MENU

SIGHT2011秋 原発特集

■SIGHT2011秋 原発特集

原発特集。
電力会社は競争原理が働かない。「総括原価方式」によって、コストを増やすほどそのぶん電気料金を上げられるから、無駄を削るインセンティブが働かない。電力会社は取引先企業から買いたたく必要がない。そのかわりに、取引会社が電力会社からの天下りを受け入れる。それによって地域経済を支配する。さらに、電力料金の税金がエネルギー特別会計の歳入になり、経産省の権限になる。民間会社の欲と官僚の非効率をあわせもつという点ではJR以上だろう。
欧米諸国では軍が原子力にかかわっているが、日本は電力会社しか原子炉をもっておらず、原子炉を管理・審査できる人材はメーカーと電力会社にしかいない。泥棒が泥棒を審査する形になっている。
明治以降、中央は近代化を進めるが、自給自足できる田舎は「食っていければいいんじゃない」ぐらいの感じだった。中央と地方は利害が独立し、「中央VS.地方」の構図だった。それが、戦争や教育を通して「中央の下に地方がある」という垂直的な関係にされていく。戦後直後の青年団や公民館などの運動は、地方の独立をはかり「中央VS.地方」の意識を一時的に目覚めさせたが、高度経済成長を経て中央に地方が従属するようになる。そこから原発ができる条件が熟していったという。「自立」が損なわれたからこそ原発を呼び込む土壌がつくられてしまった。
一度、原発をつくると、固定資産税は減るのに施設の維持費がふくらむ。原発依存の巨大な予算規模になるから、さらに原発関連施設をつくることになる。まさに麻薬中毒患者といっしょだ。
地方の「依存」体質については坂本龍一も「国が加害者で自分が被害者って構図になっても、助けてくれるのも国ではないかって思ってる自立性のなさ」を批判する。一方でわずかながら、岩手県住田町のように「国も県も何も言ってこないから俺たちの町でやる」と早い時点で木造仮設住宅をつくると決めたという。
内田樹や高橋源一郎は、ひとひねりした論が説得力がある。「悪いけど、景況なんてどうだっていいよ。……福島の汚染地域が居住不能になったということは、それだけの面積の領土を失ったのと同じことだよね。尖閣とか竹島とかで騒いでる場合じゃないよ」「原発問題で、日本の統治者は国土保全よりも国民の健康よりも、経済を優先したことがはっきりしたからね。馬渕、野田、海江田の現実主義って、お金の話だからね。『脱原発はいいけど、でも、お金どうすんの』って。すごくずれてることに気づかない」……
===============

