれる豪勢な屋敷がたちならんだ。そんな豊かな漁村は2011年3月11日の東日本大震災の津波で壊滅する。 主人公の菅野一代さんの唐桑御殿も「全壊」... -
ピカソとその時代<国立国際美術館>
ドイツのベルリン国立ベルクグリューン美術館のコレクションをあつめた「ピカソとその時代」を見に行った。ほとんどの展示品が撮影可というのがすごい。 子どものころピカソの絵は「へたくそ」の代名詞だった。「うわー、なにこれ、ピカソの絵みたい!... -
消えゆく“ニッポン”の記録~民俗学者・神崎宣武~
■ETV 230212 宮本常一の弟子だった民俗学者の神崎宣武さんは、郷里の岡山・美星町の宇佐八幡神社で神主をしながら東京を拠点に全国の民俗を調査している。東京の花柳界やテキヤなども調査し、これまでに60冊以上の本を書いてきた。 神崎さんという民... -
イニシェリン島の精霊(映画)
舞台はアイルランドののどかな離島。 人がよいけどさえない主人公はある日、音楽家の親友に「おまえみたいに退屈なやつとは金輪際つきあいたくない」と絶交される。 パブで毎日顔をあわせるが、いっさい会話を拒まれる。無理に話しかけると、「今後お... -
映画「糸」(2020年)
中島みゆきの「糸」が好きだから、それをタイトルにとった映画をアマゾンで見た。 平成元年生まれの漣と葵は13歳で出会って恋をするが、葵は母の恋人の暴力をうけていた。漣は葵と駆け落ちをこころみるが、警察に保護されて引き離されてしまう。 8年後... -
映画宣伝おばちゃん 映画と仕事<松井寛子>
■零号出版20221229 大阪で居酒屋を営みながら映画宣伝の仕事をしている松井寛子さんこと「カンコさん」の半生記。 高校を卒業して結婚して子どもができたのに連れ合いは失踪。32歳で友だちと一膳飯屋を開き、いつのまにやら映画の道へ。「市民の映画館... -
映画「ミスター・ランズベルギス」<セルゲイ・ロズニツァ監督>
■20221223 ソ連崩壊前後のリトアニア独立闘争の経緯を、独立運動のリーダーで初代最高会議議長をつとめたランズベルギス氏のインタビューと、当時の膨大な映像で描く4時間の大作ドキュメンタリー。 ピアニストのランズベルギスは言葉のひとつひとつに豊... -
映画「荒野に希望の灯をともす」
■221201 中村哲さんの35年の活動の経緯を丹念に記録したドキュメンタリー。 登山隊の医師としてパキスタンを訪れたとき、貧しい人が殺到してなにもしてあげられなかったことを悔い、ボランティア医師として再訪し、ほかの医師が手をつけないハンセン氏... -
裸のムラ<五十旗頭幸男監督>
■20221126 私はこの映画の舞台になった石川県で4年間新聞記者をしていた。 石川県のような超保守県で選挙を取材すると、日の丸の鉢巻きをしたどぶねずみスーツと作業服の建築会社員ら数百人が「ガンバロー!」をさけび、たすきをつけた候補者が支持者の... -
映画「ある男」(石川慶監督)
「月刊風まかせ」の映画評で園崎明夫さんがべた褒めしているのをみて映画館に足がむいた。原作は平野啓一郎。 赤ん坊を亡くして離婚し、幼い息子とともに実家にもどってきた里枝は、山仕事のために移住してきた大祐と恋に落ちて再婚する。息子とあ... -
百姓の百の声<柴田昌平監督>
農家の会話の内容はぼくら都市住民には外国語のようにチンプンカンプン。生活から「農」をうしなったわれわれにとって「百姓の国」はもはや異国になってしまった……という場面からはじまる。 農文協の職員は、50台のスーパーカブで村々を訪ね農家の話を... -
LAST STAGE 尾崎豊展
尾崎が死んで今年で30年と気づいて大丸梅田店に足をはこんだ。 没後10年の展示会をおもいだした。尾崎ファンらしく、ちょっとギラついた、あるいは繊細な雰囲気の同年代が多かった。 あれから20年、客の中心は、どこにでもいるおっさんおばさんだ... -
映画「日本原 牛と人の大地」20220908
岡山県奈義町の陸上自衛隊日本原演習場。かつて2つの村があったが、日露戦争後に陸軍の演習場になり、戦後は連合軍をへて自衛隊が使用している。 広大な敷地には、住民の入会地があり、山すそまで田畑がひろがり、住民がでいりして耕作をつづけていた。... -
失われた時の中で<坂田雅子監督>20220905
ベトナム帰還兵から写真家になり、アジアの民衆を撮ってきた夫が2003年に急逝する。妻である監督は、夫の死の遠因が枯葉剤かもしれないときき、ドキュメンタリー映画の撮影を決心し、ベトナムに飛び、かよいつづけている。 枯葉剤はベトナム戦争中に米... -
