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若き友人たちへ 筑紫哲也ラスト・メッセージ

<筑紫哲也> 集英社新書 20091127
朝日ジャーナルのころ、すっかりナンパ雑誌になったと思った。ニュース23がはじまったときも、久米宏に比べてパンチがないなあと思った。でもしばらくすると、23のほうがおもしろくなってきた。派手さはないけど、独特の知性というのか。
憲法への思い。やわらかい物言いだが、しっかり
小泉とオペラの劇場であう。「オペラなんか見やがって」という批判には反論する。
自分自身を突き放す目。福沢諭吉と似ている。

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▽21 「心配性のジャーナリズム」を掲げてきた。世の中の大多数の人たちがどっとひとつの方向に向かおうとしたときなど、マイナスの麺を言い立てる。
▽41 自分の身を置いているところでもつ実感とそうでないものとにはどうしても距離がある。キャスターという仕事を引き受けて以来、私は土日に東京にいたことはほとんどない。……日本という国は面白い。出かけていくと何か必ずあるんです。
▽46 憲法 ベアテによる男女平等条項 女性は戦前の帝国憲法では、ほとんど人間扱いされていなかった。人格はまったく認められておらず、財産権も選挙権もない。子どもを産まなければ夫は簡単に離縁できる。慰謝料も払われない。
▽51 日本人論を好む日本人 巨大文明の周縁にいるから、他と自分との関係が非常に気になる、という地政学的な宿命をもっていたのでは。欧米からみると遠い東の国であり、シルクロードのどん詰まりが正倉院だった。
▽65 新渡戸稲造「武士道」〓 ブームになる動機に共通したものは「自分は何者か」という問いへの答えさがし。欧米人は「宗教なしで、どうして道徳教育が成り立つのか」と絶句する。新渡戸の妻はクエーカー。瞑想をするところが日本の禅宗ととても近い。……新渡戸は瞑想と自己反省の結果、日本人には一種の「道心」があることに気づいた。……新渡戸の人生をたどると、彼が「侍日本バンザイ」と言うはずがない。〓幸福論にも
▽78 「菊と刀」 正体のわからない日本をどう見ればよいのか……と戦時情報局が文化人類学者のベネディクトに委嘱した。
「敗北を抱きしめて」日本占領を描いた名著〓
▽89 イスラムの自爆攻撃は、特攻隊の歴史に学んだという説が強い。イスラムの教義には、自爆なんてものはもともとない。
▽128 60年間、自国の軍隊で1人の兵も外国人も殺してはいない。外国の軍隊に1人の日本人も殺されてはいない。これは国家としては相当なことだと思う。その同じ60年間、アメリカは戦争ばかりやってきた。
▽133 田中清玄という右翼の人、亡くなる前、憲法は変えるべきじゃない、と意見を変えていた。戦後アジアの人と話すうちに、信頼が得られていないことに気づく。それが得られないうちは憲法を変えてはいけないと思うようになった。
今の日本の憲法改正論議は、ご近所がどういうリアクションをうるか、ということをこれっぽっちも考えていない。それどころか、外側がどう思おうがよけいなことだと開き直る。
▽155 立花隆 噂や伝聞を確たる証拠、証言、数字によって裏付けた。
政治部で、旧態依然の政治紙面に抵抗して衝突してジャーナルに飛ばされた。そこで立花に原稿依頼。社内では不評だった。「そんなに立花隆が嫌なら他の人に代えてもいいです。では彼ほどに書ける人の名前を教えてください」と。
▽161 世界中の国で、情報源の秘匿を法的に保障しているところなどない。アメリカでは、秘匿で有罪になっている人がたくさんいる。世界のジャーナリズムが血と汗で守ってきたルール。
▽180 小さな政府、グローバル化が進むほど、それに賛成する人を含めて、逆説的に安全や安定を求める風潮が強まり、国家を頼りにするようになる。〓中曽根レーガン
フリーターはそのグローバル化が生みだしたが、その層に向かって、巧みなメッセージを小泉さんは投げかけた。「公務員26万人」「官から民へ」。民営化されて私たちに恩恵があったか? 公務員26万人の負担が官から消えてどんな恩恵がある? 実は、郵政の人たちは、税金は使っていなかったのに。
▽187 フィンランドは自国語の読解力が世界一。ITテクを使いこなす能力も世界一。出産後3年間は休みがとれ、その間も何%かの給料が保証される……強力な政府や社会の介入で少子化がおさえられた。……校長先生は地域でものすごく尊敬されている。昔の日本の村も、村の宴会の中央の座は村長さんと校長先生、おまわりさん、郵便局長に決まっていた。
▽210 差し迫った日本の危機とは。1.国家が破産しかかっている。こんな財政状況ではEUには入れてもらえない。2.人口が減り始めた。3.教育の荒廃で、次世代が逞しく育つどころの状況でなくなっている。
▽224 プラトンは「国家」で「民主主義は独裁を招くことがある」「非常に厄介な独裁は、多数による専制である」と言った。イタリアとドイツは圧倒的に民主主義で選んだファシズム。国際連盟脱退を宣言した松岡洋右を歓呼の声で迎えたポピュリズム。
▽227 国家の優先課題をまちがえるとき、国はダメになっていく。バブル崩壊に手を打てる時期があった。宮沢内閣のとき、宮沢首相は経済改革をしようとしたが、だれも耳を貸さず「政治改革」という小選挙区制導入だった。そっちにエネルギーをとられてしまった。今の課題は、「年金」などのはずなのに、まず郵政改革で、次は改憲という。優先順位が猛烈にずれている。
▽高校生時代の日記 田舎から東京に出てくると、東京者をいけすかない、と思うのに、ちょっとたつと、田舎ものを馬鹿にする自分。すぐに環境に支配される自分。そういう自分を一歩離れて観察する。

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