□江田憲司 みんなの党
▽東電は震災前に10メートル以上の津波がくることを想定していた。なのに、これまでずっと「想定外」と言ってきた。電力会社というのは官僚以上に官僚組織。=公益法人〓
□古賀茂明・元経産省
▽総括原価方式によって、無駄を削るインセンティブが働かない。電気料理金に、公正報酬率という、かかったコストの3%ぐらいは利益を乗せることができる。利益を増やすにはコストを増やした方がいい。だから電力会社は買いたたかない。高くかわりに、取引会社が電力会社からの天下りを受け入れる。
▽電力料金の税金がエネルギー特別会計の歳入になる。それが経産省の権限に。電力関係は独法や公益法人、関連団体・企業が星の数ほどあり、それがキャリアだけでなくノンキャリも含めた天下り先になっている。
アメリカもフランスもドイツもイギリスも、軍が原子力にかかわっている。日本は電力会社しか原子炉をもっていない。原子炉を管理・審査する能力がある人は、メーカーと電力会社にしかいない。泥棒が泥棒を審査することになる。
▽世界では新しい分散型の電力システム開発が進みつつある。震災が起きて、日本IBMやGEジャパンがスマートグリッドの大規模実験にしゃかりきに取り組んでいる。
……再生可能エネルギーの全量買い取り法案はまやかし。電力会社が買うという法案だから、中央集権は温存できる。高い電力でも電力会社が買うことを義務づけるとすれば、電力会社は「再生可能エネルギーはコストが高いですから」という理論で攻めてくるでしょうね。
□小出裕章
▽福島の事故がどれほど深刻かわかった学者だって、「いやたいしたことありません」と発言する。本当にバカで、事態がわからないまま「大丈夫、大丈夫」と言っていたアホな学者もいたはずです。……
□開沼博
▽「カネと地位ほしさに蠢く悪者たちと健気に戦う聖人君子の運動家」というイメージを持ってしまいがちだけど、それって相当バイアスがかかったものだよなって……
▽明治以降、中央はひたすら近代化しようとするけれども、田舎は自分たちである程度自給自足できてるし、「食っていければいいんじゃない」ぐらいの感じだった。……
農作業やりながら地元のコミュニティの中で生活していけていた人が、それまで利害が独立していた中央と地方というものが、いつの間にか、中央の下に地方がある、という垂直的な関係にされていった。戦争がその役目を果たしたが、戦後も、その流れが引き継がれて、そこから原発ができる条件が熟していく。
(中央VS地方だった明治、それが中央に地方が従属するようになる。戦後直後の加藤勧一郎らの取り組みはVSの意識を目覚めさせたが、すぐに屈服させられた〓〓)
▽原発をつくったあと、固定資産税はだんだん減る。つくった施設の維持費がふくらむ。町自体が、原発で食っていく巨大スケールになっちゃってるから、今さら原発を止めるなんて言えない。それどころか、それを維持するために、さらに原発関連施設をつくったり、プルサーマルを始めたりする。いわば中毒症状……〓
▽バブル期にできたリゾート観光施設に比べると、原発は少なくとも30−40年は、地域に金を落としつづけ、雇用を作りつづける。地方は八方ふさがりで、出口と言えるのは原発だけ。日本の困難が如実にあらわれている(〓それしか生き残れない構造=落合氏の本)
□和田光弘弁護士
▽89 文科省がM8クラスが起きる可能性があると発表しているのに、裁判所が、東電の甘い判断で十分だと判断する。
▽巻町 表立って反対と言えない人には陰でバックアップしてもらい、表では原発反対の人たちが運動をやる。住民投票条例が町議会で通らないから、自主投票を発案する。2週間ぐらいの期間で自主投票をして、夜になるとみんな来て投票していく。90%の人が原発反対に投票し、その勢いで投票を組織したリーダーが町長選挙にでて勝った。町議も多数派を占めた。原発計画の中心部分の町有地を反対している人たちに売った。……司法で止めるのは難しい。勝ったところはみんな行政で止めている。
□田中三彦
▽原発がたつと、立派な道路や学校、図書館……ができ、そうした地域を維持するために、もうひとつ原発がほしくなる。原発が建つことで、地域の文化的・社会的な構造ががらりと変わってしまう(〓伊方の例)
□丸山重威
▽メディアが、最初にまず権力のところを回ってニュースの端緒をつかう、この習慣そのものも考え直していかなければ(〓上からの方が効率=生産性がよい。生産性が低い仕事をやるしんどさに耐えられない。知的肺活量がない)
□坂本龍一
▽アメリカは原発事故で最初、助けにいったのに、日本側が拒んだ。
▽国が加害者で自分が被害者って構図になっても、助けてくれるのも国ではないかって思ってる自立性のなさ。
「国の指針が出ないから何もできません」って言ってるでしょ。でも、岩手県住田町〓の町長は「国も県も何も言ってこないから俺たちの町でやる」って、早い時点で木造仮設住宅をつくるって決めて……
▽アメリカやオーストラリア、アフリカの先住民族の居留地で、先住民族を安い労働力として使ってウランを掘る。だから白血病が多い。日本でも定検で放射能で汚れたところをきれいにしなければいけない。白血病で亡くなった人の労災認定も出ている。
原発は、正常な状態であっても、人の健康を脅かす労働なくしては動かないものなんですよ。そんな技術ってありますか?
▽ラジカルに明確な思想的なスタンスを明らかにする。海外では「あたりまえですね」……西洋社会は日本と反対で、曖昧だと「こいつバカなんじゃないか」って思われる社会。だからウソでも人の意見でもいいから、自分でちゃんと言う、、、と。