ボローニャ国際絵本原画展
西宮市の大谷記念美術館に「ボローニャ国際絵本原画展」を見に行った。10年ぶりかな。 いろとりどりのプラスチックをたっぷりつかってたのしく生活したら、それが海にながれて、魚がたべて、プラスチックでいろどられた魚を「ああ、おいしい!」と人間... -
映画「岡本太郎の沖縄」20220815
▽太郎を魅了した沖縄の魂を再現 岡本太郎は芸術家ではあるけれど「画家」ではない。 画家ならば、自分の作品を大切にするのだけど、太郎は自分の作品を次々に上書きしていった。「岡本太郎展」(中之島美術館で開催中)では、いったい太郎はなにものだっ... -
チロンヌプカムイ イオマンテ(映画)
■20220713「チロンヌプカムイ イオマンテ」というキタキツネの霊送りの祭礼が1986年、屈斜路湖を望む美幌峠で75年ぶりに催された。 アイヌの伝統的な考え方では、動物は自分の肉や毛皮をみやげにして人間の国へやってくる。 我が子のようにかわい... -
映画「僕とケアニンと島のおばあちゃんたちと。」
鹿児島港からフェリーで12時間、島民わずか100人というトカラ列島・宝島の介護施設を舞台にしたドキュメンタリー。 宝島は絶海の孤島として有名になったことがある。監督のことも映画のことも知らず、ただ宝島を知りたくて見てみた。 1992年生まれの若... -
映画「ドンバス」202206
2014年、ウクライナでヤヌコヴィチ政権たおすマイダン革命(政変)が起こると、これに反対する急進派がドンバス地方のドネツク州とルガンスク州で州庁舎を占拠して「人民共和国」を名乗り、ウクライナからの分離を求めて住民投票を実施した。ウクライナ... -
スープとイデオロギー<ヤン・ヨンヒ監督>
■20220611 ヤン・ヨンヒ監督は私と同年代の在日朝鮮人の二世だ。その彼女がみずからの家族を何年もかけて撮ったドキュメンタリー。 父母は朝鮮総連の活動家で、家には金日成らの写真を飾り、監督の兄3人は「帰国事業」で北朝鮮にわたった。 ヨンヒ自身... -
教育と愛国 202205
戦後なくなった「道徳」という科目が正規の科目として復活した。「おはようございます!」とあいさつするとき、①あいさつの前に頭を下げる②あいさつしながら頭を下げる③あいさつをしてから頭を下げる どれが正解でしょう? こんな珍妙な「道徳」を大ま... -
映画「ドライブ・マイ・カー」
舞台俳優で演出家の主人公は、脚本家の妻と暮らしていたが、妻は突然死してしまう。 妻は主人公の目を盗んで浮気していた。そのことを主人公は知りながら、関係が壊れるのをおそれて知らないふりをしていた。 妻の死から2年後、広島で演劇の演出をまか... -
映画「アルキメデスの大戦」
■20220123 ヤングマガジンで今も連載している。 100年にひとりの数学の天才、元帝大生の櫂直が主人公。天才的な頭脳を生かして、巨艦建造を阻み、ミサイルやガスタービンといった先進技術を実用化し、ヒトラーやアメリカのルーズベルト大統領ともわた... -
水俣曼荼羅 権力とたたかいつづけるドンキホーテたちの群像劇 202112
ジョニー・デップ主演の「MINAMATA」は、「水俣病は終わっていない」という情報は世界に発信したが、何がどう終わっていないかは伝えなかった。原一男監督は20年の歳月をかけて「終わってない」現実をひとりひとりの生き様を通して描き切った。その重み... -
「男はつらいよ50 おかえり寅さん」
昨年封切り。amazonプライムで見た。 みつおが大人になって、6年前に妻を亡くして中学生の娘と2人で住んでいる。その設定だけでもたまらんな。 今は小説家。高校時代の恋人のいずみ(後藤久美子)がヨーロッパから一時帰国して出会うという物語。女性... -
MINAMATA 20210929
ユージン・スミスと水俣を描いた映画。楽しみにしていた。「ライフ」で活躍する巨匠だが、沖縄戦の取材の際のけがで、食事もろくにできず、アルコールに頼っていた。 そんなユージンが水俣と出会い、患者らとふれあうなかで生きがいを回復させていく。... -
ミス・マルクス(映画)
■20210923 マルクスの娘エリノアが主人公。 兄弟姉妹のなかでもっともマルクスに似て、戦闘的な革命家だった。 マルクスは天才だが、生活は親友のエンゲルスに頼り切りで、学問のことしか考えない堅物だった。一方で家政婦との間にも子どもをつくり、エ...