□内田樹×高橋源一郎
▽高橋 僕はエコとかスローフードが嫌いだったしね。……
▽高橋 野田さんとか馬渕さんとか海江田さんの論文、どれもすさまじい内容。何が一番すごいって、3・11が起こってない!……敗戦以来の大事件を「未曾有の大惨事」って言葉であっさり処理している。そんな言葉を使った瞬間、ある種の定型の中にはいってしまう。地震が起こったあと、発想も感じ方も1ミリも変わっていない。
▽内田 原水爆実験どんどんやっていたころ、ストロンチウムが降ってくるからっていうんで、必死で傘さしてたじゃない。雨に当たったらハゲるって。……これからしばらくは放射能が完全に浄化できない以上は、どうやってそれと共存していくのかを考える。
高橋 「風の谷のナウシカ」だよね。……腐海とともに生きる。
▽フィンランドの核廃棄物最終処分場の「10万年後の安全」というドキュメンタリー。政府側と反原発側できちんとコミュニケートする。政府の側も隠さない。フィンランドみたいに、完全な透明性の下で運営されている原発と、日本のような不完全な透明性の民主主義の下で行われる脱原発だったら、どっちがいいかというと……フィンランドのほうが絶対安全な気がするんだ。
▽152 内田 「原発で創出した雇用はどうするんだ」って言われたら絶句しちゃうでしょ。優先順位つけなくちゃいけないんだけど、それができないんだ。はっきりしているんだよ。1番、国土の保全、2番、国民の健康。悪いけど、景況なんてどうだっていいよ。……福島の汚染地域が居住不能になったということは、それだけの面積の領土を失ったのと同じことだよね。尖閣とか竹島とかで騒いでる場合じゃないよ。
▽高橋 戦後日本は天皇制の国家をやめて、平和国家になった、っていうのは嘘で「金でいこう」ってことになった。スローガンは何かっていうと「金が一番」。
▽154 内田 身体の欲望ってあるレベルは超えられない。うまいもん食って、ええべべ着て……。でも、ええ家住んで、ええ企業の社員になって、利回りのいい債権買って……となるとだんだん記号性が高まって抽象的になる。記号的な欲望にはリミッターがかからない。欲望が抽象的、記号的になるにつれて、破壊されるものが幾何級数的に増えていく。……バブルの時代の欲望は食とセックスが中心だったけど、それが記号化していたから。……身体のほうは毎晩三ツ星レストランでフレンチを食いたいわけないじゃん。それができるのは、「脳が記号を食ってる」からなんだよ。……バブル時代に渦巻いていたのは欲望じゃなくて、イデオロギーだった。坂口安吾が「堕落論」を書いたときの欲望には身体の裏付けがあった。今の欲望には身体の裏付けがない。
▽野田の就任演説。アメリカの報道官は「これ、同じ話、5回ぐらいきいたんですけど」って。どの首相が何を言ったのか個体識別ができないって。
……記号的な政治はダメ。身体実感に裏付けられた政治じゃないと。……田中角栄って、目の前に来た人の面倒をどんどん見る。「数の力」のベースにあるのは、具体的な顔のある「ひとり」なんだよ。そういう「ひとり」とのかかわりを積み重ねて政治運動を牽引していくっていう発想は今の政治家には足りない。
▽159「風の谷」は若者がいない国だった。21世紀に本のモデルだったのか。だからナウシカみたいな女性首相が出てくるべきなんだよ。……でも、ナウシカみたいな子って、結局、出てくるとしたら、天皇家からなんだよね。
今の日本で、国土の保全と国民の健康を最初に考えて、それだけを祈っている人、天皇家しかないもの。
高橋 だって今、一番ラディカルなリベラリストは天皇家だもん。
内田 憲法を遵守して9条も大事にしているしさ。いろいろな利害がからまって、さっぱり前に進めないなかで、そういうのを全部削ぎ落として、純然たる日本の国益とは何かってこと考えてる人って天皇しかいないじゃない?
(非効率としての天皇 祭りや寺などと同様)〓
▽内田 原発問題で、日本の統治者は国土保全よりも国民の健康よりも、経済を優先したことがはっきりしたからね。馬渕、野田、海江田の「現実主義」って、お金の話だからね。「脱原発はいいけど、でも、お金どうすんの」って。すごくずれてることに気づかない。
今の日本で「現実主義とは金の話のことだ」というイデオロギーに「それは違います」と言えるのは天皇だけだよ。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次